【野沢温泉・梅之屋】外湯も温泉街もすぐ近く!酒が美味しい人情宿に宿泊

長野

2024年夏休みの旅3日目です。 1日目 2日目

玉の井霊泉と岩下清水を求めて

青木層を出発し、本日向かうは久々の野沢温泉だ。
ここから100kmほど北に向かうことになるので、私には珍しく9時にチェックアウトして、なるべく寄りたいところを拾いながら北上するつもりだ。
というわけでまずは昨日通った166号をひたすら走って18号に合流したら、そのままず〜っと北上を続けるという感じのルート。単純でありがたいけど、車通りの多さとこの暑さには十分注意しながら向かうぞ!。

とりあえず一箇所目の立ち寄りポイントは、もうちょっと走ったところにあるっぽい。
その場所は昨日偶然見つけたんだけど、この先の川沿いにある、玉の井霊泉という湧き水スポットだ。でもこの玉の井霊泉、マップ上では道も建物もなさそうなところにピンが打たれていて正しい場所がわからない。他にも調べてみたけど詳しい行き方はわからず、ちゃんと見つけられるかどうかは全くわからない。とりあえず現地でうろつくしかないんだけど、こういうのは見つけられたらめっちゃ嬉しいから頑張りたいところだ!

とりあえず川の向こうにあるのは確実っぽいから大きめな交差点で橋を渡ってみたんだけど、ピンが刺さってる場所はどう見ても藪の中。一応道のようなものはあるから徒歩で行ってはみたけど、結局見つからずただ汗をかいただけだった。

その後川向うに行けそうなところを探していると、道の端に「玉の井霊泉」と書かれている看板を発見。案内に従って小道に入ると、橋向こうに集落が見てきた。どうやらそこに霊泉があるらしい!

この向こうにあるってことは、ピンがある場所はやっぱり間違ってたらしい。
しかしこんな朝からあんな小さな集落内を原付で走るのは少々気が引けるから、ささっと行くことにしよう。

というわけで橋を渡って集落内に入ってみたものの、ここからは霊泉がある場所を示す看板はなにも無い。とりあえず集落奥の小道を入ってみたものの、あるのは家や畑ばかりでそれらしいものはなさそうだ。というか、やっぱりこの小集落内を部外者が原付で走り回るのはかなり気が引ける。。
その後一番ありそうな川沿いの道を走ってみたけど残念ながらそれらしいものは見つけられず、これ以上静かな朝の時間を荒らすのもよくないのでここで諦めることにしたのだった。

次の湧き水スポットもまたあんまり情報がないところで、しっかりした水くみ場ではないものの、一応飲めるっぽいから楽しみに向かっております。ちゃんとした湧き水はもちろん好きだけど、微妙そうなところはそれはそれとして冒険感があって楽しいもんだからね。

マップを見ながら進むとそこは閑静な住宅街。
なかなか目的の場所が見つけられず、「こんなところに本当のあるのかい」と思いながら右往左往していたんだけど、注意しながら走っているとようやく道の端に湧き水の場所を示す看板を発見できた。どうやらさらに細い道に入った先にあるらしい。

なんか周りを見回しても完全に畑でそれらしいものはなにもないし、真っすぐ伸びてる道を進んでみたけどそっちも何もなさそう。
しかし「場所的にあんまり長居するのも怖いな〜」と思いつつ元の場所に戻って辺りを見回してみると、左の方にそれらしい場所を発見!私が調べているときに見た画像と同じだからここで間違いないはず!

いや〜こんな草に埋もれた陰にひっそり存在していたとは。なんとなく飲んだらよくなさそうな雰囲気もあるけど案内板にはなんも書かれてないし、別に臭いもないし、多分大丈夫だろ!

というわけで手のひらで一杯飲んでみると、思ったより冷たくて、雑味も臭いもないおいしい水であることがわかった。よくわかんないけどこれは多分飲んでも大丈夫!すぐそこには家の窓があるから、怪しまれないようにすぐに水筒いっぱいに給水して即脱出だ。

戸倉上山田温泉のレトロ湯と町並み

上田はもう何度か訪れてるから、今回はスルーさせてもらって次の目的地へと向かう。
次は日帰り温泉に入るために戸倉上山田温泉に寄るつもりだけど、今走ってるこの18号線、上田の市街地を抜けたあたりから車通りが増えて、なかなかに走りにくい道になっていますね。まぁ私の原付が遅くて邪魔になってるんだけど。。

戸倉上山田温泉は昭和レトロな雰囲気が残る昔懐かしい温泉街ということで前からチェックはしてたんだけど、個人的にちょっと微妙な位置にあるからこれまで寄ったことがない有名温泉地だった。
でも今回は日帰り温泉に入るにはまぁ良い位置にあるってことでこうして立ち寄ってみたんだけど、今後宿泊で訪れたときのためにそこまで散策はしないでおこうと思っている。
とりあえず私が行こうとしてるのは、国民温泉といういかにも昭和臭漂う日帰り温泉だ。外観くらいは見たことがあるけど、正直めっちゃ楽しみです。

昼前だというのに結構お客さんが多そうなのは今日が休日だからだろうか、雰囲気的に地元民に愛される温泉って感じがするけど、あまり混みすぎてなければいいな。
というかこの建物が既にめっちゃイイすね!

案内にしたがって男湯に入るとすぐに番台があったので入浴料340円をお支払い。
中はいかにも歴史のある町の銭湯といった感じだけど、古びた中にも清潔さがあって気持ち良い脱衣所が広がっている。
脱衣所には二人の男の子が扇風機にあたりながら寝転んでたりしてたけど、どうやら番台さんの息子さんらしい。若い女性の番台さんだったからなんとなく納得。ほのぼのしてて良い温泉じゃない。

残念ながら浴室はお客さんがいて撮影できなかったんだけど、思った通り地元のおじいさんやおじさん達が多い感じで、みんな思い思いの時を過ごしてるようだ。
ただそんなことはさておき、ガラガラっと戸を開けて入ると香ってきた硫黄の香りが素晴らしい。あんまり知らなかったけど、戸倉上山田温泉は硫黄泉が湧いているようだ。
さらに浴室の床や浴槽は私の好きなタイル造り。その浴槽にひたひた、というか湯が常に少しずつ溢れてる温泉は意外に澄んでいて、湯口にコップが置かれているのをみると飲泉もできるようだ。
窓も大きく開け放たれていて、もう私にとって好きが詰まったような温泉だなここは!

