夏休み佐渡の旅8・9日目です。 [7日目]
角間温泉を出発し、まずは朝の渋温泉街へ。朝の風景は夜とどう違うのか見てみたかったのと、温泉街の中にとても味のある喫茶店があったので、そこに行くのが目的です。原付を前日と同じ場所に駐めて温泉街を歩くと、昨晩とはうってかわって宿泊客、観光客の姿はなく、お店の人や運送屋の人なんかがちょくちょく行ったり来たりしていて昨晩とは全く違う表情を見せていました。中々気持ちの良い散歩です。
足湯に浸かる人たちももはやおらず、朝は静かな温泉街。こういう静かな時間こそ、旅に出た実感をよく味わえるというものです。この時の時間は10時になる前くらいだったので、宿泊客たちはもう次の場所へ向かってしまったのでしょう。
そんな静けさを楽しみながら歩いていると目的の喫茶店に到着。看板が大きく出ているのでわかりやすいし、温泉街で(おそらく)唯一の喫茶店であるこの店は、温泉地で美味しいコーヒーを飲みたい人にはありがたい存在でしょう。
早速扉を開けて中へ入ってみると、店内は右側がカウンター席で、左側がコの字型に一つなぎになったソファ席。そのソファ席でお店のおばあちゃんが新聞を読んでいました。「ああいらっしゃい」と出迎えてくれたおばあさんの対面の位置に座り、暑かったのでアイスコーヒーを注文。すると奥から何やら男性が出てきてアイスコーヒーを入れてくれました。「もう90を超えてしまったからコーヒーは息子に作ってもらってる」とのこと。この男性はおばあちゃんの息子さんでした。
店内は非常にレトロで落ち着いた造り。いかにも喫茶店らしい雰囲気の中、ここからおばあちゃんの怒涛のトークが繰り広げられました。
「兄ちゃんスキーはやるかい?」
「いや、ほとんどやったことないですね〜」
「あたしは昔国体の選手でな、今でもスキーをやらせたらそこらの若い奴には負けんよ。あたしは技術派だからね、兄ちゃんじゃ相手にならんよ」
と言いながら自慢げに笑うおばちゃん。結構勝気(強気)な性格のようで、でも不思議と嫌な気持ちにはならず、むしろ面白いおばあちゃんです。
「兄ちゃん今日はここに泊まるんか?
「いや、今日はこれから移動しますけど、昨日は角間温泉に泊まりました」
「角間!?あんななんもないとこに泊まるなんて兄ちゃんも物好きだね〜。まぁ静かだからゆっくりするにはいいだろうけど」
「前から泊まってみたいと思ってたんですよ。思った以上に良いところでした」
「おできとか切り傷ができたら角間に行くが、あたしはいつもこっちの温泉に入ってるからおできなんかはできないけどね。そういえばあたしが昔裁縫を習っていた先生が角間のようだやの女将さんだったから、昔は歩いて山越えて角間まで行ってたよ」
「え、そうなんですか。僕が昨日泊まった宿がようだや旅館ですよ」
「はぁ〜兄ちゃんようだやに泊まったのかい、物好きがいるもんだ。あの先生はまだ生きているかはわからんが、あたしの小さい頃は・・・・云々」
と小さな共通点を発見しつつ、その後も沢山おばあちゃんの昔話や渋温泉のこと、信濃路を開店するに至った経緯やその他諸々を色々聞かせてくれました。途中サービスで息子さんが剥いたリンゴと梨を出してくれて、結局1時間位上おばあちゃんの話を聞いていましたが、このおばあちゃんの歯に衣着せぬ喋りが面白くてあっという間の時間でした。しかし角間温泉に泊まったということがそんなに珍しいことなのかとも思いますが、確かにすぐ近くに渋温泉という立派な温泉街があるのに、わざわざ角間温泉に泊まる人はそういないのかもしれません。
そんなこんなで私も時間が迫ってきたのでお会計をお願いして支払いをすませると、私のリュックに挿さってる釣竿を見て
「兄ちゃん釣りするんか?」
「ああ、渓流釣りが好きでよくやってます」
「そうかい、うちの亡くなったじいさんも渓流釣りが好きで良く行っとったから、兄ちゃん見たら嬉しくなって釣りに誘ってただろうよ」
と笑顔で言ってくれた言葉が、なんだか嬉しいような切ないような気持ちにさせてくれました。そのおじいさんがもし生きていたら、どんな会話をしてどんな釣り場に連れて行ってくれたのか。そんな事を思っていると「もうこの店の場所はわかったろ、また来てな」と言ってくれたおばあちゃんを見て、また絶対ここに来ようと決めて店を後にしました。
