8泊9日(今まで7泊8日と書いてましたが間違いでした)夏休みの旅7日目です。 [6日目] [8日目]
連日続く猛暑と晴天によってすっかり人種が変わったかのように焼けてしまった私だけど、今日もまた燃えるような太陽を共に連れての出発になった。思えば今回の夏休みは今までほぼ全て晴れが続いていて大当たりな旅になっているけど、台風の影響で風が強めに吹いていたから暑さも少しは和らいでいたというとこは大きかった。
ところが今日はといえば台風も前日に過ぎ去ってしまったこともあって全くの無風状態。これではいかに全身で風を浴びることができるバイクに乗っているとはいえ少々キツイものがあるけど、しかしこれから向かうのは避暑地で有名な軽井沢。軽井沢は行ったことがあるのかないのかわからないけど、毎年数多くの人たちが避暑に訪れる名所なだけに、軽井沢への期待値も俄然高まっていくのだった。
秋和鉱泉の女将さんと話している時「軽井沢に行く道は混んでると思いますよ。地元の人は抜け道を知ってるからいいけど」と言っていたけど、車こそそれなりに走っているものの特に渋滞などもなく「なんだ、大丈夫じゃないか」と思いながら走っていると、なんだか軽井沢っぽい街並みに入ったあたりから妙に混み出してきた。軽井沢に入った時点ではそうでもなかったんだけど、旧軽井沢のあたりでは混んできている。皆旧軽井沢がお目当のようだ。しかし私の記憶にはないリアルな軽井沢の様子にテンションは上がり気味だった。
ちょっとした渋滞が発生している!しかしそれよりも、やっぱり軽井沢は涼しい!
あたりはこれぞ軽井沢といったような、林の中にいかにもお金持ちが住んでそうな別荘やおしゃれなレストランなんかが立ち並んでいる。この風景は途中立ち寄った安曇野でも見かけた風景だけど、なんとなく軽井沢のほうが、空気に含まれる「西洋っぽさ」が濃いような気がするのはここが既知の場所だからだろうか。ともかく、原付に乗って旅をしている私には全く似つかわしくない場所なのは確かだけども。
かの有名なラウンドアバウトを超えて、さらに蟻の行列のごとく並び進む車にも負けずやっとこさ街の中心地にやってきた。これまでの道中でも自転車で颯爽と走る家族や、財布にも心にも余裕がありそうなじいさまばあさまを多数見かけたけど、ここまで来ると観光客の数もかなり多くなっていた。加えて警察の数も多く、どこかでイベントでもやってるのかと思ったけどそんなこともないようなので、警察が多いのは軽井沢の日常なのかもしれない。
しかし今回はそんな激混みの街中には用事がないので幸運だった。これから行くのはむしろ軽井沢のイメージとは離れた神社という和の空間だから、いくらなんでもこんなに混んでるということはないだろう。
そんなわけで街中を抜けて再び林の中に突入し、さっきとはまたワンランクぐらい上の雰囲気を漂わせている別荘地を抜けて山へ入っていく。この山をぐいぐい登っていけば目指している熊野皇大神社へたどりつけるわけだけど、しかし軽井沢とはいえここはただの山なのに、なぜか洋の空気が感じられるのは私のイメージによるものなんだろか。なんだか不思議な気分だった。
それなりの山道ながら観光客もそれなりにいてあたりは賑やかだし、澄んだ空と適度な観光地っぽさがなんとも夏らしくて気持ちがいい!これなら神社もさぞ良いところに違いない。ということで適当なところに駐めていざ神社へ向かうことにした。
最近どこもかしこもパワースポットと言ってるけどここも例に漏れずパワースポットらしく、参拝に来てる人も老若男女問わず様々なようだ。しかもここは長野と群馬の県境にある神社のようで、左側が長野県に座する熊野皇大神社、右側が群馬に座する熊野神社ということで、その立地の面白さからもパワースポットとして扱われてるんだろう。しかもそれぞれが同じ敷地の中で別々の宮司さんによって運営維持されてるようで、全く世にも面白い神社になっている。
境内には左右にそれぞれの神社の社があって、その中央に本宮がどっしりと鎮座していた。じゃあこの本宮はどちらの神社の?というと両社で共有している社らしく、ただお賽銭も参拝方法もそれぞれ異なっているので、とりあえずそれに習って二度参拝させてもらった。全くこうなってくると、宮司さん同士の人間関係なんかが気になってきちゃうな。
一方こちらの熊野神社はどっしりしつつも授与品はなし(社務所は手前の門のところにあります)。祭祀祈祷の時のみ使われるんだろか
参拝後、長野県側の奥にある御神木「科の木」を見てしばらく思いを馳せた後、御朱印などをもらいに皇大神社へ。参拝客もそれなりにいるので少し待ってから私の番になったんだけど、ここの宮司さん(なのかな?)は凄く愛想がよく親切な人で、笑顔で丁寧に接してくれた。まぁしゃべる内容もなんども繰り返してるおきまりのフレーズなんだろうけど、やはり愛想が良いとこちらも気持ちがいいもんだ。それを受けて特に他意はないんだけど、ふとなんとなく戸隠の無愛想な神職の方を思い出した。
少し待って御朱印帳を受け取る時に、八咫烏のお札もいただいた(もちろん有料です)。その時親切にも軽井沢にある「しなの鉄道神社」なる神社で、電車をモチーフにした御朱印がもらえると案内してくれたんだけど、どうやらそこはこの熊野皇大神社の分霊を受けた神社のようでこれまた珍しい神社らしい。これは少々迷うけど・・・・まぁ行きながら考えるとしよう。ともあれ、お目当の御朱印とお札をいただくことができてホクホクな私なのだった(熊野神社のほうでも限定バージョンの御朱印をいただきました)。
こうして軽井沢に寄る最大の目的を達成したらもう後は今日の宿を目指すのみ。なんだけどせっかく軽井沢に来たのにこのまま去るのももったいないので、途中に発見していた教会へと寄ることにした。本当はもっと散策したいんだけどね。
神社を出ると観光バスが到着していた。軽井沢らしくて非常によろしい
そして原付で山を降り、小道を行くと現れるのがこの聖パウロカトリック教会だ。
教会なんて滅多に行くことがないもんだからこれはいい機会だ。特に何かイベントやらをやってるわけではないけど観光客でも自由に入れるらしく、こんなヨーロッパの田舎に建っていそうな素朴で清らかな建物に入るのはなんだか新鮮だ。
いざ中に入ってみると、神社とはまた違った静寂と建物から滲み出る雰囲気に、教徒でない私でもなんだか畏まった気持ちになってしまう。教会の扉には「中ではお静かに」との旨の張り紙があったけど、それにしたってこんなにも静かなもんだろうか。こんな空気の中でゆっくりと読書でもしてみたいもんだ。来て良かった。
そんなちょっと不思議な感覚をしばらく味わってから、そろそろお腹も減り始めて来ていたので今日の宿の方向へと向かって出発する。来た時と同じく旧軽井沢は相変わらずの人出でごった返していたけど、帰りの道はあまり混んでなかったのでスイスイ進み、途中道を折れて大きめの道路に出るルートを走って行った。
途中で見つけた美容院。名前が気に入ったのでついつい写真を撮ってしまった。
そのついでに近くに良い飲食店はないかと探してみると、なんだかよさそうなラーメン屋があったのでそこに照準を合わせて一目散に進む。しかし普段はラーメン屋なんてあまり行かないのに旅に出ると頻繁に食べるのは、やはり肉と油分と塩気が手軽にとれるからなんだろうな。
中にはまだあまり客がいなかったのですぐに席につくことができた。お客さんは地元民っぽい人数人、そして店内BGMはテレビから流れる地元のニュース番組の声。そんな空間がなんだか”見知らぬ土地に来た感”を煽ってくれて居心地が良く、普通のラーメンにしようと思ってたのについついチャーシューメンを頼んでしまっていた。
そんな気分に流されて頼んだチャーシューメンがこちら。これは頼んで正解だったかッ?
