夏休み「毎日違う温泉で湯治旅」2日目です。 [1日目] [3日目]
2日目は朝から気持ちのよい晴れ。このまま晴れてくれれば最高の山道ツーリング日和だ。ちなみに天気予報はチェックしていない。昨日の経験から天気予報などあまり意味がないと思ったからだ。
ともかくせっせと荷物を原付に積み込み、昨日に引き続きガーネットクロウの「夏の幻」を口ずさみながら今日の目的地である湯ノ花温泉へと向かった。
湯ノ花温泉へは大体50㎞くらいなので焦っていく必要もなく、余裕ありまくりの行程だ。なので原付らしく遅いスピードで景色を眺めながら進むことにする。途中国道に出る手前ですっぽん料理を売りにしているらしいカッパの湯なる施設があって非常に気になったが、それはまたいつか利用することにして国道に出てのんびりと走り出した。
この日は土曜日だったので車やバイクが多いかと思ったが大したこともなく、楽しく走っているとにわかに空が鈍色に変化し瞬く間に小雨が降り出した。私は急いで原付を路肩に停めてレインスーツを着る羽目になったが、山の天気というのはやっぱり信用できないもんだなぁと実感。しかも今年の夏は何十日間も連続で雨が降っているある種の異常気象だったので尚更だ。
停めた脇を流れていた川。ここらへんはどうも滑らかな底の川が多いようだ
カッパを着て走り出すこと数十分で道の駅が現れたのでとりあえず早い休憩がてら寄ってみた。まぁ休憩したくなくても道の駅はほぼ確実に寄ってしまうんだけど。
カッパを脱いで道の駅散策へ。道の車通りに反して中々の人混みの道の駅だったが、その大半がこの朝市のような野菜売り場を目的にしているかのようだった。実際安くて多くてうまそうな野菜ばかり。子供も若者もなんだか興味深そうに野菜を見ている。
私はとりあえず野菜売り場を一回りしてから中を見てみたが、特に買いたいものもなかったのでさっき興味をひかれたゆでとうもろこしを買いに再び野菜売り場へ。みた感じ「みらい」という品種のとうもろこしを推しているようだったが茹でとうもろこしは多分隣のピーターコーンだろう。それでも美味しそうだったので購入。
「お、うまいなぁ」と一人寂しく呟く私だったが、実際これはかなりうまかった。甘いし取れたてだしで家でたまに食べるとうもろこしより数段うまい。小さな川の流れを見ながら大満足でとうもろこしを完食。
そうしていると雨がパラつき始めた。さっき追い越した雨雲が追いついてきたようだ。ここの駐輪場は屋根もないし、警備員の誘導で屋根のある場所に停められなかったのでさっさと出発することにした(私は雨の中に原付を駐車しておくのが好きじゃないので)。
ツーリング中のバイカーに何台も抜かれながら走っていると、次第に雨が強まってきた。なんだか昨日と同じパターンを感じて心が焦り始めたがよさそうな休憩所もない。そうこうしていると雨はどんどんと激しさを増していき、昨日と同じく「これ以上走っていたら命に関わる!」と思うほどになってきた。と、そんなところに都合よく道の駅チックな建物が現れたので迷うことなくそこへ向かうことにした。
バス停に屋根があることでかなり助かった。本当はこんなとこに駐車しちゃダメなんだろうけど状況が状況だけに許してもらいたい。まぁバスを待ってる人なんて1人もいなかったけど。
原付を停めたら更に雨が強くなり始め、更には横なぐりの風雨によって外は大変な天気に。ここがなかったらと思うとゾっとしたが、ひとまずはこの幸運をありがたく頂戴し、憩いの家で雨宿りをさせてもらうことにした。
店内に入ると小規模な土産スペースと喫茶スペースがあり、喫茶スペースでは地元の人らしき老人たちが談笑していた。入店した時特にいらっしゃいませも言われなかったので「まぁ明らかに雨宿りしにきた人だからな俺は」と思いながら土産物を見たがここでも特に買いたいものがなかったので、店の横の小スペースで休憩することにした。
横のスペース。というかここは会津高原尾瀬口駅という駅で、憩いの家は駅に隣接したちょっとしたお店だったようだ。
上の画像の通り、ここは駅だった。なんだかこんな場所に電車が通っているということにちょっと不思議な気分になったりしたが(私はこの時かなりの山奥を走ってる気分だった)、しかし今はそんなことをぼんやり考えている場合ではない。もしこのまま雨が強いままだったら宿に着くことが不可能なレベルだったからだ。通路の椅子に腰かけて色々と思案している間にも、雨宿り目的の人(いずれも車で来ていた)がちょこちょこやってきていたくらいにヒドかった。まぁでも結局色々考えた結果「まぁ考えてても雨は止まないよね」と思って通路に置いてあった観光パンフなどを読んだりしていた。
そんな感じで30分くらい過ごしているとなんとなく雨が弱くなり始め「このくらいなら行くか!?」と思いながらももう少し待ってみると雨がすっかり止んでしまったのでこれ幸いと出発することに。
でもその前になぜか土産物スペースで売っていた木のお椀が気になり購入してから出発(この時はいらっしゃいませと言ってくれた)。
出発して国道に出た時、すぐに夢の湯という温泉が目について「ここで休憩すればよかった…」と思いながらも空は晴れていたのでそのまま快適に道を行く。同じ山道でも雨と晴れでは原付乗りにとっては全く、マジで全く気持ちが変わってくるので私の気持ちもこの時晴れ渡っていた。
晴れ+山+夏という私にとって最高の組み合わせを楽しみながら走っていると小さいながらもまた道の駅が見えてきた。もうこの頃には空はほぼ晴れていて、一瞬くもったりもするが基本的に太陽もカンカン照りなんだけど気温は低めで過ごしやすいという東京暮らしの私にとってはちょっと珍しい天気になっていた。
ここは結構小さな道の駅で、中は食堂がメインで土産物屋が少しといった感じ。ただここにはこの湯治の旅で後にも先にもここにしか売っていなかったサンショウオの姿焼き(400円)が売っていて、私は何を血迷ったかサンショウウオを買うことはしなかったんだけど後々すごく後悔した。