いざ入ってみると私的には少し熱めだけど、少しとろみがあるような肌触りも感じてめちゃくちゃイイ気持ち。鼻に香る硫黄臭も、これぞ温泉って感じがしてたまらないな。もし私が地元民だったら間違いなく毎日通うことは間違いない。それくらい気に入ったよここは!

いやかなりさっぱりした!温泉とともにレトロ成分も思う存分堪能させてもらえて身も心もいい気分。ドライヤー使うのに20円かかるのもソープ類が一切無いのも、全てレトロの一言でプラスイメージになるくらい良い温泉だった。近いうちに絶対泊まりに来るぞ戸倉上山田温泉!

上山田ホテル
なんかホテルみたいだけど営業してるのか?ここめっちゃ泊まりたい

地下に広がるジブリ世界

18号は混んでるから少しばかり遠回りになるけど、それなりに走りやすそうで混んでなさそうな土手道のようなところに入ってみたけどこれが正解。大きな空が広がる快走路は暑さと風が気持ちイイ!

さて、次は昼食をいただくためとある店に向かってる最中なんだけど、ここからそのお見せまでがまぁ遠い。といっても30kmぐらいだけど、なぜそんなところまで移動して昼飯を食べるのかと言うと、そのお店にはとある作品にインスパイアされたファンタジックで素敵な地下空間が存在してるからだ。
以前たまたま発見したお店だけど、今回はちょうどルート上の近くにあるということで、これはいよいよその時が来たかと、ただいま原付をブンブン走らせてるところであります。結構お腹がすいてるけど、我慢するだけの価値は絶対あるはず!

原付を駐めてマップを見てみると、もう大体お店まで半分くらいの距離は走ってきたようだ。只今の時刻は12時半くらいだから、まぁそんなに遅くない時間うちに昼飯を食べられそうで良かった良かった。まぁ今日は夕食のことをそんなに気にしなくていいけど。

そんあわけで少し安心した後、あの汲んできた湧き水でも飲んで一息つこうとリュックを漁ると、いつも水筒を入れてるところにあるはずの水筒がない。原付のメットインの中にも他の場所にもどこにもないッ。
「なぜ・・・」と少し呆然としながら考えてみると、最後に水筒を出したのは国民温泉を出て建物前のベンチに座っていたときだ。そこで確かに水を飲んだ。ちゃんとリュックに入れたけどどこかで落ちたなんてことはありえないし、、、きっとあのベンチに置き忘れてしまったに間違いない。
あんな短い間に水筒の存在を忘れて置いてきてしまうなんて、、まぁショックだけどしょうがないか。。もう戻るわけにもいかないし、後で時間があったら電話してみよう。

その後気持ちを切り替えて403号を突き進むと目的のお店がある須坂市に入り、ちょっと小道に入りながら走っていくとようやくお店に到着!しかし事前情報通りお店には駐車場がなかったので、お店の駐車場として指定されている村山駅に原付を駐めにいく!

多分踏切目の前にあるからねこまち駅舎と言うんだろうな。
交通量が多いうえに店の横に駐車場がないから、なんとなく立ち寄ってみようってお客さんはちょっと寄りにくそうな立地だ。建物も特に特徴的というわけじゃないし、でもだからこそここの地下にあの空間が広がってるのかと思うとワクワクする。

というわけで、混んでなきゃいいな思いつつ早速入店!中は満席状態で少しばかり待ったけど、無事席に着くことができた!

こういうはっきりした目的でもない限り旅行中にこういう店に来ることはないからなんだか新鮮だ。
私以外はみんなカップルや女友達同士のグループばかりで、おっさん一人で座ってるなんて私だけ。このアウェー感もまた新鮮。

おとなしく座っていると店員さんがやってきたので、なんとなく名物っぽい猫まちバーガーセットセット(1750円)を注文。食べ放題のサラダバーと飲み放題ドリンクつきらしいので遠慮なくいただこう。
その後の説明によると地下の見学は会計後ということらしいので、まずはワクワクを抑えながら思う存分ハンバーガーを楽しませてもらうとしましょうかッ。

そんなサラダを食べながら、これからのルートと寄るところを確認する。ここ須坂市ではあと一つ寄るところがあって、その後はまぁ特に寄るところも無いから、まぁそこまで遅くならずに宿に着けそうだ。問題は祭りが何時から始まるかだけど、それは分からないから可能な限り早く行くしか無いか。
しかし混んでるからしょうがないけど、なかなかハンバーガーが来ないすね。。

こうして店でハンバーガーを食べるのも久々だけど、やっぱり作りたてのハンバーガーは一味違うな。バンズはふっくらホカホカで、肉もジューシーかつ肉を食べてる感が強くて満足度高し!まぁ正直少しお高めな感じはあるけど、このあと地下空間を見られることを考えると安いものだ!

その後すぐさま完食してお会計を済ませると、店員さんに促されるまま地下空間へ。自由に撮影して自由に投稿してくださいとのことだったので、思う存分撮らせていただきます。

このねこまち駅舎の地下は、実は「ジブリのような世界」という口コミで有名なようで、実際店側がジブリと言っているわけではないみたいだけど、そういう世界観を意識して作られた空間らしい。階段を下ったところで既にその片鱗が見えているけど、これは想像以上に期待できそうだ!