ぶ厚めに切られた肉が何枚も入っていかにも食べ応えがありそうだけど、その見た目は案外落ち着いたもので素朴な中華そばといった風合いだ。でもこんなシンプルなものこそ美味しいハズ!・・・なんて思いながら食べてみるとやはりこれが当たりで、しつこくないスープと麺に、柔らかくもしっかりと形を残す程度に煮込まれた程よい脂感のチャーシューがバッチリの相性で一つの丼に収まっている。こう暑い夏にはもっと脂っ気のあるラーメンを食べたいと普通なら思う私だけど、これはこれで全体のバランスがとても良く、変に奇をてらった味でもないので安心して食べられる良さがある。まさにこの店の雰囲気にぴったりのラーメン。美味しゅうございました。
一杯で結構お腹も満たされたのでしばらくここで小休止。時間をみるとまだ13時頃で、このまま行ってもいいっちゃいいんだけどそれだとちょっと物足りない。メインの祭りが始まるのは16時頃のはずだし、早く着きすぎてもなんなので道すがら何か良いポイントはないものかと探してみると、旧中込学校なるスポットを見つけたのでそこに寄ることにした。面白そうだし、ここに寄ってちょうどいい時間になることだろう。
ラーメン屋を出てあまり車通りのない道を選んでいくことしばし、ナビを見ながら進んでいくと旧中込学校はすぐに見つかった。最初は「木々に囲まれた場所にあるんだろうなぁ」なんて思ってたけど、着いてみると全く普通の住宅街というか通り沿いに突然現れてちょっと意外だった。
早速駐車場に原付を止めて敷地内にある受付へと向かう。券を買うと説明を聞いていくか(ビデオを見るかだったかも)と聞かれたけどそれは遠慮させてもらって。まずは資料館へ向かう。ここは受付を出て右側に資料館、左側に旧中込学校があるのだった。
資料館は見所が多かったけどここで真剣に見始めるとやたらと時間を食う人間なのでさらっと見るにとどめ、すぐに旧中込学校校舎へと向かったのだった。
見た目は以前行った松本の開智学校と似てるけどこっちの方がもっとシンプルで、造りがしっかりしてなかったらおもちゃっぽく見えそうな外観だけど、それも納得でこの旧中込学校は日本に残ってる擬洋風建築(という言葉をここで初めて知った)の中でも最古のものらしい。当時はとても珍しかったことだろう。
でも今見てもこの小さくまとめられた洋の雰囲気はなんだかドキっとさせられるものがある。白い壁と深緑の窓の色の対比が美しいし、二階のベランダもなんとも涼しげで人を誘う魅力がある。それなのに屋根は瓦屋根なもんだから、可愛らしい和洋折衷な建物として愛着を感じてしまう。やっぱり明治・大正期の建築は面白い。
教室にはかつて使われていた机やオルガン、その他教科書なんかの資料が置かれていた。まぁこういう展示物はどこも一緒だからパッと見そんなに新鮮味はないけど、その一つ一つをしっかり見ていくと色々と発見があって面白いもんなのだ。しかし自分はこういうのをじっくり見るのが好きな人間だということをすっかり忘れていた。いくら時間があるとはいえそんなにゆっくりしている暇もない。残念だけど展示物は流し見で雰囲気だけを十分に味わうことにしよう。
当時使われていた生徒用の小さな黒板。チョークも純度の低い水晶みたいな色合いで変わってる。しかしそんなことよりも、これはかなり欲しい逸品!
いざ二階へ。学校にあるにしては結構急な階段で走り降りるには危険が伴いそうだ
当時の教科書。こういうのはどういう内容をどのくらいのレベルで教えていたのか、読むと結構楽しかったりする。でも手に取ることはできなかった
残念ながら二階の写真はあまり撮ってなかったらしくて教室の写真はありませんでした。でも一階とそんなに変わることもなく、ただただこの校舎で子供達は何を話してどんな生活をしていたのか、そんなことに思いを馳せるのだった。
ある程度満足したので出発。しかしこう見ると南国の別荘感すら感じる。非常に良いものが見れました
ここを出るとあとはもう宿へ向かうだけ。時間はこの時14時くらいで、今日のメインイベントである御射山祭りは情報によると16時くらいかららしいので、宿についても少しゆっくりする時間はあるだろう。多分宿まで1時間くらいで着いちゃうだろうから。というわけで、R141を南下しながらのんびりと小海を目指す。
あまりに暑かったので自販機が立ち並ぶ駐車場で休憩。見たこともない飲み物がちょくちょくあるけどここはナタデココを買っておいた
R141は周りに山、横に川が流れる走っていて凄く気持ちの良い道だ。しかも嬉しいことに山間部に入ると涼しくなってきているのがはっきりとわかる。なんでかわからないけどここら辺は明らかにさっき立ち寄った軽井沢より涼しい。だからなのか車通りが結構多く、ツーリング中のバイクも頻繁に見かける。こりゃあ人気もあるわけだ。
そんな(車通りが少なければもっと)素敵な道を行くと右手に松原湖へ続く道が見えてきた。これから見学できるであろう御射山祭りはこの松原湖の東側に鎮座している諏方(すわ)神社で行われるんだけど、まだ時間的には早いはずなのでここは一旦スルーして宿へと向かう。宿はここからさらに先。あんまり離れてなければいいけど、なんて思いながら原付を走らせた。
幸い今向かっている宿である「和泉館」への道は、親切にいくつも立てられた看板によって迷うことはなかった。小海駅ももう目と鼻の先で、これでもう宿についたと行っても過言ではない。松原湖へもそんなに遠くもない。ということで色々安心して宿へと向かった。
この線路を渡った先に和泉館はあるようだ。学校前の牛がカワイイ
猫が通せんぼしてやがるぜ・・・と思ったら目の前に宿が出現していた
到着!!したのはいいんだけどこの外観、私が想像していたものとはかなり違う!名前的にもっと寂れた木造の建物っぽい感じを想像してたんだけど(失礼)、この現実の姿はある意味もっと立派なものだった。というか和泉館という大きな宿名の上にホテルって書いてあるし!ここはホテルだったのか!