土産物を見終わった後、食堂でコーヒー一杯100円で売っていたのでこれを飲みながらテラス席で休憩することにした。
こういう時間は貴重な時間。周りには蝉の鳴き声が響く中、辺りは静かで空は晴れ。時間の流れも違う。毎日がこんなのんびりとした日々なら良いのにと思いながら休憩してたけど、こうやってのんびりできるのもたまに旅行に来るから味わえるんだろうとも思う。
そんな事を考えながらこの後の事も考える。この時時間は12時30くらいだったか、このまま行くと早く着きすぎてしまう。どこか観光ポイントはないかとグーグルマップを見るもそんなに大した観光ポイントもなさそうだ。とりあえずはトロトロと走りながらちょっとでも気になったところは見て、そして昼飯を食べればチェックインの時間丁度くらいにはなるだろう。もしどうしても観光ポイントがなかったら湯ノ花温泉に早めについて共同浴場にでも入っていよう、そう決めたところで道の駅を後にした。
出発してほんの少し行くとハローショップみどりやという地元密着系のコンビニがあったので入店。ここで夜食を購入しようと入ったのだが、地元密着型らしく地元の中学のジャージなんかも売っていて面白かった。ここではピーナッツコッペを購入。
気温は涼しいといっても太陽はカンカン照りなので汗をかきつつも夏を満喫しながら走っていると「曲家集落まであと何㎞」みたいな看板がいやに目につき始めた。その曲家集落なるところまでの距離も近いし、時間もあるので湯ノ花温泉を通り過ぎて曲家集落へ向かった。
なんか想像と違って入場料を払って見学するような施設らしい。でもなんとなく面白そうだし料金も安かった(300円)ので原付を停めて受付に向かう。
大人1人分の料金を支払うと受付のおばちゃんが色々説明してくれた。どうやらここは実際に人が住んで生活している1つの集落を見学できるようで、しかしそのために見学できるルートは決まっていて通行可能な道を表したパンフを渡してくれた。昔行った長野の奈良井宿とかもそうだけど、昔ながらの街並みが残っていながら実際に人が住んで暮しているような場所は大好きなのでこれは楽しみだ。土曜の午後だというのにここに来ている観光客も少なそうなのでそこらへんも(観光客としては)嬉しい。
この橋の上下流200mは禁漁区だそうな。太くてよく釣れそうな川で魅力的だった
道幅もあって車も通っていないので、なんだか絵に描いたような田舎の夏といった風景が広がっていた。ぱっと見た感じ商売っ気もないのでかなり落ち着いた雰囲気の集落が静かに広がっている。これは来てよかったと早々に思っていた。
集落に入る橋を渡り終えるとすぐに水車小屋を発見。なんだか「ギギギィィィ」という音がしていて気になったので向かってみる。
木製の水路から勢い良く流れる水が水車を回しているその反対側に
バッタリ小屋からは同じ間隔で「ギギイイー」「ドンッ」という音が聞こえている。水の勢いを利用して杵を動かしている音だ
音の割に杵をつく勢いはそんなに強くない。杵の上にくくりつけられている石で杵をつく強さを調節するんだと思うけど、このくらいが丁度良いのかもしれない。
看板によるとこの音がうつくしまの音30選に選ばれたみたいだけど、確かに郷愁を誘うような懐かしい音のような気がした。こんなのがある場所で育ったわけではないのに不思議なものだけど。
このバッタリ小屋から少し歩くと建物が並ぶ集落中心部に入るのでほとんど誰もいない広い道を歩いて行くと
道の両脇には畑。そして農作業中の住民の方。料金を取って見学する施設(?)の中で実際に暮らしているというのはなんだか不思議な感覚だ。
ここは昔の暮らしぶりをリアルに目の当たりにすることができる施設らしい。建物の前で撮影していたら観光客のおじさんが「中に入ると係のおじさんが色々説明してくれるよ」と教えてくれたので早速中へ。
中にはこんな札が。年ごとに納税完納した家に配られていたんだろうか。私もこれ欲しい
かなり色んな道具がある。というか馬は同じ建物の中で暮らしていたのか
興味深く道具を見てから居住スペースへ。何か煙の匂いがすると思っていたら中では係のおじさんが囲炉裏に火をともしていた。多分観光客のためにというよりかはこの茅葺の古民家のためなんだろう。「失礼しますー」というと「はいどうぞー」とおじさん。おじさんはパソコンで何かしているようで、なにがしかの説明をしてくれそうな感じではなかった。
資料館なだけあってとっても立派な建物。天井を見ると屋根の茅が思いっきり見えて「茅葺の古民家ってこういうもんなんだろうか」と思った。茅葺の宿とか何度か泊まったことがあるけど茅がモロに見えていたって記憶はあまりない。場所によって違うのか、どうなんだろう。
儀式や寄り合いに利用されたそうな。とりあえず拝ませてもらった
天井は低めの夫婦の寝室。居間に比べれば結構狭いが、立って半畳寝て一畳ということだろうか。
結構天井が低く、まぁそれでも当時の人の身長では十分高さはあったんだろうなぁと思う。しかしこの天井の低さには理由があって
この部屋もやっぱり天井は低い、というか屋根のすぐ下なので茅がすぐそこに見える。明かり取りに取られた窓は小さく低く、でもそこから覗く外の景色がなんかとても良い。「ここに住みてぇ〜」と思っちゃうくらい私好みの空間だった。
この部屋でちょっとのんびりしてから建物散策を続けた。
建物内を色々見せてもらったけど、私が一人だったからか係のおじさんからの説明は何もなかった。とりあえず掃除に夢中だったということにして資料館を後にする。
資料館の横には鐘があった。注意書きを見るに、今でも使っている感じ
外は相変わらずの晴れで観光客もちょこちょこいる(というかほとんどいない)程度なので集落の日常に溶け込んだ感じが清々しい。まだまだ奥に行けるので静かな農村を進んだ。
道を曲がると飲食店があり、その前で店の主人らしき人がなにか作業をしていた。そこにあった野菜(?)