お客さんが多いから写真を取るのもちょっと苦労するし、地下だから室温も高めで長くいたら汗をかきそうだ。でもそんなことより、この地下の完成度は凄まじいものがあるな。一気に違う世界に引き込まれるぐらい不自然なところがないし、きっちり空気感が出来上がってるのが本当に凄い。口コミで「ここに住みたい」って言ってる人がいたけど、その気持も大納得できるくらいの素晴らしい地下室だッ。

本当ならこれ以外にナウシカの植物研究室みたいな部屋もあるみたいなんだけど、残念ながら今は工事中かなんかで見られないらしい。ナウシカの部屋はかなり見たかったけど、またここを訪れる楽しみができたと思えばそれもまた良し!最後に暖炉を見て帰ることにしようか。

須坂ショッピングセンターの退廃美

店を出て次に立ち寄るスポットは、同じ須坂市内にある須坂ショッピングセンターパルムという大型商業施設だ。
ここは旅に出る前にたまたま発見したスポットなんだけど、かつて栄えた施設だったものの近年は営業している店舗が数件のみになって、ショッピングセンターに入ることは出来るものの、館内はうら寂しい廃墟のような状態になっているということで凄く興味を惹かれた。
しかもこの秋にショッピングセンターは閉鎖されてしまうらしく、その姿を拝むにはこのタイミングしかないということで、今回ぜひ立ち寄ろうとチェックしていたスポットだ。
1969年開業だという須坂ショッピングセンターは、その長い歴史ゆえに色濃く昭和感を残した建物らしい。私には縁もゆかりも無い建物だけど、無くなってしまう前にぜひこの目で見ておきたいところだ。

こうして着いてみると、建物は立派だけどたしかにもう活気が感じられず、かなりの年季も感じられる。ガラス張りの入口から中を覗いてみても、手前で営業している一軒以外はシャッターを下ろしていてかなり寂しい風景が広がっている。
ただ入ろうと思っても締め切られているようで、ここからは中に入ることができなさそうだ。完全に入口だから「そんなことあるか?」と思いながらも、とりあえず入れるところを探しに行くことに。

こっちもこっちで年季が入った雰囲気の入口。あの階段もところどころ崩れていて、なんだか物悲しい雰囲気を醸し出している。そしてもちろん入っていく人も出ていく人もいない。こんな状態でまだ施設自体は営業しているというのは凄いな。そしてありがたい。ではいざ館内へ!

思った以上の、そして期待以上の雰囲気に少し驚きながらも、このノスタルジックで時間が止まったような館内に、言い知れない魅力のようなものを感じてる自分がいる。廃墟でも同じような感覚はあるけど、少ないながらも未だに営業してる店があって、わずかな灯火のようなものを感じられるところに、廃墟とはまた違った不思議な空気感を感じる。さっきも言ったけど、ビューティフル・ドリーマーみたいな夢の世界に迷い込んだような、、、ともかくこれは立ち寄って良かった。こんな気持はなかなか味わえない。

そんな風にしんみりしながら階段を上がっていくと、近くで若者数人が離している声が聞こえてきた。
どうやら離している内容的に、階段を上がったすぐのところでコスプレ撮影をしてるみたいだ。たしかに、ここは撮影にぴったりの場所だろうな。
どういう格好の人が撮影しているのか気になったけど、この状況でズカズカ上っていくのも気まずいので引き返すことにした。

閉業まであとわずかだけど、最後の最後にこうして訪れることができてよかったな。以前に一度でも来たことがあったらまた違った感慨を覚えたことだろうけど、今回初めて来た私でも凄く印象的な体験になった。
しかしこんな状態になっても、館内はもちろんこの屋上も、建物脇の非常階段も、落書きも無ければゴミすら落ちてないというのは驚きだった。夜間は当然閉められてるだろうけど、こういうところはヤンキー達の溜まり場になりそうなものだ。年季は入ってるけど綺麗ということは、今でもちゃんと業者さんとかが清掃してくれてるのかもしれない。
閉鎖された後にこの土地や建物がどうなるのかはわからないけど、また近くに来た時には様子を見に期待もんだ。

野沢温泉に向けて

小布施を抜け、渋温泉も抜け、とにかく野沢温泉に向けてまっしぐら。
初めて走る道だけど、ここらへんはまっすぐに道が伸びてるうえに周りが開けてるから、とにかく走ってて気持ちが良いぜ。なんだか今、旅をしているって感じがものすごく体中に満ちている。これから楽しみにしている祭りを思う存分見られるかと思うと、どんどんテンションがあがっていくぜ!

これ、どうやらサーモンの餌袋を使ったバッグのようで、その名もサーモンバッグというらしい。
色合いもイラストもレトロで可愛いし、かなりしっかりした素材なので長く使えそうだ。正直めっちゃくちゃ欲しいッ。
ただ、布ではなく頑丈な紙をさらに加工したものっぽいので、布バッグみたいに小さくできずに結構かさばりそう。私のような原付移動人には結構つらいところだ。なので、悩みに悩んだけど結局買うのは諦めたのだった。まぁ旅から帰ったらオンラインで買えばいいか。
(と、思ってたんだけど、この日の夜調べてみるとオンライン販売はしておらず、ほぼこの道の駅限定みたいでした。欲しい人は花の駅千曲川まで行きましょう)

というわけで、結局デカデカと「飯山」と書かれたトートバッグを購入して道の駅を後にしたのだった。

本日のお宿、民宿梅之屋到着!

いやぁここまで長かった。旅行の初日と最終日以外で100kmも走ったのは本当に久しぶりだったわ。でも頑張った甲斐あってただいまの時刻は約16時半。まだ祭りは本格的に始まってなさそうだし、良い時間に着くことが出来てよかったよかった。
とりあえずどこに駐めていいかわからないから、一旦原付は適当なところに置いといてチェックインしようかッ。

ガラガラっと戸を開けると「こんにちは〜、いらっしゃいませ〜」とすぐに迎えてくれたのが、意外なことに若い女の人でちょっとびっくり。しかしすぐに奥からご主人と女将さんが「どうもいらっしゃいませ〜」やってきて、皆で温かく迎えてくれた。どうやら家族経営してるあったか民宿らしい。