玄関の様子。これは完全にホテルですね。だってそう書いてあるし
しかしこの和泉館、これはこれで私の好きな雰囲気である。そこはかとなくレトロさを匂わせる佇まいは、バブル期にはさぞ繁盛したであろうことをなんとなく想像させる。それから大変な時期もあったろうが、現在まで生き延びたその姿にはもはや貫禄すら見いだせるほどの厚みを感じるのだった。(全て勝手な憶測です)
まぁとにかく、この宿はなかなか期待できる感じに思えた。
館内の様子。この薄暗さがイイ。やはり鄙びた宿はこう薄暗くなくちゃいけない
館内はし〜んと静まり帰っていて薄暗く、そして外観から想像した通りというかなんというか、平成初期の雰囲気をまとったフロアは個人的にとても居心地よさそうに思われた。なんかマッサージチェアやマッサージ器なんかも沢山あるし、非常に良い感じだ。
受付には誰もいなかったので、案内にある通りベルを鳴らすと奥の方から「は〜い」とお年を召した女将さんがやってきた。昨日予約の時に電話に出てくれたおばあちゃんだろう。ニコニコしていて性格の良さが体中から溢れているような人だった。
受付で宿帳に記入していると「ずっと旅をしておられるんですか?」と聞かれここから少しの間雑談タイム。どうやら私の装備というか雰囲気からそう思ったようだった。
私「はい、今日で7日目かな。上は妙高まで行って、そこから折り返して下ってきてます」
女将「それは凄い。旅をするにはいいですね。晴れてて雨も降らないし」
私「ええ、でも昨日自分の腕の黒さを見てびっくりしました。いつの間にこんなにコゲてたんだって」
女将「本当よく焼けて・・・。違う国の人に間違われちゃうかも(笑)」
なんて楽しい会話をさせてもらいながら思ったんだけど、この女将さんの話し方が凄く丁寧かつ見た目通り優しくて、なんだか良いトコの生まれっぽいオーラを感じた。こういう業種で働いているから身につけた丁寧さというのではなく、子供の頃から礼節を知って育ってきたような感じというか。ともかくとても良い雰囲気を持った人だ。
女将「御夕飯は何時がよろしいですか?18時から19時半くらいまでありますけど」
私「実はこの後松原湖の諏方神社で御射山祭りっていう祭りがあってそれを見に行こうと思ってるんです。ご存知ですか?」
女将「いえ、ちょっとわからないですねぇ。じゃあ18時半くらいにしますか?」
私「何時に終わるかわからないので、う〜ん・・・」
女将「では帰ってこられたらということにしましょうか」
ということでありがたいことに融通をきかせてくれたのだった。しかしこの女将さんが御射山祭りを知らないのは意外だった。ここから松原湖までは多少離れてはいるけど、こういう場所では近所と言ってもいいくらいの距離だろう(多分)。事前に調べた限りでは近所から人が集まってワイワイやるような祭りではなさそうだけど、それでも同じ小海町内なのに知られてないとは。あまり周囲に告知されることなく催される祭りなんだろうか。
まぁそんな事を話しながら女将さんは私を連れて部屋まで案内してくれた。廊下もやはり薄暗く、今の時間はまだ太陽の光だけを頼りにしてるところが好印象。鄙びた雰囲気だが掃除もよくされているようで綺麗なものだった。そんな中たどり着いた部屋は
写真じゃ微妙にわかりづらいけど結構広い!今まで泊まってきた中でもトップクラスじゃないだろか。写真にはないけど部屋にはトイレと洗面所もあるし、一人で泊まるにはのびのびすぎる部屋だぜこれは。
初めて耳にするセラミック水という単語。なんだかよくわからないけど貴重なのかもしれない
そういえばフロントの壁になんともスピリチュアルな香りのする説明書きのようなものがいくつかあったけど、このセラミック水もそれに類するものなのかもしれない。とはいえ、別にそれが泊まる上で害になることもなさそうなので問題なしだ。
アメニティ達。一人で宿泊なのに3枚もフェイスタオルを用意してくれているのはありがたいし珍しい。歯ブラシも2つあるし、サービス満点だ
そんなわけで綺麗だわ広いだわトイレ付きだわで既に大満足の私。なのでこのまま寝っ転がってしばし休憩といきたいところだけど館内散策もぜひやっておきたい。ということでとりあえずフロントまで戻って館内散策をスタートしたのだった。
さっきの健康器具スペースの真裏にはマッサージエリア(?)が。ここでもセラミックという単語が使われている。というか岩盤浴ってかんな感じなんだっけ?
ちょっとわかりづらい案内図。宿泊者は24時間入浴OKか、ありがたい!