店の人がいる手前何か写真を撮るのを遠慮してしまったけどとても気になる店だった。今思うとなぜここで昼飯をとらなかったのか謎だ。
道には直売所なんかもちらほらある。集落内で土産を買えるのはこういう直売所くらいだ。私が車で来ていたらきっと野菜を買っていたことだろう
別の直売所。新聞紙のエコバッグがほほえましい。こういう商売っ気がない感じがとても良い
こんな池がある家も。池にはイワナがいて、それはやはり水が綺麗な証拠だろう。本当に綺麗な水だ
結構勢いのある水路。こんな澄んだ水で育った野菜はうまいに決まってる
こんな風に集落内を散策していくと、集落の一番奥に恐らく一番の観光スポットである薬師堂が見えてきた。
ここは受付のおばちゃんもちょっと説明してくれたんだけど、お社の中の天井には一面に花や龍なんかが描かれているらしい。集落の中にあるお堂にしては凝った装飾に感じるが、一体どんなものなんだろう。
なんだか親近感のわく造り。扉が引き戸でなくて天井に向けて開く仕組みなのが面白い
内部にはスリッパが用意されているのであがることができる。素朴な作りだけどどこか品が感じられる
田舎の小さなお堂だけど集落の人に大切にされているなぁと感じた。床は綺麗に掃かれているし、供えられた花も綺麗だ。私はとりあえずお参りをしてから噂の天井画を見てみた。
天井画は大きな一枚の絵ではなく均等な大きさの円の中に描かれた花や動物が天井一杯に配置されていた。経年劣化した水色が良い意味で寂れた雰囲気を放っていてお堂にぴったりと調和している感じだ。描かれている植物や動物も派手なところはなく落ち着いていて、周りの環境ともしっかりと呼吸しあっているようだった。正直延次さんという方は知らないけれど、とても良い仕事をして下さったんだと思った。
しばらく天井画を見た後は今来た道とは違ったルートで戻ることにした。
帰り道は裏道っぽい道だったので案外すぐに入り口の方まで来てしまった。正直結構名残惜しい気もするけど時間も良い塩梅で流れたのでここらで湯ノ花温泉に向かわなければならない。「ここは訪れて正解だった。」そんなことを思い農作業中のおじさんおばさんを見ながら曲家集落を後にした。
時間は2時を過ぎていてお昼には少し遅い時間になってしまったけど、お腹がかなり減っていたので夕食がはいるかどうかなど考えずにとりあえず湯ノ花温泉へと向かい、途中道沿いにあったかねまる食堂というところに入ってみた。
店に入るとおばちゃんがテレビを見てのんびりしていたが、すぐ私に気づいて席に案内してくれた。時間も時間で客は私一人だけだったが、土曜日なのにこれだけすいているというのはもともとこっち方面に来る観光客は少ないのだろうか。曲家集落も人がほとんどいなかったし。
まぁそんなことはさておき、私は非常に肉が食べたかったので焼肉定食かホルモン定食かで悩んだが結局ホルモン定食にした。私はホルモン好きなのです。
壁にはなぜか噺家のサインが多い。後は釣りで有名らしい人のサインとか。というか木賊温泉の萌え手ぬぐいが素晴らしい
待つことしばしでおばあちゃんが定食を持ってきてくれた。心待ちにしていたホルモン定食は
食べてみるとホルモンは凄くやわらかくて味もご飯とよく合うピリ辛の味付けだった。量も思った以上に多くて、こういう観光地の食堂としてはかなり良心的で美味しいと思う。正解の店を引き当てた私はモリモリと無我夢中で食べた。
食べ終えて会計を済ませている時に「なんで噺家さんのサインが多いんですか?」と聞いてみたところ、歌丸さんはよく奥さんと南会津に訪れるらしく(別荘がある?だかなんだか)、その他はテレビのロケで訪れた際に寄ってサインを残していってくれたらしい。この店から笑っていいとものテレフォンショッキングの中継もやったとかなんとか。ともかくこの店は沢山の有名人が訪れていた。
その他色々と雑談をしてから店を出て観光案内所の売店に行ってみるもいいものはなかった。
なのでそのまま湯ノ花温泉へ向かうことにした。
途中あった中学校。田舎の学校は往々にして立派な造りの物があつけど、ここもかなり立派でグラウンドも広い
そんな感じでのんびりと道を行くととうとう到着した。
天気は曇り始めていて怪しい感じになってきていたが、宿まではもう目と鼻の先なので何も怖いことはない。後はただ宿へと向かうのみなのだ。
途中写真に撮っていなかったけど湯ノ花温泉の真ん中を突っ切っている大通りをちょっと行ったり来たりして迷いつつも無事に宿へ到着した。
昨日女将が「大空き」と言っていた通り宿泊客の車もない駐車場に余裕を持って駐車する。周りにはハチやらなんやらが飛び交っていて自然一杯な感じだ。そして山楽は思っていた以上に立派な建物だった。
玄関に入ると息子さんらしき人がいたので「予約していた〜〜です」というと「母さ〜ん、〜〜さんだよ」と奥にいた女将さんを呼んでくれた。
女将さんは「ようこそ〜、雨にやられませんでしたか?」と暖かく迎えてくれて、すぐに部屋へ案内してくれた。なんだかここも良い宿な予感がする。宿の人が良い人だと宿自体が良い場合がほとんどなのだ。
1階は家族の居住エリア+食堂なので客室は2階となっていて、その中でも一番広そうな部屋に案内してくれた。
部屋は4人くらいは余裕で過ごせそうな広さで、戸や柱の木も黒いとても歴史のありそうな雰囲気だった。エアコンはないけどここは都会なんかよりよっぽど涼しいし、なにより私は機能や快適さよりも「らしさ」を大事にするタイプなので、むしろこういう部屋に扇風機だけというのはとても良いと思う。