「予約してた〇〇です〜。あの、もうお祭りは始まってるんですか?」といちばん重要なことをいきなり聞いてみると、「いや、まだですかね〜。18時くらいからなんですけど」と娘さんが答えてくれたので、とりあえず一安心の私。そんな話をしていると女将さんが祭りのパンフレットを持ってきて色々説明してくれたんだけど、祭りが始まる時は花火が上がって、そこから本格的に祭りがスタートするとのことだった。
女将さんによると18時から歩行者天国になって、19時半に花火があがると、それを合図として神事が始まるらしい。祭りは夜の22時までらしいけど、その後に村の人達の間で行われるもろもろを含めると24時を過ぎるまで祭りが続くらしい。
もうこの話を聞いてるだけでワクワクがこみ上げてくる。やっぱり祭りはそういう神事としての形を色濃く残したものが一番だ!そしてそんな祭りに関するいろいろを、ご主人・女将さん・娘さんで雑談交じりに楽しく話してくれるこの宿の雰囲気がとっても素敵でございます。

その後部屋に案内してくれる流れになったので「あの、バイクそこに適当に駐めてあるんですが」と伝えると、「じゃあ離れたとこに駐車場あるんで、車で案内しますから、とりあえずここに荷物を置いてついてきてください」と、女将さんが駐車場まで案内してくれることに。
そして少し離れた駐車場、というか車庫に原付を駐めさせてもらって、帰りは後ろに乗せてもらって再び宿に戻ってきたのだった。終始明るくて優しい女将さんにすっかりほっこりしてしまった。

部屋に案内してくれた後に娘さんが色々説明してくれたところによると、風呂は基本的に外湯を使うことになってるけど、一応19時〜21時までは宿のシャワーを使えるらしい。
その他、この後娘さんはお父さん(ご主人)と一緒に祭りに夕食を買いに行ったり、ちょっと神事を見に行ったりするようだ。なんだか仲良し家族の家にお邪魔したみたいで、到着早々居心地が良いぜ。

最後に「他になにか気になることとかありますか?」と親切に聞いてくれた娘さんに「いや、今のところ大丈夫す。何かあったら聞きますね」と答えると、娘さんは愛想よく下に降りていった。

ちなみに私は今日素泊まりでの宿泊(というか祭りの日なので全て素泊まり)なので、私も神事が本格的に始まる前に屋台で夕食を買ってこなくては。娘さん曰く鶏皮焼きの塩ダレ味が一番のおすすめらしいから、それは確実に買わせていただく!

新田の湯と祭り散策

温泉に入るにあたって外湯にソープ類が無いのはわかっているので、ここで売ってるボディソープを購入。その時、ちょうどご主人と娘さんが祭りに買い出しに行くところで「途中まで一緒に行きましょう」とお誘いいただいたので、宿から一番近い新田の湯という外湯までご一緒させていただくことに。
ごく自然にそういう流れになったけど、こういうことって今までほとんど経験がないから実はめっちゃ嬉しいす。

中から話し声が聞こえていたので分かってはいたが、そこまで広くない浴室には若い人からご老人まで気持ちよさそうに温泉を楽しんでいて、中には野沢温泉らしく外国人の姿もある。
とりあえず皆さんの邪魔にならないように端っこでささっと服を脱いで、まずはかけ湯で足先からチョロチョロかけてみたけど、やっぱり野沢温泉の湯は熱いなっ。前回来た時、一番ぬるいという話だった熊の手洗湯でさえ私には相当な熱さだったが、ここもやはりかなり熱い。地元民の意地なのか慣れなのか、マジで一切水でうめていない、熱々の濃度100%温泉って感じだ。

一応入ることはできるものの、私では数分が限界なので、出たり入ったりしながらなんとか15分くらいは新田の湯を楽しんだ、、、が、これはしばらく汗が止まらないだろうな。しかし何はともあれ、さっぱりしていて体がキリッとする良い湯でございました。

一旦部屋に戻ってエアコン全開+うちわパタパタしながら小休止した後、1階の廊下にぶら下げられている祭りのパンフレットを見に行くと、偶然女将さんとかち合ったので、祭りについて色々聞いてみた。

祭りのメインは神事で、この神事で行われる舞を猿田彦の舞と言い、温泉街を回りながら各地点で披露されるらしい。そして最終的には、温泉街の中心にあたる大湯前にて(あくまで観光客目線での)締めくくりの儀式が執り行われるとのことだった。
「大湯前の神事は、大湯を背にしてみるのがいいですよ。大湯の建物の周りは一段高くなってるから、そこからだと神事も周りもよく見えるんです」と女将さんイチオシの観覧場所も教えてもらった。なんせ地元民のおすすめだから信頼度が半端じゃない。どれだけ混むかわからないけど、大湯前は絶対に確保してやる!
他に、これから上がる花火はどこからでも見えるから、お好きなところで見てくださいとのことだった。じゃああの水路の途中にちょっとした座れる場所があったから、花火はそこからみることにしようかな。いや、本当に良い情報をありがとう女将さんッ。じゃ、散歩に行って参ります。

今私が歩いているのはその名も大湯通り。この進入禁止の大湯通りをまっすぐいけば大湯に行き当たるわけだ。夕方になって涼しくなった温泉街は遠くからガヤガヤと喧騒が響いて、街に活気が溢れているのが伝わってくる。山奥の村の夏祭りってやっぱり雰囲気が凄くいいっすね。

屋台が並んでるところまで来ると、ちょうど戻るところのご主人と娘さんに会ったので、少しだけ話をしてから私はさらに奥へ。
大湯通りは温泉街のメインストリートだと思うけど、それでもそこまで幅の広くない道に色んな屋台が建ち並んで、村の子供達も皆凄く楽しそうに祭りを楽しんでいる。というか、こういうのも失礼かもしれないけど、野沢温泉ってこんなに子どもが多い村だったんだな。やっぱり祭りには子どもの楽しそうな声がよく似合う。私も実はかなりテンションが上がっております。

屋台がある中心地エリアは賑わってるけど、そこからちょっとはずれるとこんな感じで静かな温泉街が広がっている。皆大湯通り周辺で楽しんで、関係者はまた違うところに集まって準備してるんだろうから、他のところはこういう落ち着いた感じになってるんだろうな。
しかしこういう機会だから、どこかしらのお店に入って地元の雰囲気を味わうっていうのも凄く魅力的なんだけど、そうすると神事を見逃しそうだから今回はできないな。やっぱり屋台で夕食を買って、祭りが本格的に始まる前に食事を済ませるっていうのが一番良さそうだ。

鶏皮焼きは人なようで、結構並んでたけど私も迷わず列へ。見たところ3種類のタレを自由にかけられるみたいだけど、私はやっぱりおすすめの塩ダレだな。
しかしこの大量の鶏皮をヘラでじゃんじゃん焼いてるおじさんの暑そうなこと。動かすたびに湯気が直撃して地獄のような熱さだろうな。並んでる私だって暑いんだから。そんな根性の鶏皮、美味しく食べさせてもらうぜ!