見切れてる左側は食堂、その一つ向こうは厨房になってるんだけどその厨房がかなり広い。従業員の方がいたんで写真はないけど
上の通路を進むと丁字路に。左が浴場で右が客室だ。宿泊客共用の冷蔵庫とレンジが素晴らしい
この奥を左に行くと浴場だけど温泉に入るのは後にしておこう。風呂上がりにこの椅子でゆっくりするのもいいな
丁字路を右に行ったところ。手前に二階への階段あり。この九と書いてあるのが私の部屋なんだけど、その目の前にも冷蔵庫があって最高だ
祭りにちょっと早めに着いておきたいということもあって少し情報不足な散策になったけど、とりあえず館内はこんな感じだった。上にも書いたけど鄙びていて確かに古さは否めない建物なんだけど、掃除もしっかりしてあるので陰気な感じは全くない。むしろこの古びた雰囲気がとても良い感じだ。夜中に眠くなってなかったらあのロビーで一人静かに読書でもしたいと思う。
というわけでもう少しで祭りの時間なので、ちょっと早いけど諏方神社に向けて出発することにした。事前に入手していた情報によると、祭りが始まる時間は「16時くらい」とアバウトな書き方だったので、もしかしたらちょっと早めに始まる可能性もある。いや、もしかしたらもう始まってるかもしれない。なので少し急ぎ気味で原付を走らせたのだった。
分厚い雲に澄んだ青空。これなら祭りもさぞ見栄えがすることだろう
松原湖へ続く道に入ると、さすがに山上湖なだけあって結構高いところまで登っていくようだった(まぁ大した坂でもないんだけど)。しかし肝心の湖は見えてこない。途中に松原湖へ続く道があったりしたから、道から湖を見渡す事はできなさそうだった。
そうして坂を登り、何台かのツーリング中ライダーとすれ違った後、注意深く周りを気にしていると簡単に諏方神社を発見できた。ここまでの道中は祭りらしく提灯が下がっていたり交通整理をしていたりというようなことは皆無。しかし境内を見てみるとなにやら人が集まっていたので、そこで初めて祭りの空気を感じた。
諏方神社上社入り口。ちなみに、これは後になって撮った写真です
境内に入ってみると上の画像のところにトラック一台と、あきらかに宮司さんとわかる方が一人。そして辺りには氏子さんらしきおじいちゃん達がなにやら話したり作業したりと、まさに祭りが始まる前といった感じで賑わっていた。
私は早速駐車場に原付をとめたんだけど、「祭りはあるようだけどどこで行われるんだ?まさかここではあるまい」なんて思いながらウロウロしていたら、良い人そうなおばちゃんと目があったので挨拶させてもらった。
私「どうもこんにちは〜」
おば「こんにちは〜。お祭りを見にこられたんですか?」
私「はい、お祭りが好きで、これ目当てで来ました」
おば「それはありがとうございます(ニコ)」
私「お祭りはどこで行われるんですか?」
おば「奥で今子供達が準備してますよ。私もこれから行くので一緒にいきましょう」
ということでこのおばちゃんに連れてってもらうことになったんだけど、話してみるとどうやらおばちゃんは宮司さんの奥さんらしく、私を宮司さんに紹介してくれた上で祭りの会場まで案内してくれたのだった。なんという幸運だろうか、せっかくだから気になることを色々聞かせてもらおう!なんて思っていると
奥さん「観光のHPを見たりしてお知りになったんですか?」
私「いえ、どこか古そうなHPを見て、こんな祭りがあるんだって知ったんです」
奥さん「そうですか、どうもありがとうございます。私たちも宣伝不足で」
私「他にも僕みたいに祭りを見にくる人っているんですか?」
奥さん「ん〜、観光でお祭りを見にこられる方はほとんどいないですかねぇ。◯◯大学の教授さんは毎年いらっしゃいますけどね。今日も来られてますよ」
という感じで、気を遣ってくれているのか向こうから色々と話しかけてきてくれた。話していると私のようにお祭りを見にくる観光客もほとんどいないようで、私が見に来てくれたことがおばちゃんも嬉しかったらしく私もなんだかほっこりしてしまった。こうして知り合うことができて私としてもありがたいことだ。
と、そんな風に話しながら奥へ歩いて行くと、本殿の手前にはおそらく祭りに参加する子達のご家族の方々がずらっと並んでいて、壁には色鮮やかな吹き流しがたてかけられていた。
さて、先にこの祭りについてめちゃくちゃ簡単(適当)に説明しておくと、子供達がこの吹き流しを持って湖の外周をぐるっと走る祭りである。ただ、それをこの時間からやると終わるころには遅くなってしまうので、今日は大体半分くらいを走ってとある場所で夜をあかし、明日またここ(諏方神社上社)に戻ってくるという祭りらしい(その間に色々と神事が行われたりするんだけど、それはまた後で)。つまりこれからここで出発の儀を執り行ってから、子供達はその吹き流しを手に次々と出発していくというわけだ。
ちなみにこの祭りは昔からその形を変えることなく現在に伝えているということで、全国的に見ても貴重な祭りらしい。だから大学の教授も毎年やってきてるんだね。
待ってる人たちはこれからの我が子の勇姿を楽しみにしているようで、なかなか良い感じの賑わいをみせていた。私はといえば明らかに部外者な出で立ちにも関わらず、特に見られたりすることもなかったので以外と居心地は悪くなかった。むしろそれよりも、これからどんな祭りが見られるのか楽しみでしょうがなかった。
皆ハチマキをして始まりを待っている。この祭りに参加できるのは小・中学校の男の子だけらしい
祭りはちゃんと16時から始まるようで、それまでは少しだけ待ちの時間。祭りはこれからというところだけど、子供達は案外緊張した風もなく、ふざけあったり退屈そうにしてる感じだった。親御さん達も楽しそうにそれぞれ話をしていて、この和んだ空気はこういう小さな地方の祭りにはよくあるものだ。私はそんな中祭りが始まるまであたりを少し散策していると、宮司さんが現れていよいよ祭りが始まろうとしていた。
奥から宮司さんがでてきた。紙を口にくわえてるのは口紙と言って、息が神様や供物にかからないようにするためだ
一通りの短い儀式が終わると宮司さんは階段を降り、宮司さんが少し奥にある小さな祠に拝礼してる間に子供達は吹き流しを持って移動する。どうやら子供達が先んじて目的の場所まで走っていき、宮司さんは後からそれを追うようについてくるようだ。私は来た時と同様、宮司さんの奥さんと一緒に子供達についていった。
親御さん達も我が子に励ましの声をかけていた。小さい祭りながら、子供達も楽しそうだ
なんかワクワクしてきた!この部外者感が寂しいようで楽しくもある