アメニティはバスタオル以外は揃っている。ここは温泉地なんだからバスタオルはあってほしいけど、私は自分のを持参しているので大して問題無し。
そんな感じでアメニティチェックをすませると女将さんが冷たい麦茶を持ってきてくれた。
民宿には部屋にお茶の用意のないところが度々あるけど、ここもそのタイプのようだ。ただほとんどの場合言えば出してくれるのでこれもまた大した問題ではない。
出してくれた麦茶をすすっていると共同浴場の説明をしてくれて、今日明日の両日使える券は300円で購入できるそうな。2日使えて300円なら安いものだ。
色々と説明を終えたところで女将さんは去っていき、私はひとまず休憩タイム。部屋はすぐ目の前を流れる川の音と虫の声くらいしか聞こえず、民宿にしては網戸も綺麗なのであまり虫が入ってこなさそうだ。「ここは快適な宿である」私はそう思った。
ある程度休憩したら共同浴場を楽しみに行こうとスクっと立ち上がり、必要なものだけ持って部屋を出た。1階で女将さんに両日使える券をもらい「行ってらっしゃい」の声を背に歩きで共同浴場へと向かった。
玄関。ちなみに宿の玄関には共同浴場に持っていくためのお風呂セットが置かれていた。
庭には池もあってぶっといイワナが泳いでいた。夕食の期待も高まる
私はとりあえず宿の目の前にある共同浴場である湯端の湯へと向かった。それがこれ。
「ほいじゃあ入ってみますか」と近づいていくと中から複数の話し声が聞こえてきて、「あれ、結構入っている人いるのかな」と思ってここは後にしようと即断した。なるべく初めて入る温泉は、できれば最初は貸切状態で入りたいという願望があるからだ。
というわけで、橋を渡って左方向、つまりバイクで来た道を戻るような方角へ歩いていく。
この白糸の滝に来たあたりでしとしとと雨が降り出してきたので宿まで戻って傘を借り、またまた共同浴場へ向かい再出発。
次に向かうは宿から2番目に近い天神の湯。雨は降っているがこれから素敵な温泉巡りが始まると思うと足取りも軽くなってくる(というか少しでも腹を減らすために歩いてるわけだけど)。
そんな道中何発もの銃声が響いてくる。撃ってる場所は近いようで結構大きな音が響いている。やっぱり山間部だけあって熊や鹿が出るんだろうけど、発砲音が近いだけに少し不安でもある。
そんなこんなで大通りまで出ると天神の湯はもう目と鼻の先。橋の脇にちょこんとひかえめに建っているのが可愛らしいし、なによりも立地が良い。これは期待できそうだ。
中に入るとおじさんが先に入っていて、何やら風呂椅子に腰掛けて何かをメモしていた。「温泉マニアだろうか」と思いながら脱衣所で服を脱いでいるとメモも終わったようで、ここでようやく「こんにちは〜」と声をかけると「こんにちは」と返してくれた。
それはそうと天神の湯は色んな地方の共同浴場共通の浴室と一体型の構造だった。窓は開放的に大きくとられていて眺めがよく、でも浴槽自体は大人が3人も入ったら一杯くらいの大きさだった。床も浴槽もコンクリだけど、なんか味があって良い雰囲気だ。
軽く体を流してから入る。先にいたおじさんはもう首まで入っていたのでゆっくり入ったが、思ったより湯が熱くてちょっと戸惑う私。それでもなんとか首まで浸かるとおじさんが話しかけてきた。
おじさん「どう?熱いでしょ」
私「いやこれは結構熱いですね、ずっと入ってられなさそうです」
おじさん「埋めないときついけど、埋めると地元の人に怒られるからね(笑)」
私「おじさんは地元の人じゃないんですか?」
おじさん「いや、僕は年に数回ここの温泉に入りに来るんだよ。あ、熱かったら向こうの小さいとこはぬるくて入りやすいよ」
と言っていた。まぁ何かしらメモしてたから地元の人ではなさそうだとは思ってたけど。とりあえずおじさんの勧めで小さい方のぬるい浴槽に入りながらその後も色々話した結果、石湯という共同浴場の湯はここよりも熱くて埋めないととても入っていられないくらいらしい。しかもそこには毎日石湯に入っている94歳(くらい)のおばあちゃんがいるらしく、ちょっとした有名人なんだそうな。
まぁおばあちゃんも凄いが、ここより熱い湯なんて果たして人間が入れる温度なんだろうかと心配になった。しかも埋めると地元民に怒られるというではないか。これは相当厳しそうだ。
その後おじさんは先に上がり、私は少しだけ一人の時間を満喫してから次の共同浴場へと向かった。
天神の湯から少し歩くと星商店というお店があり、そこから最大の共同浴場である弘法の湯が見えるけど結構入浴客がいそうな感じだったので、さっき話しに聞いた石湯へ向こうことにした。
この石湯への案内から民家の脇を抜けて向かうんだけど、裏道のような道を通るようになってるから微妙にわかりにくい。「本当にこっちなのか?」とちょっと行きつ戻りつしていたら川に出て、そこから石湯が見えたので一安心した。
写真をみてもらえればわかるけど石湯は完全完璧に川ぞいに建っていた。増水しようものなら被害は免れないであろう立地だけど、そこまでギリギリに建っているその姿が素晴らしい。まだ中に入ってもいないのに一目で気に入ってしまった。
中からは数人の話し声が聞こえる。どうやら先客がいるようだけど、もはやそんなことは気にしなくなっていた。早く中に入ってみたい、その気持ち1つでまっすぐに扉を開けた。
「失礼しますー」と声をかけながら入ると中には若そうなお兄さんが一人、そして老夫婦2組がいた。