花火が打ち上げが開始の合図!野沢温泉祭りの猿田彦の舞を見る!

現在の時刻は大体19時くらい。ゆっくり食べてのんびりして、19時半になったらすぐそこの水路で花火を見る。良い塩梅じゃないか。
それで祭りを見終わったら温泉に入って、その後はこの宿でもうひとつのお楽しみが待っている。というのも、この梅之屋では地下の食堂が夜には宿泊者専用のバーになるらしく、さっき帰ってきた時にご主人が優しく誘ってくれたもんだから、楽しそうだしできる限り行きたいなと思っている。

バーがあることは予約の時点で知ってたんだけど、正直、もし宿のご主人や女将さんが強引なタイプで「一緒に飲みましょうや!」みたいな感じだったらちょっとキツイなと若干不安に思いながらの予約だった。でもそんな不安は全くの杞憂で「よかったらお祭り見終わったら後、一緒にバーで飲みましょう」と優しく誘ってくれたのだった。
もちろん私のメインはお祭りで、お祭り次第なところはあるんだけど、あのご主人とも話したいし、なるべくならバーに行こうとご主人の優しい顔を見て思ったのであります。

しかし鶏皮焼きウマいな。さすが娘さんのおすすめなだけある。大阪焼きもしっかり主役を張ってくれてこっちもいい味だ。そんな2品を祭りのライブカメラを見ながら食べるこの時間、なんか好きっす。

そうこうしているとすぐに19時半になったんで飲み物を持って外へ。すでに玄関前で待っている女将さんたちの声をかけて、水路の休憩スポット(?)でその時を待つ!

どうやら向こうの山あたりから打ち上げてるみたい。思ったより花火が近いから、ドーンと音が鳴るたびに腹の底に響いてきてテンションがあがる!しかも全然人がいないから、一人でゆったり楽しめるのも最高だッ。横を見ると道にも誰一人いないけど、近くの宿の人も外に出てきて、椅子に座りながら花火鑑賞を楽しんでるみたいだ。

田舎の小規模花火大会って、なんでこんなに心にじんわり来るんだろうな〜。なんか素朴でありながらも強烈なノスタルジックを感じて自然と頬が緩んでくる。これだから夏休みの旅は最高なんだッ。
ギリギリ横になれるから、だらっと横になってのんびり見させてもらいます。

そして宿に戻ったらご主人に遭遇。

ご主人「花火すごかったでしょ?」

私「はい、めっちゃ迫力ありました」

ご主人「ここらへんは盆地だから、音が山に響いて凄いんですよ」

うん、たしかに一発あがるごとにゴォォって地鳴りみたいな音がして凄かった。昔見た遠山郷の花火を思い出したぜ。
そんな軽い会話をした後、タオルを持っていざまた宿を出発!さてどうなっていることか。

宿のご主人達に挨拶して大湯通りまで来るとさっきのスカスカ具合とは一転、道を埋め尽くす行列と見学者たちの群れが!十王堂の湯前はもはや通り抜けできなさそうだけど、派手な灯籠を掲げた行列は熱気を帯びたままゆっくり奥へと進んでいく。かっこいいな!

プログラム通りなら、ここから24時まで温泉街各地を回っていくんだろうか。だとしたらこれはかなりの長丁場だ。
では、とりあえず灯籠行列はある程度楽しんだから、先回りして屋台があるあたりに行ってみよう。

大湯前
人混みを縫うようにして大湯前へ。ここも盛り上がってる

途中に舞が行われてるのを見かけたけど、人が多すぎて見られなかったのでとりあえず大湯前までやってきたら、ここでもお祭りらしさ全開で盆踊りが行われていた。
灯籠行列に猿田彦舞、さらに神輿や盆踊りに内容盛りだくさんのこのお祭りだけど、さっき女将さんと話した時に聞いたところによると、さらに獅子舞や、子どもたちが披露する三十六歌仙舞というのも披露されるらしい。内容が濃すぎるし人も多いからなかなか全部を見るのは難しそうだけど、この素敵な祭りの空気を楽しみながらせめて猿田彦の舞だけはしっかり見たいもんだ!
そんなことを考えながらぼんやり盆踊りを見ていた。

なるほど、こんな風にポイントポイントで舞を披露して、じわじわ進んでいくんだな。あと何回くらいそうするのかはわからないけど、もうちょっとしたら大湯前に到着しそうだ。ある程度散策したら場所取りのためにちょっと早めに待たないといけないな!しかしなにもかもが密度の濃い祭りだぜッ

その後ブラブラしながらかき氷を食べて、そろそろかと思うところで大湯前に移動。もう盆踊りは終わって、ある程度待っている人がいるけれどまだまだ場所は空いているみたいだ。
女将さんおすすめの場所もまだ空いていたので、一段高くなってるところの角に陣取ってあとは一団の到着を待つばかり。待ってる間、うす〜く雨が降ってきたけどそんなことは気にしない。頭にタオルを載せて、ひたすらその時を待つ!