おばちゃんと話したところによると、これから出発して17時にはお籠り(宿泊)場に到着し、そこで子供と宮司さん+大人数名が一緒にお籠りする小屋で泊まるらしい。なんとも楽しそうな祭りだ。その小屋がどんなところにあってどんな小屋なのか、ともあれ異学年が一緒になって夜を明かすなんて考えただけで面白そうだ。一体皆何をして遊ぶことやら。
道路まで来ると子供達は行儀よく並び、見学者である私たちはそれぞれ出発を見送りやすい場所、写真を取りやすい場所に移動してその時を待った。子供達も大人達も皆ガヤガヤと活気があって、そんな中子供達は自分たちに課せられた役割を果たすために走り出すのだ。
ルートとしてはあの十字路を右に曲がっていくらしい。距離はどのくらいあるんだろうか
そうして少しばかり待機していると、先ほどラッパを持っていた子達が先頭に立ち、皆が息を合わせて突撃ラッパを勢いよく吹き始めた。それが祭りの本格的なスタートの合図となり、ラッパを持つ子供達が吹き流しを持った子達に先駆けて走って行った。
まさか突撃ラッパとは。ここからひっそりとテンションがあがっていた私だった
次々に走っていく子供達に大人達も大盛り上がりだ。これは楽しいっ
子供が吹き流しを持って走っていくのを見ていると、なんだか小さな運動会を見ているようで部外者の私も応援したくなってしまった。大人達も「がんばれー!」とか「止まるなよー!」なんて言いながら子供達の勇姿を見送っていた。なんか思っていたよりも熱い祭りじゃないか。
そして皆が走り去ると宮司さんはトラックの荷台に乗ってゆっくりと追いかけていくのだった
皆が十字路を曲がって見えなくなると、大人達の中の数人は子供達を追うようにしていなくなり、残りの人たちはとりあえず一旦終了、というか休憩といった感じで口々に笑顔でおしゃべりしながらどこかに行ってしまった。
私は「どうしようか、これから子供達がどこに向かうかわからないから自分もついていくか、でもそれもちょっと怪しいし・・・」なんて思っていたらおばちゃんがまた親切に話しかけてきてくれた。
おば「このあとどこまでいくかわかりますか?」
私「いや、わからないです」
おば「でしたら一緒に行きましょう。16時半には出るので、またその時にここにいてくだされば」
ということで、なんと一緒に私もお籠り場まで連れて行ってくださるというのでお言葉に甘えさせてもらった。大体その時間に行けば子供達もお籠り場のある場所の入り口くらいにまで到着するらしいので、そこで待機して到着を待つらしい。いやしかし、重ね重ねありがたいことだしなんともラッキーな出会いだとしみじみ思った。
ということで時間まで少し松原湖を見に行ってみた。ボート屋(?)には人がいたけど、他にはほとんど人がおらず。湖はそんなに綺麗ではなかった
ここでのんびりと時間が過ぎるのを待ち、30分になったので神社へ行って少し待つと、境内脇の家からおばちゃんが出てきた。
おば「18時から直会(なおらい)があって大人達は飲み始めるんですけど、よろしかったらご参加ください。主人にも言っておきますので」
と言っておにぎりととうもろこしをくれた。まさかこんなお誘いもいただけるとは、今日はここに来てからありがたいことづくしだ。ただ貴重なお誘いなんだけどこれから私には宿の食事が待ってるし・・・・でも直会には是非参加したいし・・・。こんなことなら食事なしにしておけばよかったけど、とりあえず失礼ながら理由を話して、参加するかどうかはちょっと考えさせてくださいとだけお伝えした。
その後「じゃあ、後ろからついてきてください」ということで、私はおばちゃんが運転する車に先導されてお籠り場まで向かった。
ゆっくり運転してくれてここでも親切なおばちゃん。さすがに子供達の姿は見えない
宮司さんの乗るトラックも発見。宮司さん達は子供達に合わせてゆっくり登っているようだ
吹き流しを持った子供達は何組かにわかれて出発したんだけど、それぞれ何箇所かに設けられた休憩所でちょくちょく休みながら走っているようだった。そんな子供達を私は原付でらくらく追い越し(申し訳ない)、坂の途中で数台車がとまっている所を見つけるとおばちゃんの車もとまったので、私も次いで適当なところに原付をとめた。向かいには山に続く割と急な坂があって、多分その奥にお籠り場があるんだろう。
私たちがいるところにはまだ子供達は到着していなかった。神社からここまでそう遠くないけど、休みながら無理なく走ってるからちょっと時間がかかるんだろう。なのでここでもまたおばちゃんと話をさせてもらったんだけど、祭りのことなど色々と面白い話を聞かせてくれた。
それをまとめてみると
・道にはポイントポイントで休む場所があって、その場所は(中学)3年生が知ってるのでそこで休みながら走る
・明日は山の中をまた吹き流しを持って走って帰ってくるらしい。親は弁当を持ってついていくとのこと
・吹き流しにはそれを持つ子供の名前が書かれている
・昔はカヤで作った小屋で一晩をあかしたらしい。子供は一晩中なにかしらゲームをして過ごすそうだけど、今の子はまじめだから途中で寝てしまうようだ。昔は寝ないで遊んでいたので「そろそろ寝ろ!」と宮司さんが怒ったりしたらしい
・小屋を作るために使ったカヤで箸を作り、祭りの後一週間はそれで食事をする
・この祭りは女の子は参加できないので、女の子は皆うらやましがっているらしい。でも4月には逆に女の子しかできない浦安の舞を舞う祭りがあるとのこと
などなど興味深い話を色々聞かせてくれた。私はこういう「今はこうだけど昔はこうだった」みたいな話とか、地元の話とか聞くのが好きなのでおばちゃんの話は本当に面白かった。今の子はまじめだから途中で寝ちゃうというのも、昔と今では子供達の何が違ってきてるのか興味があるし、女の子は参加できないというのも伝統を守っていて好感が持てる。でもおばちゃんは4月に女の子だけの浦安の舞があるって言ってたけど、子供からしたら絶対こっちの方が楽しいだろうから女の子が羨ましがるのも無理はないことだよね。
そうして話していると子供達が息を切らしながらやってきた。でもまだまだ元気そう
皆が集まるまでの間近くで子供達の様子を撮らせてもらっていると、その中の一人(中学生。仮にA君とする)が私に話しかけてきてくれて、なんやかんやで仲良くなってしまった。
A君「誰かの親戚の人?」
私「いや、俺はただの祭り好きのおっさんだよ。この祭りを見に来たんだ」
A君「ふ〜ん、そうなんだぁ」
なんて感じで始まって、そこから走り始めるまでの少しの間一緒に話をさせてもらった。なんとも人懐っこい感じの子で、彼もこの祭り、というか皆で一晩泊まるのを楽しみにしているようだった。