ちょっとおののく私。目の前には素っ裸のおばあちゃん2人がいる。実は私は混浴風呂に入るのは初めてではないけど、実際に混浴風呂で混浴するのは初めてなのだ。正直「人生初の混浴がおばあちゃんかよ…」と失礼ながら密かに思いはしたものの「まぁおばあちゃんなら妙に恥ずかしがって股間を隠す必要もなかろう」と思い直してそのまま脱衣所に進む。
外から見えた大きな岩は内部にまで侵食していた。これは非常に天晴れな趣向と言わざるおえない
床も平らではないし、多分大きな岩をくり抜いて造ったんだろう。よくぞこれを造ってくれました
ここ石湯は脱衣所が奥にある変わった造りなので、とりあえず先に入っている人たちの間を縫って脱衣所へ行き、すぐさま服を脱いで温泉へ。しかしメインの浴槽は老夫婦達が入っているので一杯だ。なので私はその横にある一人用の浴槽へと入った。
楽しそうに話している老夫婦の裏側で1人湯に浸かる。さっきのおじさんが言っていた事が頭にあったのでどれだけ熱いのかと思ったらかなり適温だった。思えば天神の湯も1人用の浴槽は適温だったので、そういう親切設計になっているのかもしれない。私は1人用の浴槽を満足しながら満喫した。ちなみに湯は無味無臭でとても澄んだ湯だった。あまり大きな特徴はないのかもしれないけど、柔らかい肌触りなので入っていて気持ちが良かった。
そんな風にしていると老夫婦も兄ちゃんもいなくなったのでさっそくメインの浴槽へ移ってみた。するとそこも1人用と同じく入りやすい温度でとても気持ちが良かった。誰かが埋めたんだろうけど、やっぱり地元民でも埋める人は埋めるんだろう。皆が皆埋める人を怒るわけではないらしい。
しかし適温でも熱い源泉はサラサラと流れ込んでくるので湯温はどんどんあがっていく。私はのぼせる前に風呂からあがることにした。「ここは出発する前にもう一度来よう」と思うほど大好きな浴場となった。
ポカポカした体を風で冷やしながら弘法の湯まで戻るとまだ結構賑わってそうな感じ。とりあえずここは夜にでも来る事にして、私はそのまま宿へと向かった。
休憩している時、「ここらで釣りの餌でもとれたら明日の朝釣りでもしてみようかな」と思い立った。ここは渓流釣りで結構有名なところらしいので釣りができるのならしてみたい。そんなわけで餌のドバミミズを捕まえに原付に乗って湯の花温泉の奥のほうへと向かうことにした。
しばらく行くと白樺公園なる公園があったので寄ってみる事に。駐車場には車もなく、特に誰もいなさそうだった。
ちなみにこの道すがら木賊温泉へと抜けられる道があったけど、木賊温泉はまたここらに来た時の楽しみにとっておくことに決めていたので行かなかった。というか気軽に行けるほど近くもないんだけど。
誰もいないかと思っていたら公園内のキャンプエリアにはバイク乗りのキャンパーが2人いた。でも他には誰もおらず、テニスコートや大きなグラウンドもあるのに誰も利用者はいなかった。川は深いところを流れているわけではないので入渓しやすそうだったけどここも川底は滑らか。あまりこういうところで釣りをした経験がないからわからないけど、こういうところにイワナやヤマメはいるんだろうか。
そんなこんなでとりあえずそこらへんの雑木林でドバミミズ探し。いかにもミミズがいそうな枯葉が積もったような場所や側溝があったりしたんだけどミミズのミの字もなく、ある程度探したところで諦めて目的を周辺散策に切り替えた。
そこからまた山道を越えてのんびりとした田舎道を走っていると物凄く気になる景色に出会った。
なんとなく橋の上を通過しようとしたらその向こうにその景色は現れた。緑生い茂った道沿いにある鳥居と湧き水。そしてその横を流れる川。なんという(私的に)心惹かれる景観だろうか。これは行かずにはいられない。そう思ってすぐさま道を下った。
この丸で描かれた鳥居、どこかで見たような気がするけど…。思い出せない
割と急な階段を上るとそこにはなんとも素朴な神社が建っていた。社殿の中は見られなかったがとりあえず挨拶をしてからまじまじと観察させてもらう。この寂れた神社もちゃんと祭りなどが行われたりするのだろうか。
質素であるが、それが逆にこういった所に建つ神社にはふさわしい良い神社だった。
観察が終わった後は階段を降りて湧き水へ。そこには素晴らしき水が湧いていた。
この湧き水の存在感たるやただものではない。湧き水好きの私はすぐさま置いてあるコップで水を飲んでみると、水はとても冷たくて喉越しの良い美味しい湧き水だった。思わず「おお、うまいっ」と言う程だったが、つまる所水が美味しいかどうかは水が冷たいかどうかに比例すると思ってる私なので単純なものだ。しかしそれでも美味いものは美味い。これは良いものに出会えたと1人喜んだ。
鎮守社とはすぐそこの神社のことだろうか。そうならばこの湧き水はこの上ない手水舎だ
水を飲んでから手持ちの水筒に水を目一杯汲んでから出発。風呂上がりにこの水で喉を潤すことができるのは贅沢だ。やっぱり周辺散策はしてみるもんだと思った。
水を汲んでから再び道を奥へと進むと、そこには茅葺屋根の民家が並ぶ素敵な集落があったけどその先は本当に山の中っぽかったのでUターンして戻ることにした。その集落にも離騒館なる宿があってちょっと泊まってみたかったけどそれはまた別の機会に。
もともとドバミミズ探しを終えたら最初に行けなかった湯端の湯へ行こうと思っていたので宿を通過して湯端の湯へ向かう。もう既に他の共同浴場に入ったので今回は先客がいてもとくにかまわないのでそのまま中へ。