天狗の面に大きなかぶと、そして白装束に赤い羽織と伝統的な衣装に身を包んだ猿田彦がやってくると、皆嬉しそうな顔をしながらも固唾を飲んで見守っている。これからどんな舞が見られるのか、期待が高まりに高まっているような空気が漂ってるのがわかる。
このそこまで広くはない舞台で一体どんな伝統の舞を披露してくれるのか、めちゃくちゃワクワクしておりますッ。

舞が始まった!
槍状の棒を突き刺すように、キレのある動きでじわじわ前に進みながら舞が披露されている。
猿田彦は穢れ祓い、先払いの神とのことで、今まさにこの土地の浄化をしているところなんだろう。夜の温泉街の一画で、今まさに伝統芸能の神事が執り行われていることを思うと、何か凄く日本に生まれてよかったという想いが湧き上がってくるッ。
ちなみに私は今、右手にデジカメ、左手にスマホを持って、大変な思いをしながら写真と動画を同時に撮っているんだけど、画面越しじゃなくて、なるべくこの目で神事を目に焼き付けようと必死に頑張っております。

そして最初の舞が終わると、猿田彦は元の位置に戻って次なる舞の準備が始まった。
白装束の人が猿田彦を大団扇で仰ぎながら、別の人が猿田彦の手に太刀を渡して短い剣舞が行われた後、続いて先端に火のついた大松明を手渡し、壮大な猿田彦の舞の松明舞がはじまった!

こんな燃え盛る松明を振り回してる猿田彦もとんでもない熱さだろう。振り回している松明は、下手をしたら最前列の人に当たるんじゃないかというくらいの距離を、火の粉を散らしながらブオンと通り過ぎていく。
しかもそれだけにとどまらず、時折片手に持った太刀で松明をチャっと叩くもんだから、大量の火の粉が周りの観客の頭上に降り注いでいる。その度に「オオー!」と歓声が上がって皆松明舞に大熱狂しているが、私も例に漏れず完全に舞にのめり込んでいた。これだけ間近の大迫力、とんでもねぇぞッ!

どこか別の世界の出来事のような、神秘的で力強い猿田彦の舞。いつの間にか雨も止んだ大湯前、猿田彦はじわじわしめ縄に近づいていき、神事も終わりに近づいているような気配を感じる。松明も燃えに燃えてかなり短くなっているけど、ここからどうなるんだろうとドキドキしながら猿田彦の姿を追いかけた。

そしてしめ縄前まで来ると、短くなった松明で紙垂を撫でるようにして燃やし始めた。
「そっか、この火でしめ縄を燃やして神事は終わりなのかっ」と思った瞬間、それまでゆっくりと左右に動かしていた松明をいきなり後ろにぶん投げるという予想外の展開に(動画5分38秒ぐらい)!一瞬のできごとで全くカメラに収められなかったけど、真後ろに投げられた松明は私のすぐ横の建物にあたって、燃え盛る松明そのままに壁際で見ている観客たちの頭の上に落下した(みんなちゃんと逃げてたから怪我人なし)。

それまで一言も発さずに見ていた私だけど、その一瞬のあまりの驚きに「ウオッ!」と言葉にならない叫びが出てしまった!かなり危険な行為だとは思うけど、それだけに面白くて衝撃的で、見ている人全員が歓声をあげての大盛りあがり。そして私ももちろんテンション爆上がり!後ろも見ずに一瞬で松明をぶん投げる姿、とんでもなくカッコよかったぞ!
クライマックスでこんな大胆なサプライズが待っていたとは、マジでこの祭りを見に来て良かった!

猿田彦御一行はこれからあの坂の上にある湯澤神社まで行って最後の最後の儀を執り行うんだろうけど、多分一般向けにはこれが最後って感じなんだろうな。もう時間も22時前だしバーにも行きたいから、もう少し祭りの雰囲気を楽しんでからバーに行くとしよう。もちろん風呂に入ってから。

祭りを後に、十王堂の湯に浸かる

大湯前でウロチョロしながら大湯通りを引き返していく灯籠行列を見送っていると、なにやら法被を着て棒を持った子どもたちが集まってきた。野沢温泉に住んでる子どもたちだろうけど、なにやら皆ニコニコ顔で楽しそうだ。これは何かが始まりそうな予感!

というわけで何が起こるのか見ていると、大人の指示で子どもたちが道の両端に一列ずつ並びだし、「わぁ〜!」と叫びながらガッツンガッツン棒をぶつけ合っている!なんなのかわからんけどとにかく楽しそうだ!

「つくづく面白い祭りじゃ!」と思いながら見ていると、なんとこの奴燈籠のたたき合いはただバチバチ棒をぶつけ合ってるだけじゃなく、その間を参加者がくぐっていくという催しらしく、「いくぞいくぞ」と言いながら大人も子どもも悲鳴をあげながら楽しそうにすり抜けていっている。すり抜けていく人が叩かれるわけじゃないみたいだけど、これはスリルがあって見てるだけで面白いぞ!

いつの間にか大湯前はまたさっきのように人が集まっていて、皆楽しそうに獅子舞を見守っている。お囃子と舞が心地良いリズムで、これぞ田舎の伝統的なお祭りって感じが心にしみるわ。
しかし!これを最後まで見てるとさすがにバーが終わっちゃうと思うから、後ろ髪をひかれながらも宿に戻ることにした。宿にバスタオルを取りに行って、温泉に入ってから湯上がりにバーで酒。最高の流れじゃないか!まだ外湯に入れるのかはわからんけど!

そうして宿に戻ると、またしてもちょうど良くご主人に遭遇。
バスタオルを持って「ちょっとフロ入ってきますね」と告げると「はいはい、パチャパチャやってくるんでしょ。まだやってるから行ってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれた。既にバーは始まってるらしく、いないと思っていた他の宿泊客と一緒に飲んでいるようだ。何時に終わるか分からないからさっさと入ってこなければ。

ドアをキィっと開けると香ってくる温泉らしい硫黄臭。浴槽にたまった温泉も、蔵王の湯を思わせる白濁した薄青色だ。浴室はシンプルながら、他の外湯とは違ったコンクリの建物にあるので、ここはここでまた違ったレトロな趣があるのがイイな。

しばらく誰も入ってなさそうだから湯もかなり熱いだろうと思いきや、かけ湯をしてみると、熱いことは熱いんだけど新田の湯ほどヤバい温度じゃない。これなら少しはゆっくり入れるな。
というわけでさっさと体を洗ってザンブと肩まで湯に浸かる。ここもさっぱりした浴感で、スルッと入れる意外な浴感がなんとなく凄く肌に良さそう。熱い湯に入ったことで体がピリッと引き締まったし、あとは体を伸ばしに伸ばして大リラックスさせてもらうぞ!