そうして話していると皆が揃ったので出発することになったんだけど、その直前にA君が「お兄さんも走ろうよ」と手を引いてきたのには驚いた。子供に祭り誘われるなんてなんと嬉しいことだろう。私としては出来るものなら一緒に走りたかったけど、でも大人も全員認めてくれた中で走るならまだしも、子供に誘われていきなり知らないおっさんが走ってきたらそれこそわけがわからないだろう。なので「いや、いきなり俺が参加したら迷惑だからやめとくよ、ありがとな」と断ったんだけど、それでもA君は「俺と一緒に走れば大丈夫だって」と食い下がる。そんなやりとりをしていると突撃ラッパが始まって彼も走って行ったんだけど、尚も諦めずに「後からついてきて!」と一声発して走り去っていったのだった。まぁ結局走らなかったんだけど、それでも彼の誘いは最高に嬉しかった。ごめんよA君。
宮司さんも走り去ると、どうやらおばちゃん他何人かの大人達は別のルートからお籠り場に向かうらしい。話によるとまだ坂の向こうはお籠り場ではなくまだ少し走るらしいので、どうぞ付いて行って見てきてくださいと言ってくださったのでそうさせてもらうことにした。あの坂の向こうがお籠り場じゃないんだったらここからは山道か?なんて思いながらついていくと
なんて思ったのもつかの間、この木々が生い茂る場所を見回してみると、なんとここはそこそこ広めなキャンプ場であった。子供達が待っている所はまさにそのキャンプ場の歩道で、すぐそばの広場には何組もキャンプをしてる人たちがいた。ここで一泊?いや、キャンプ場だから一泊するには良い環境だろうけど、まさかお客さんがいるすぐ脇でってことはないだろうし、一体どこで?というか、こんなに沢山人がいる中で突撃ラッパを吹くのか?などなど色んな疑問が頭に浮かぶ。まさかキャンプ場を走るとは思ってもみなかったぜ。
どうやらこのキャンプ場内のいくつかのポイントを経由してお籠り場まで行くらしいので、私は原付をとめて邪魔にならない場所に待機しつつついて行くことにした。
やっぱり突撃ラッパは吹くようで、キャンプ場内にラッパの音が高らかに木霊する。でも周りを見てみると場内の人たちはあんまりラッパや子供達に注目する様子もなく、大して気にもせず過ごしているのが少し悲しいというか不思議だった。こんだけ目立つ音と吹き流しがあるんだからもう少し気にしてくれてもよさそうなもんなのに。しかしそれでも子供達はそんなことはどこ吹く風で走っていくのだった。
利用客のいない奥の方へと入っていく。なんだかお籠り場がありそうな雰囲気になってきたぞ!
子供達に追いつくとさっきのA君が「なんだ走ってないじゃん〜」と少し残念そうだったけど相変わらず人懐っこい彼だった。ちょっと疲れたのか座ってる彼と話をすると、もうお籠り場まではすぐそこ、というかすぐそこの曲がり道を行くと到着するらしい。
そうして話しているとまたすぐに出発となり、突撃ラッパが森の中に響き始めた。
子供達が全員走り去ると大人達は車に乗ってついていくんだけど、その中の一人のお父さんが「どうぞ先に行ってください。結構ガタガタな道なんで気をつけて」と愛想よく先を譲ってくれたのでありがたく先に行かせてもらうことに。さて、この道の向こうはどうなってることやら。
そうして未舗装の道を行く。確かにガタガタで体がガクガク揺れる
でもさらに進むともっとガタガタになっていて、少し雨でも降ったならすぐさまぬかるんで走れなくなりそうな道になっていた。一体この先にどんな場所があるというのか。まさか森の中に小屋が作られてるのか?なんて思っていると割とすぐにお籠り場に到着。しかもその場所は
荒れた道の果てに現れたのは、まさに秘密の園とも言えるような開かれた土地だった。なんだか小トトロの後を追って草の道を通って行ったらトトロの家についたような感覚だった。こんな場所が隠されていたとは、ここで一晩をあかす子供達が羨ましいぜ!しかし、それにしてもあのカヤを立てかけて小屋のようなものに仕立てている構造物は一体!?
木も立派だし、なんだかちょっと神聖な雰囲気が漂っている・・・気がする
ものすごく興味をそそられる。こんな不思議なものがあと一つある
後から知ったことだけど、松原諏方神社は上社・下社・山宮の三社があり、その仮宮(上の写真のもの。オコヤという)をこの場所に設営してそれぞれの御神体を一晩ここに祀り、翌朝また元へ戻すという流れで行われる祀りということだった。つまりこの仮宮は上社・下社を仮に見立てたお宮で仮宮ということなんだそうな。ここで一つにまとめて一晩祀ることにも何かしら意味があるんだろうけども、なにはともあれこの仮宮の持つどこか原初的な空気は、未だかつて味わったことがないものだった。
とまぁこうして到着すると、吹き流しを持った子供達は二つの仮宮の間を反時計回りに何周かして(これにも何か意味があるんだろう)、片方の、奥側の仮宮の前に二列になって並んだ。
二つの仮宮の間には縄が張られている。なんだか気になることばかりだ
子供達が整列した後、宮司さんも同じようにゆっくり歩いて周り、縄に大幣をかけた後、それぞれ三つの仮宮を周るという流れで神事は行われた。あまりよく見えなかったけど、それぞれの仮宮を周った時に御神体を安置したんだろうと思う。その間子供達はただ立ったままで、A君はたびたびこっちを見てニヤっとするのだった。
こんな自然の中で行われると、なんとも厳かな気持ちになってくる。見ていて全然飽きない
奥で何かやってるけどよく見えない。お父さんが覗き込んでるのもなんだか対照的にゆるくて良い感じ
そんな一連の儀式が終わると、宮司さんが「もういいよ、小屋にジュース用意してるから。ごくろうさま」と今までと打って変わって軽い感じで言ってこの日の祭りは終了となった。子供達は吹き流しを小屋にかけて、我先にと小屋へと走っていく。これから大人達は直会で子供達は遊び放題の時間が始まるんだろう。メリハリの効いた祭りだ。私はここぞとばかりに仮宮を観察させてもらった。
近くで見てみると、木で作られた鳥居にカヤがたてかけらているのがわかる。もう1種類の植物はヨシだそうだ
いかにも古代の神がましましておられそうな、怪しげでもあり神秘的でもあるお宮だ。かつては子供達が泊まる小屋もこうして作っていたそうな
最後はこんな感じになった。神様も子供と一緒にいられてさぞ楽しいことだろう
後ろからの様子。仮宮とはいえ、結構しっかり作られてるんだなぁ
小屋も小屋で結構古そう。中を少し見せてもらったけど、基本的には畳敷きの一つだけしきりがある空間だった