入ってからわかったことだけどここは男湯・女湯・外来者用の湯と3つの浴場がある珍しい造りだった。地元民と外来者の浴場が別れているのは初めてだ。地元民と一緒に入りたい人はあまり嬉しくないかもしれないが、同じ外来者同士でというのもまぁ安心できるのかもしれない。ともかく変わった造りだ。
盗難注意が目立つ。実は他の共同浴場でも「弘法の湯で盗難事件が発生したから注意してね」という旨のポスターを見ていた。けしからん奴もいたものだ
先客は誰もいなかったのでサクっと服を脱いで浴場へ。ここの浴槽は扇型をしていて天神の湯と同じくコンクリ風呂だが、湯は目一杯に溜まっており常にオーバーフローしてる状態だった。これを一人で味わえるのはとても嬉しい。今まで連続して温泉に入ってきたので「もう掛け湯しなくても良いだろう」と思ってそのまま温泉へ浸かるとここもまた天神の湯並みに熱く、しばらく誰も入っていなかったか埋める人がいなかったかのどちらかの状態で源泉そのままの状態のようだった。
「こりゃあたまらん」とホースから水を出して埋めようと水を出したがしばらく水を投入しても大して熱くならなかったのでもう1つの蛇口から水をだそうとしたら青の蛇口のクセにお湯(熱い)が出てきて軽くヤケドしてしまった。とんでもない罠をしかけてくれたものだ。ちなみに更にもう一つ蛇口があったがそっちは何も出なかった。
そんなこんなで苦戦を強いられつつもなんとかそれなりに入って入られそうな温度になったので入ることに。やはり一人で温泉を独占できるのは嬉しい。あまり特徴のない湯だけど、この建物と微妙に薄暗い雰囲気と、そして常にオーバーフローしている温泉であるということで何も言うことなしの満点だ。
そうこうしていると子連れのお父さんがやってきて、2・3会話をしてから温泉をあがった。ここもまた出発前に是非来たいと思った。
湯端の湯から出るときに会った地元のおじいちゃんとも少し会話をしてから宿へ。外はまだ明るくて夕飯までは少し時間がありそうだけど(ちなみに夕飯の時間は聞かされていない)、その時間までのんびりすることにした。
階段を上ったすぐ横にある本棚。夜はこの漫画を読むのもよさそうだ
6時15分くらいに女将さんの「お食事の用意ができましたー」と声がかかったので一階へ。食事は奥の広間で食べるようで、この日宿泊客は私一人だけだったので広間の中央にデンと席が用意されていた。
当然のように囲炉裏。羨ましい。ちなみに奥の席にはいつもご主人がテレビを見ていた
広々と使える広間に少し優越感を抱きながらの夕飯となった。共同浴場巡りの甲斐なくそこまで腹が減っている状態ではなかったけど、それでも宿の飯というのは楽しみだ。
左上にあるのがイワナの刺身で、右のはイワナの燻製(若旦那自慢の品)だ。「あのぶっといイワナが塩焼きで出てくるのかしら」と期待していたので少し残念だったのが正直なところだが、でもこの燻製もジューシーで柔らかくて大変美味しかった。燻製のイワナなんて滅多に食べられないからこれはこれで嬉しい誤算だったかも。もちろんイワナの刺身もおいしく、刺身で出せるということはこれがあの池にいたイワナなのかもしれない。
この他の料理も全て美味しく、更に途中で十割そばも出てきてこれまたコシがあってよかった。もうとにかく全部おいしかった。ちなみに白米と味噌汁もちゃんと出ました。
外も薄暗くなった頃食べ終わり、女将さんに「ごちそうさまー」と言って2階へ。これから宿の予約の作業が待っている。
とりあえず翌日の宿候補の1番だった老沢温泉旅館へ電話をすると「明日は満室です」とあっけなく断られてしまった。断られることはよくあることなのだが、老沢温泉旅館はこの旅で1・2を争うほど行きたい宿だったのでガックリ。次にその近くの候補宿に電話しようと考えるも、色々と考えた結果場所を少し写して湯野上温泉の扇屋という宿に電話することに。
私「明日で一人なんですけど空いてますか?」
おばあちゃん「えっと、明日は土曜日?」
私「いえ、明日は日曜日です。」
おばあちゃん「あ〜そうだそうだ。で、お客さんは男の人?」
私「はい」
おばあちゃん「今電話してるあなたが来るということ?」
私「そうです」
おばあちゃん「え〜、明日で男性一人。えぇ、大丈夫ですよ」
私「あ、そうですか、じゃあよろしくお願いします」
おばあちゃん「はいはい。あなたさっき電話してくれた人?」
私「いえ、違いますけど」
おばあちゃん「さっき男の人で一人って人から電話があったけど断っちゃったんですよね(笑)」
私「え、そうなんですか?」
おばあちゃん「えぇ。まぁじゃあ明日一人ですね、わかりました。ではお名前を〜」
ということで予約完了。なんか不思議な会話だったけどとりあえず宿が確保できてよかった。というか私の前に電話した男の人は断ってなぜ私はOKなのかもよくわからないが、まぁこれで一安心。なんとなくこの会話から色々期待できそうな宿な感じだったし今夜はゆっくりと眠れそうだ。
しかし寝る前にまだやりたいことがある。それは弘法の湯へ行くこと。ということで安心した気持ちで弘法の湯へと向かった。
入ってすぐの休憩所。先客はいるけど少なかった。盗難があったからか新しいロッカーもあった
石の湯に入った時に老夫婦の会話の中で「温泉入るのは6〜8時が一番良い。皆飯の時間だから人が少ないからな」と言っていたんだけどまさにその通りだった。昼間結構混んでそうだった弘法の湯もこの時間の客は2〜3人だった。
「盗難が起きたのもこのくらいの時間だったんだろうか」などと思ったが、今の私は特に貴重品などは持っていなかったのでそのまま脱衣所へ向かう。