窓からはビルの間を吹き抜ける風が入ってくるので、体がほてった時の休憩がめっちゃ気持ちいい。祭り終わりの夜遅くに、このレトロ浴場で静かに湯を楽しんでるという状況も素敵。のぼせる限界までこのひとときを楽しませてもらいます。

なんだなんだと少しばかり見ていたら、白装束に赤袴の子どもたちがお囃子を演奏しながら舞を踊り始めた。
どこでやってるんだと思ってたけど、どうやらこれが子どもたちによる三十六歌仙舞というものらしい。
子どもとはいえお囃子や舞は大人顔負けで、皆のキリっとした表情がかっこいい。こういう伝統を受け継いでいる子たちは素晴らしいし、受け継ぐことができる環境にいるというのが凄く羨ましく感じる。
最後に良いものを見せてもらったぜ。

宿泊者限定のバーで飲むウマい酒

「バーっていうけどどんな感じになってんだろう」と思いながらガラガラっと引き戸を開けると、広々とした食堂の真向かいにバーカンが設置されていて、壁には沢山のリキュールやら日本酒やらがずらっと並べられている。
バーカンの向こうにはご主人と娘さん、そして見知らぬ男性が一人。手前で座って飲んでる人がいるけど、この人がお客さんだろう。

私が「遅くなりました〜」と入ると、皆さん明るく「こんばんは〜、いらっしゃいませ〜」と温かく迎えてくれた。挨拶してお客さんの横に座ると、ご主人があの見知らぬ男性を紹介してくれたんだけど、どうやらこの人は娘さんの旦那さんのようでちょっとびっくり。しかしこの人もまぁ物腰柔らかで見るからに優しそうな好青年で、娘さんにぴったりと思えるような旦那さんだ。本当に良い人揃いの宿だねここは。

このお酒は娘さんの旦那さんが揃えたものらしく、ご主人によると「どこにも売ってない酒がいっぱい揃ってる」らしい。私もカクテルは飲むので多少はリキュール類を知っているけど、確かに全然見たことないものばかりだ。

そうしているとまず旦那さんが水を出してくれたついでに「さっぱりした、面白いジンを使ったお酒なんかいかがですか?」と言ってくれたので「いいですね、お願いします!」と即決。酒を集めたのが旦那さんならマスターも旦那さんということのようなので、ここは全ておまかせに限る!

一口飲んでみるとたしかにかなりさっぱりしてる。けれどどこかフルーティでスパイシーな味わいがあって風呂上がりにぴったりな爽快さ。これはウマいぜ!さすがこだわりの旦那さんが作る一杯だ!
「うまいっすねこれ!」と言うと「ありがとうございます。よかったです」と嬉しそうにしている旦那さんが可愛い。そんな至高の1杯を飲みながら、楽しい会話を肴に盛り上がるこの時間がめっちゃ楽しいです。

ご主人「お祭りどうだった?ちゃんと見れました?」

私「お祭り凄く良かったですよ。猿田彦の舞も、女将さんに教えてもらった場所で見たらめちゃくちゃ良く見えましたし。舞がとにかくカッコよかったス」

ご主人「そりゃ良かった。私は昔猿田彦の舞の太鼓を叩いてたんだけど、舞を踊る人は「周りに人がいても気にするな」って教わるんですよ。地元のための祭りだから、人よりも、舞の型通りにやるのが大事なの」

なるほどな、確かに猿田彦の舞意外にも色々なことをやっていたけど、地元のためのお祭りって言葉に妙に納得だ。派手で盛りだくさんで楽しい祭りだけど、たしかに部外者に向けたサービスのような側面は感じられなかった。村のための、地元民のためのお祭りだからこそ、あれだけの皆が楽しんで盛り上がることができるんだろうな。
そう聞くと、あの舞も一段と神聖なものに感じられてくるな。目の前で舞われていた舞の数々が、周囲から切り離された聖域の中で行われていたような感じがしてきて、とても荘厳なものを見ていたんだと思えてきた。伝統が残ってるって素晴らしいなホントに。

皆で楽しく話していると一杯目がなくなったのですぐに2杯目へ。
私は甘党で、カクテルを飲む時は甘くてフルーティなガルフストリームというのを良く飲むんだけど、そんな感じのやつでとお願いしたら少し考えた後ですぐに作ってくれた。

この左側のブルーベリー風味のリキュールをベースに作ってくれたらしい。これも見たことがない酒だ。
一口飲んでみると、さっぱりした口当たりの中にも爽やかな甘さと南国感溢れるフルーティーさが感じられてとんでもなくウマい!これ私の好みにぴったりのめちゃくちゃ好きなやつだっ。こりゃすぐに無くなるぞ。

私「宿でこんな美味しいお酒が飲めるって最高すね」

ご主人「このバーは一般に開放してないからね。泊まった人だけが来れるから。終電もないし、酔ったらすぐに部屋行けるし最高でしょ?」

たしかに、階段あがったらすぐに部屋だから時間もなにも気にする必要がないってのはかなりでかい!布団さえ敷いておけば、いくら飲んでも眠くなったらすぐに部屋に戻って横になればいいんだ。しかも宿泊客のみだからこうして皆で楽しく話ができる。あまり酒は飲まない私でもこれだけ楽しめるんだから、酒飲みの人にはたまらない宿じゃないかここは。ご主人が「これ目的で泊まりに来てくれる常連さんも一杯いる」って嬉しそうに話してたけどそれも大納得のイイ宿だホント。

そんなこんなで皆と楽しく話していたら、いつの間にか時刻はもう12時に。
皆それなりに良い感じになってきたところでのこの時間なので、ご主人の「じゃあ今日はこのへんにしときましょうか」の一声で、楽しいバータイムはお開きとなったのだった。
明日も朝から祭りをやってるようだし、私も寝ておかないと明日の道中が心配だしでちょうどいい。宿の皆さんともう一人の宿泊客の方に挨拶して、良い気持ちで部屋に戻っていった。

朝の中尾の湯、そして出発へ

只今の時刻はちょうど8時。朝食付きじゃないからこそこの時間まで寝ることができる幸せだ。
今日の予定としては、これからゆっくり温泉に入って少し祭りを見学してから野沢温泉を出発って感じかな。今日の宿までの距離は大体50kmくらいでかなり余裕があるから、ゆるゆるのんびりと進んでいきたいと思ってる。初めて走るルートを通って宿に行くから、いつも以上に楽しみながらいきたいな。