ここで直会が行われるんだろう。その間子供達は遊んでいるんだろうか
ジュースを飲んだら早速野球をしようと集合する子供達。こりゃ楽しそうだ
さて、祭りも終わったし私もここらでお暇しよう。直会には誘ってもらたけど、やっぱり宿の食事があるからそれを無しにすることもできない。ということでおばちゃんにその旨をお伝えすると「そうですね、それじゃ仕方ありません。明日も見に来られますか?」と聞かれたので「はい、来ようと思ってます。何時頃に来ればいいでしょうか?」と時間を聞いてみると「9時40分くらいならもう皆集まってると思いますよ」とのことだったので、その時間に明日また行かせてもらうことにした。
その後少しだけおばちゃんと話をして、もらったおにぎりのお礼をしてから原付へと向かう。なんだかここを去るには結構心残りがあるけどしょうがない。次に来る時は、直会に参加できるかは別として食事無しで訪れよう。ここでの夜を是非味わってみたいしね。
帰り道、いつの間にか日も沈もうとしていた。いやぁ今日は満足度の高い1日だ
宿に戻って女将さんに一声かけると、「すぐにご夕食になさいますか?お風呂が先がいいかしら?」と聞かれたので、ささっと入ってくるので先に風呂にしますと答えると、「じゃあご用意しておきますので」ということになったのでまずは温泉へ。時間としても18時半くらいで、そんなに迷惑にならない時間に帰れたのでよかったよかった。
温泉の説明書き。ここでもアースエミー鉱石という耳慣れない単語が現れた
という感じでささっと撮影を終えたらいよいよ入浴タイム。普通は宿に着いたらすぐに温泉に入る私だけど今日は祭り見学もあったから延びに延びて夜になってしまった。これから入る温泉はさぞ気持ち良いことだろう。
体なんぞさっさと洗っていざ入湯!と思ったけどどこから入ろうか。浴槽が三つある。
それぞれの浴槽で色が違う。徐々に濃度を薄くしているんだろうか
でもまぁともかくまずは大きい無色透明の湯がたたえられた浴槽に入る。温度は熱くもなくぬるくもなく、全くもって良い塩梅の湯加減だ。もう入った瞬間から「どぁ〜ッ」と声をあげちゃうぐらい気持ち良い。湯の特徴はほとんど感じられないけど、やっぱり気持ち良いものは気持ち良いのだ。
と、そこでしばらく浸かって温まったらお次は一番湯が濃い浴槽へ。成分表によると鉄分を含んだ塩化物泉らしく、近くで見てみると湯自体は少し白濁したお湯で、茶色の湯の花が底にたまっていた。長野あたりは大昔海の底に沈んでいたらしく、その名残で塩泉が沸いているとHPに書いてあったけど、そういえば確かに数年前に行った遠山郷の温泉も結構しょっぱい塩泉だったし、その近くの大鹿村でも塩泉が湧く宿があるらしいので、真実味のある話だ。今回の旅で水にまつわる神社もいくつか見てきたしね。
とまぁそんなことはさておきいざ源泉掛け流しの茶色い湯に入ってみると、これがまた私の好きなぬる湯で、しかもその温度が素晴らしい。これは他のぬる湯と同様一度入ったらなかなか出られなくなる温度だ。浴感もなんだかトロリとした感じがあり、塩泉らしく傷口に少しだけぴりっとくるものも感じてこれは肌によさそうだ。今は食事のためにゆっくりはできないけど、後でじっくりと入らせてもらうことにしよう。
あとここには更にサウナと露天もあるんだけど、露天もまた小さめながら少し低めの温度で気持ちよかった。暗かったので写真はないんだけど、翌朝には撮ったのでまた後で載せたいと思う(サウナには入りませんでした)。
温泉からあがるとなんだか説明しずらい「じわ〜」っとくる不思議な感覚があったんだけどこれは温泉の力なんだろうか。それとも張り紙にあったアースエミー鉱石なるものの力なのかよくわからないけど、それをなんだか面白く感じながら食堂へと向かった。
食堂に行くとなんだかやたら中が賑やかで、入ってみると沢山の子供達が食事をしていた。どうやら今日はサッカーの合宿でこの子達も泊まってるらしく、コーチ達数人も子供に囲まれながら楽しそうに食事をしていた。これは私としても楽しい食事になりそうだ。
ご飯はおかわり自由で、その他コーヒーや紅茶なんかもいただけるようだ
上の写真では伝わらないけど、てんぷらとヤマメの塩焼きはちゃんと後から持ってきてくれたので熱々でたべることができた。陶板焼きの中はよくある焼肉な感じだったけどとにかく全体的に美味しくて、中でも私の大好きな馬刺しは今まで食べたことがないクリーミーさで最高だった。ヤマメも頭まで全部食べることができたし、BGMに子供達の楽しそうで賑やかな話し声も聞けてとても良い夕食でございました(一人食べ過ぎて少し吐いた子がいました)。
その後はいつも通りの自由時間(まったりタイム)。まずは最終日である明日の宿をとらなければならないけど、ここで考えるべきことが一つある。それは最終日にどの祭りを見るか、ということ。
私の予定では最終日も祭りに行く予定で、候補の一つがかの有名な吉田の火祭り、そしてもう一つの候補が初日に行った祭り(神社)からまぁ近いところにある巨摩八幡宮という神社の祭りだ。
希望で言えば火祭りを見に行きたいんだけど、明日の朝も御射山祭りを見に行くとちょっと到着が遅くなりそうというのがネックになっている。一方巨摩八幡宮の祭りはほとんど情報がなく、明日行われて太々神楽が演じられることぐらいしかわからない。さて、どうしたものか、これはかなり考えた。
その結果、「前日だから火祭りが行われる場所周辺の宿はとれないだろうけど、もしとれたら火祭りへ。とれなかったら巨摩八幡宮の祭りへ」という結論に達し、いくつかの宿に見当をつけて電話をしてみた。
その結果やっぱりどこも満室で、唯一最後にかけたところは空いてたんだけど素泊まりのみだったので火祭りは諦めることにした(素泊まりでもいいじゃんと思うかもしれないけど、私としてはせっかく泊まるならその宿の食事を楽しみたいのだ)。
じゃあ巨摩八幡宮の方はというと、こちらは事前に宿の目星はつけていたので楽天で予約しようと試みるも、なんとここも満室。この瞬間「マジかよ・・・」と思ったんだけど、例にならって電話してみるとなんともあっさりと予約できたのだった。いやぁなんというか、今回の旅はこのパターンで予約がとれる場合が多いな。よかったよかった。
その後はもう肩の荷も降りたので好きなことをやる時間となった。本を読んだりロビーでマッサージチェアに酔いしれたり、貸切風呂にされてるのに気づかず温泉に入ろうとしてしまったり(貸切風呂にできるとは聞いていなかったゾ)、そんな感じで色々やって就寝となったのであった。
おばちゃんからもらったおにぎりも食べました。おいしかったです!