帰り際撮ったもの。ここもコンクリと木造のミックスだ。建物の大きさの割に浴槽は他の共同浴場よりちょっと大きいくらいか
先におっちゃん2人が入っていたので「こんばんは〜」と入室。軽く体を流すために湯を浴びると物凄く良い湯加減で4つの浴場の中で一番入りやすい温度だった。やはり一番大きくて外来者も多く来るんだろうから湯加減もやさしくしてあるのかもしれない。しかし良い湯加減ということはそれだけ水を加えているということだからそれはそれで不満な人もいるかもしれない。
まぁでもそんなことはどうでもよくて、さっさと掛け湯をすませて湯の中へ入るとやっぱり最適な温度。「いいね〜」なんて一人で思っていると先に入っていた笑顔が素敵なおじさんが話しかけてきた。
おじ「ここははいりやすいでしょ?」
私「はい、一番丁度良いいですね〜。向こうの石湯はそうとう熱いみたいですね(俺が入った時は大丈夫だったけど)」
おじ「あそこは熱いですよ〜、それでホースで埋めようもんなら地元のおばあちゃんにギッて睨まれますからね(笑)でもそこで負けずに水を入れるのが旅人根性かもね」
やっぱり本来の石湯は熱くて有名らしい。私は運が良かっただけだったんだろうか。その後も話は続く。
私「ここが一番温度的に入りやすくてイイですねぇ」
おじ「でも温泉好きに言わせると、ここは湯に特徴がないって感じみたいですけどね」
私「他のところはどうなんですか?」←[どうでもいい補足] 私は「湯に特徴がない」というのを「弘法の湯は」という意味で受け取ったので「他のところは」というのは「他の共同浴場は」という意味で聞いている。
おじ「木賊温泉なんかは個性的でイイですよ。適温だし、不思議とのぼせないんですよ」
私「へぇ、不思議ですね(やっぱり明日行こうかな)。上の湯端の湯はどうですか?」
おじ「いや、僕はここと石湯しか入ったことないから他がどうとか言えないんですよ」
私「じゃあこれからハシゴですか?」
おじ「いや、ハシゴはしません。ハシゴすると最初に入ったお湯の印象が薄くなっちゃいますから」
となんだか本物の温泉好きっぽい事をいうおじさん。至極ごもっともで「せっかく来たんだから全部の浴場廻らなくちゃ!」とか思ってる私なんかこのおじさんの足元にも及ばない存在に思えてくる。この余裕の態度がカッコイイ。実際おじさんは色々と温泉を巡っている人のようだったし、良い勉強になりました。というかこのおじさんの話ながら何度も見せてくる笑顔に凄く良い人感があふれていた。
そんな感じで良い話ができたし、おじさんは「じゃあお先に」って言ってあがっちゃったので私もその後しばらくしてから温泉からあがった。ここで温まりすぎてはいけない。なぜなら今日の最後にこれから湯端の湯へ向かうのだから。おじさんの名言を聞いてすぐなのにそれが全く行動に反映されない私だった。
湯端の湯へ到着すると、この時間帯は誰も入っていなかったので一棟貸切状態で入浴。もともと薄暗い浴場だっただけに夜の雰囲気も最高だ。
浴場へ入るとホースがパイプの中に突っ込まれていた。先に入っていた人のアイデアだろうか、こうするとこの横にある源泉が流れ出ているパイプと同じように水を出すことができる。これは良い。
湯温も最初入った時よりはぬるくなっていて、長時間は無理でもそこそこ入っていられる温度になっていた。なので源泉と水が流れ落ちる音を聞きながら一人で浴場を堪能しまくることができた。やっぱり夜の共同浴場は最高だ。
30分ほど出たり入ったりしながら十分に温泉を楽しんだらさすがにもう宿に戻った。「全部入られました?」と聞く女将と少し話し、冷たい麦茶をもらって部屋へ(この時私には湧き水があるということを忘れていた)。後は特にやることもないのでテレビを見たり本を読んだりして就寝した。ちなみに一晩中網戸にしていたが虫はほとんど入ってこなかった。
翌朝7時30分くらいに起きる。「朝食は何時なんだろう」という疑問があったけど「いや、もうできているのかもしれない」と思い一階へ。すると女将さん一家が食事しており、女将が「朝食の準備ができておりますので〜」と言ったので広間を見ると昨日と同じ位置に朝食が用意されていた。「そういうシステムなのか」と思いつつ促されるまま席について朝食となった。
朝食。目玉焼きなどの温かい料理はちゃんと食べてる途中にもってきてくれたので温かかった
朝食も文句なしにうまい。まぁ朝食なんてどこもそこまで大きくは変わらないけど、一品一品の味付けはやはりどこも違う。ここ三楽の味付けは非常に私好みだった。
最後までよくわからなかったのは真ん中の四角い皿の右下にある未熟なトマトのような小さいやつだった。食べたらなんか甘いしトマトっぽいが、でもミニトマトよりももっと小さいし何より緑色だしでよくわからなかった。おいしかったけど。
朝食を食べ終えたら最後に石湯を味わおうと思っていたので原付で星商店まで向かう。
湯の花温泉の真ん中にある星商店。朝早くから開いていた。石湯からあがったらここでアイスを食べようと決めた
途中なんとなく天神の湯も入るかと思って寄ってみたら清掃中だったので諦めて石湯へ向かう。昨日とうってかわって中から話し声は聞こえなかったが一人おじさんが入っているのが見える(引き戸が半開だったため)。なので「おはようございます〜」と挨拶して入室した。
朝なのでしっかり体を洗ってから入湯。この時の湯も特に熱くはなく適温で、おじさんが埋めてくれていたようだ。