1階に行くとちょうど女将さんがいたので、挨拶がてら昨日の花火の話なんかをした後に宿を出発。話している時に近くにある中尾の湯という外湯を教えてもらったので、迷うことなく教えてもらった道を進んでいく。

朝だからそれなりに人がいるかなと思いながら外湯のドアを開けると、意外にも入っていたのは2人だけで、しかもどちらも外人さん。とりあえず目の前にいた人に挨拶してから、さっさと服を脱いで朝の1湯を楽しむべく突き進む。

ここは昨日の十王堂の湯や新田の湯と違って硫黄成分は入っていないようだ。澄んだ湯は香りもなく、ただただむあっとした熱気を浴場内に貯めている。これはきっと熱い!
しかし浴槽が2つに仕切られているので、コレは多分熱湯と温湯に分けられてるということだろう。私が初めて入った熊の手洗湯もそうだった・・・が、それでも油断はできないのが野沢温泉。

というわけで慎重に温湯の方をかけ湯してみたら、やっぱりちょっと熱めだけど私でも割と大丈夫そうな温度だ。地元住民らしき外人さんは向こうの熱湯にどっしりと浸かってさながら武士のようだが、私はあっちには残念ながら入れないだろうな。だって温湯でもこれだけ熱いんだもの。。

早く温泉を味わうため、高速で体を洗ってすぐに温泉へGO。さすがに全身を流した後だから、肩まで浸かるのもすんなりできた。
他の人もいるから声は出さないけど、広々とした浴槽で思いっきり足を伸ばすとこれが本当に良い気持ち。静かな浴場で、朝からアツアツ温泉に浸かって体を整えられるこの幸せが、野沢温泉の人たちにとっては日常なんだなと思うと心の底から羨ましくなってくるわ。仕事をしてたって、帰りには温泉で疲れを癒やすことが出来ることを思えばいくらでも頑張れそうだし。
とにかくこの静かなリラックスタイムが最高でございます。

もう祭りは始まってるのか知らないけど、ここらへんは長閑な山村の風景が広がってて朝の散歩にちょうどいい。やっぱり自然に近いところで生活するっていうのは、こういう爽やかな生命力みたいなものが感じられて素敵だな〜って思うな。歩いてるだけでこんなイイ気持ちなんですもの。

1階に吊るしてある祭りのプログラムを確認したら神輿は9時半に出ると書いてあったので、私もそれにあわせて同じ時間にチェックアウトすることにしようかな。ただ、宿を出てからも祭りを見学するつもりだから、もし出来るようなら野沢温泉を出発するまで駐車場に原付きを駐めたままにしておいていいか聞いてみよう。
さて、それじゃ出発の準備も済ませたし、あとは時間までだらだら過ごすことにしましょうか。

危うく二度寝するところだったけど、ちょうどいいところで時間がきたのでそろそろ出発しようか。部屋も綺麗にしたし、それじゃ、一晩お世話になりました!

荷物を持って1階に行くと、ちょうど昨日のお客さんが宿を出る前に女将さん+ご主人と話しているところだった。どうやらあのお客さんは、もうこの段階で年末の予約を取ったらしいけど、確かに昨日そんな話をしていたような気がする。やはりここは常連に愛される宿のようだ。

その後私も一緒にお客さんを見送って、次に私が精算へ。
お金を払ってる間に原付きを駐めておいていいか聞こうと思ったら、女将さんが「もしお祭りとか見られるんでしたらバイク駐めたまんまで大丈夫ですから。これからお神輿が出るんで、良かったら見ていってください」と、私の心を読んだかのようなタイミングでお許しを出してくれた。私が祭り目当てで来てるというのを知っているとはいえ、なんと気が利く女将さんだ。
その時昨日私が飲んだお酒のレシート(というか手書きのメモ)も流れでもらったけど、そのあまりの安さにまた驚いた。
「めちゃくちゃ安いっすね」と言うと、ご主人は「そうでしょ。あるお客さんはね、宿泊代がチャージ代って言うんですよ」と嬉しそうだった。

ご主人「13日にバーを新しくするから、今度見に来てくださいよ。また一緒に飲みましょう」

私「今でも凄いのにさらに本格的になるんすね(笑」

ご主人「凄いテーブル用意する予定なんで。これも縁ですから、よかったらまた是非いらしてください」

私「もちろん、絶対また来ます」

そんな感じで約束を交わして、温かい笑顔に見送られて出発!ありがたいことに原付きを置かせてもらえることになったんで、ここからは歩いて朝の温泉街散策+祭り見学だ。

宿の皆さんの優しさと温かさのおかげで予想以上に良い一晩になったもんだからかなり後ろ髪を引かれる思いだけど、また泊まりに来ると約束もしたし、次に来るときを楽しみに今日も旅を続けることにしよう。


今回泊まった梅之屋さんは、温かく優しい宿の皆さんが丁寧にもてなしてくれる、とても居心地の良い宿でした。
コンパクトな宿なのでアメニティ類はありませんが(一部販売あり)、部屋にはエアコンもあるしWifiも通っているので快適に過ごすことができます。また、野沢温泉なのでお風呂は外湯頼りですが、面倒臭いということは全くなく、むしろ新鮮で楽しい温泉ライフを堪能できました。

一番の特徴はやはり夜に開かれる宿泊客専用のバーだと思いますが、これは酒好きには本当におすすめできると思います。珍しいお酒で作ってくれるカクテルはどれも美味しく、しかも通常では考えられない値段で飲むことができ、さらに疲れたり眠くなったりしたらすぐに部屋で寝ることができるのは最高の一言です。それに加えて、宿と宿泊客の皆さんと楽しくお喋りできるので、とても良い旅の思い出になりました。
人のぬくもりと野沢温泉を満喫するにはとても良い宿だと思うので、訪れた際にはぜひ泊まってみることをオススメします。

梅之屋 : 一泊二日 5,200円

公式サイト

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