翌朝、朝食は8時にお願いしてたんだけど割とギリギリに起きてしまったので温泉に入る前に食堂に行くことになった。
今日は昨日に勝るとも劣らぬくらいの晴れっぷり。今日もまた気持ち良い1日になりそうだ。
食堂の様子。子供達はおらず、朝は静かな食事となりそうだ。演歌が延々と流れてはいるけど
朝食はこんな感じ。あと何品か出てきたような気がするけど勘違いかも。でもとにかく量も味付けもちょうどよく優しい味で、朝食として結構満足できるものだった。ちょっとだけ漬物がしょっぱかったけどそれはご愛嬌。全部美味しくいただきました。食後のコーヒーもよかった。
食後は休むことなくすぐに温泉へと向かう。子供達ももう出発した感じだし、他のお客さんも今は朝食をとってる感じだったから貸切状態で入れるはずだ。昨日はそう何度も温泉に入れなかったから、その分出発前に堪能させてもらおう。
朝の光だけで照らされる浴室はなんだか清らかなイメージを与えてくれる
露天の様子。内湯の浴槽ほどではないにしろ、湯に入ったら湯の花がフっと舞い上がる
朝の露天はやっぱり最高だ。朝だというのに既にジリジリと暑い太陽を浴びて、少しぬる目の掛け流し温泉に浸かる。これぞまさに至福!しかも貸切状態だから言うことなしだ。
長湯をしたいけどお祭りのこともあるのでほどほどのところで温泉からあがることにした。それでも結構贅沢な時間を過ごせたけども。
それで、温泉からあがってからは少しだけTVを見ながらダラダラして(ダラダラタイムを楽しむため、あらかじめ出発の準備はすませていたのだ)、もうちょっとだらけていたい気持ちを抑えて9時10分には清算をすませに向かった。
他の部屋はもう従業員さんが片付けに入っていた。こうも露骨に掃除しているのは珍しくて面白い
最後に、壁にかけられた額をとっておいた。色々と伝えたいことがあるらしい
和泉館にはなんとテーマ曲もあったようだ。映画版ドラゴンボールのようなタイトルも詩も素晴らしい
フロントには女将さんがいたのでそのまま清算へ。その時少しだけお話させてもらった。
女将「今日もお祭りを見に?」
私「はい、10時からあるみたいなので、また行ってきます。昨日も楽しかったですよ」
なんてところからしばらく会話が始まって、私が民俗学が好きで祭りを見て歩いてると言うと女将さんは「若いのにそういうことに興味があるのはとても良いこと」ととても嬉しそうにしていた。しかも女将さんは東京の北区出身らしく、東京の祭りや下町のことなど色々と楽しい話を聞かせてくれてとても楽しかった。
最後「お会いできてよかった。楽しいお話を聞かせていただいて」と心にじ〜んとくる言葉までいただけて嬉しいやら恥ずかしいやら。お会いできてよかったなんて中々言われないからなんだか心が暖かくなってしまった。私としても女将さんの話は面白くて、もっと話をしたいくらいだった。
その後も少しだけ話をして、そろそろ時間になったので深々とお礼をして出発。女将さんは最後までニコニコして私を送ってくれたのだった。やはり出発はこうでなくてはならない。これだけで、今日1日が良いものになる気がしてくるんだから。
おまけで宿の裏手にある源泉。やっぱり源泉はぬるかったけど、結構湧出量は多そうだった
※ 今回泊まった和泉館さんは、ちょっと古びたような外観内観でありながら、かつての時代の空気を良い感じに残した個人的に好きな感じの宿でした。女将さんや従業員の方も愛想がよく、とても居心地よく過ごせたし、それに加えて源泉掛け流しの温泉もあるし冷蔵庫や広い部屋もあるしで、今回ここに泊まることができたのはとても良い選択でした。夜中、だれもいない静まり返ったロビーでマッサージチェアを味わう時間はおすすめです。また来たいと思います。
ネギさん!
お久しぶりのブログ更新に1人歓喜してしまいました!
もうブログは辞めてしまったのかなぁ…とかお仕事忙しいのかなぁなど思いつつ、諦めきれず数日に一度見に来ていました^ ^
また新しい旅紀行が読めて本当に嬉しかったです。今回のお祭りも素敵でしたね!
この頃自分は旅行にも行けず…一人旅は未経験…ネギさんのブログを読んで楽しんでます。
>あきさん
どうも、コメントありがとうございます( ^ω^)
長いこと更新がストップしてしまって申し訳ないです。おっしゃる通り、それなりに忙しい日々を送っていてこんなに間があいてしまいました。なので未だに去年の夏休みの記事を書いてるという有様です。
でもそんなに記事を心待ちにしていただいていたとは、これもブロガー冥利です。とても嬉しいです!これからはまぁそれなりのペースで記事を投稿していけると思うので待っていてください!
もう少しで楽しい夏がやってきます。私もあきさんも良いところに旅行に行けるように、なんとかして時間を作っていきましょう!
今回もまた素敵な出会いが・・・
いいですねー。
またお宿もリラックスできそうないいところですね。
熊野神社と熊野皇大神社、テレビで見たことがあって行ってみたいと思ってました。
御朱印もすばらしい!
軽井沢しばらく行ってなくて初夏を感じに行きたいです。
このところ休みの日に用事があって山登りも行けてなくて、こう緑の綺麗な写真を見るとほんと出かけたくなります。
次のお宿も楽しみにしております。
ひとつ追記、軽井沢に高級スーパーがあるんですよ!ツルヤと言うのですが、ご当地スーパーでそこはグルメとお土産の宝庫です。
https://www.travel.co.jp/guide/article/11784/
>十六夜さん
十六夜さんコメントありがとうございます( ^ω^)返事が遅くなってしまい申し訳ありません。
軽井沢は私もかなり久しぶりに行った(と思う)んですけど、イメージ通りの優雅な空気が漂っていて雰囲気の良い場所ですよね。自転車で走る人たちを見て、ああいうのもいいなぁと思いました。
山登りも今のうちならある程度涼しさもあるのでよさそうですよね。夏はやっぱり厳しそうなイメージですが、温泉のある山小屋とかちょっと憧れです。早いうちに出かけられるといいですね。
ツルヤは松本あたりのに一回行ったことがあって、そこでツルヤブランドのジャムをいくつか買ったんですが美味しかったです。やっぱり有名なんですね。他に何か買ったほうがいいものとかあったら教えていただきたいです。次行く時の楽しみになりますから( ^ω^)