湯に入るとすぐおじさんが話しかけてきて雑談が始まったが、このおじさんは千葉から車中泊をしながら色んな温泉を巡っている最中だそうな。私が原付で来たことを言うと大層驚いていて、あがる時には「気をつけて旅をしてくださいね」と温かい言葉をいただく。こういう言葉が本当に嬉しい。
おじさんがあがった後は地元のおじさんがやってきて体を洗ってちょっと湯に浸かったらすぐにでてしまったのだが、体を拭く時に奥の川沿いのドアを全開にして川の精気を存分に浴びながら体を乾かすという豪快な事をしていた。それを羨ましく思った私はおじさんが出て行った後同じようにしたんだけど、これがまた風が気持ちよく最高の乾かし方法だった。これは非常におすすめなのでチャンスがあったら皆さんも是非やってみてほしい。
朝の最高な石湯を堪能し、ポカポカが止まらない中汗をかきながら星商店へ向かう。店内に客は誰もおらず、すぐさまガリガリ君を購入したら店のおばちゃんが話しかけてきたので店内の椅子に座ってガリガリ君を食べながら色々な話をした。
・石湯は地元民も埋めている ←途中店に入ってきたおじちゃんにおばちゃんが「石湯に入る時埋めてる?」と聞くと「埋めなきゃ入れないよ」と言っていた。
・石湯に毎日入っているという94歳のおばあちゃんはやはり有名で、1日3〜4回入っているらしい。外来者がいると、自分が昔向島で働いていた時の事を話すという。病気知らずらしい。
・昨日山楽近くのラーメン屋付近で熊が出たらしい。あの発砲音はその熊を追い立てるための銃声だったみたいで、これを聞いた時「熊に出会わなくてよかった」と心底思った。
・弘法の湯の盗難事件について、おばちゃんは「地元民だと思う」と言っていた。なぜなら盗難が起きた時(数回あったらしい)、いつも入っていた人がいたから。
・店内の土産は地元の人の手作り
・4つの共同浴場は、それぞれの浴場がある地区の人たちで持ち回りで管理している
・水引の清水は茨城や千葉からも汲みに来る人がいる
などなど色んな話を聞かせてくれた。おばちゃんは凄く気さくで話しやすい人だったのでどんどん話が広がってとても楽しい時間を過ごす事ができた。やっぱり地元の人の地元の話は本当に面白いし参考になる。しかも温泉あがってからのガリガリ君は最高で、朝からとても良い時間を過ごす事ができた。
その後チェックアウトの時間も迫っていたので「まだチェックアウトしてないのでそろそろ行きます〜」と行こうとすると「あら、そうだったんですか」と少し驚いていた。私も時間さえあればもっと話していたかったので残念だったが、そう思っていると「これ、冷やして食べてね」と言ってトマトを2つくれた。本当最初から最後まで良い時間だった。
その後宿に戻って支度を整えてから精算へ。宿代を払うと「今日はどちらまで?」と聞かれたので「湯野上温泉の扇屋というところに泊まろうと思ってます」と言うと「扇屋さん…」と何やら考えてる風で、すると主人が「囲炉裏の宿だよ」と女将さんに教えていたが、何故か扇屋のことを知っていたことに私はちょっと驚いた。宿同士のネットワークは結構広範囲にまで広がっているのだろうか。
その後「お客さん温泉がすきみたいだから」と、途中におすすめの立ち寄り湯のある湯野上温泉までのルートを教えてくれた。私は昨日来た道を戻っていく形で湯野上温泉まで行こうと思っていたので、思わぬ情報提供がとてもありがたかった。その立ち寄り湯から湯野上温泉までのルートを物凄く丁寧に教えてくれたので、私はそのルートで湯野上温泉まで行くことにした。
その後昨日近くに出没したという熊について話してから(こんな近くまで熊が来たのは初めてだったらしい)、宿を出る時「また来てくださいね」と最後まで丁寧な女将さん。朝から星商店のおばちゃんといい女将さんといい気持ちよくコミュニケーションが取れて最高の出発の朝になった。私も女将さんに丁寧にお礼を言って山楽を後にした。
※この日泊まった山楽は茅葺屋根のとても居心地の良い宿でした。こういう宿は結構虫が入ってきたりもするのですがそういったこともなく、トイレなんかも新しくてとても清潔。食事ももちろん美味しくてここに一泊できたことで十分に温泉と夏の雰囲気を味わうことができました。他にもよさそうな宿がありますが、宿選びで迷ったらまずここはオススメです。
これまでの肌スベスベ度(通常時★1つ)
★★★☆☆ (本当は黒星3.5といったところですが半分の黒星の記号がなかったので)
民宿山楽 :一泊二食付き8100円(入浴券込み)
赤滝鉱泉の情報からこちらのブログにたどり着きました。
はじめまして、栃木の日光住まいで八方ヶ原などをよくトレッキングするのですが、
赤滝鉱泉看板を見るだけで行ったことが無かったので気になってました。
すごく良さそうなので今度トレッキング後でも行ってみようと思ってます。
私も雰囲気のある民宿や温泉が大好きなのでブログ面白いです。
で、朝ごはんの青い小さなトマトみたいなやつなんですが、鬼灯(ほおずき)じゃないですかねー。
>十六夜さん
はじめまして、ブログ見ていただいてありがとうございます( ^ω^)
地図を見てみましたが、八方ヶ原に行くルート上に赤滝鉱泉があるんですね。宿泊でも日帰りでも、良い汗かいた後にあそこでヒトップロは最高だと思うので是非行ってみてください。あの雰囲気と薪の香りは好きな人にはたまらないと思います。でもブログでも書きましたけど湯の温度には要注意です!
>トマトみたいなやつ
検索してみたら確かにあのまんまの姿の画像がでてきました、あれが食用ほおずきなんですね。ほおずきがあんなおいしいとはびっくりです。ともあれ勉強になりました、ありがとうございます( ^ω^)