もう朝の渋温泉街散策はほとんどすませていたので、次は温泉街からほど近い猿で有名な地獄谷温泉へ原付で向かいました。温泉街の川沿いを走る道から山道へ入ると、思っていた以上にすぐに到着。まずは駐車場で200円払いこれまた川沿いの歩道を歩いて奥へ奥へと進みます。
歩道を歩いているとすぐに猿に遭遇。最初ちょっと怖かったですが、すぐ横を通っても全く襲ってくる気配も、というか人に反応する気配もなく悠々自適に過ごしているのですぐにこちらも慣れました。
歩いていると、段々川に温泉が流れ込んでいるのが目に付き始めました
露天風呂もありましたが、外から完全に丸見えです。しかし時間があれば入ってみたかった
こんな感じの景色の良い道をテクテク歩いて行くと地獄谷温泉の核心部に到着するわけですが、その手前で入場料(500円)を払う仕組みでした。正直駐車代込みで500円にしてくれよ思ったんですがせっかく来たので中へ入ると、いるわいるわお猿さん。そしてそのお猿さん目当てに集まった観光客は外国人がとても多かった。外国人向けの観光ガイドなんかで有名なんでしょうか。
園内は猿が多いから必然的にウンチも多く、その点は要注意。しかしそれ以上に猿が思った以上に可愛く、しかも子猿なんかは足元に群がってきたりすることもあるのでそれがまた愛らしくて本当に可愛かった。残念ながら温泉に浸かっている猿はあまり多くなかったですが、それでもあれだけ多くの猿が周りにいるのは楽しいもんです。外国のお客さんも皆楽しそうに猿を撮ったり、中には猿の写真の専門家みたいな人もバシャバシャ撮ったりしていて面白い光景でした。色々と注意書きもありましたが、それさえ守れば安心して楽しめますね。
人とおり猿を楽しんだ後はのんびり歩いて駐車場まで戻り、原付で渋温泉まで戻った後羽田甘精堂で温泉まんじゅうを購入して次なる目的地へ向かいました。
この日の宿に向う途中に草津温泉があり、とりあえず次の目的地はここ。しかし草津へ行くためには志賀高原を抜けなければならないのでそこが少し不安でしたが行くしかありません。気温も低そうなので、十分に防寒を整えて出発しました。
平日ということもあって車通り自体少ないですが、それでもバイクやロードバイクなんかも時折通る山道はそれなりに傾斜がきつく、やはり原付では心もとない感じですが無理ではなさそうだったので頑張って進みました。有名な志賀高原だけあって綺麗な湿地や池なんかも沢山ありましたが、一旦原付を止めるとエンジンも止まってしまうのではないかという不安から碌に観光もせずに走り続けることになりました。しかしやはり精神的にも緊張状態で走っていたので、適当なところで休憩です。
駐車場に原付を駐めると、案の定エンジンを切る前に「シュウゥゥン」と行ってエンストして焦りましたが、再びエンジンをかけようとちょっと頑張ったら割とすぐかかったので一安心。こんな山ん中で原付が壊れるのが一番怖いのでいつも峠越えはドキドキです。
ドライブインの中では軽食も食べられて、お土産もそれなりに売っていたのですが、どうせなら草津で食べたいと思い断念。とりあえず暖かい飲み物を買って人休憩してから出発しました。
晴れていたらさぞいい景色であろう道をぐいぐい進み、無事日本国道最高地点を越えて、めちゃくちゃ早いロードバイク乗りと抜きつ抜かれつしながらやっとのことで草津へやってくることができました。原付を駐めるところを探すのに結構手間取りましたが無事に到着です。
草津に来るのは実に10年ぶりくらいでしたが、相変わらずの人の多さにびっくり。というか平日でこんなに人が多かったら週末は一体どうなるんだっていうくらい沢山いました。さすが一級の温泉地は格が違いますね。
源泉が湧いている小屋。10年前はこの小屋はなかったような・・・。ちなみに小屋の裏にある日帰り入浴施設も新しそうでした。確かに記憶にない。
私が以前に来た時は、友人と三人でめちゃめちゃ安価なヒドイ宿(名前は忘れました)に宿泊し、それでも若さもあって結構楽しめた草津の思い出ですが、相変わらず道行く人を足止めしてまんじゅうを食わせるまんじゅう屋も存在している中、記憶にはない新しい施設が増えていたりして懐かしいやら目新しいやらでやっぱり楽しい草津温泉はさすがです。若い頃はまんじゅう屋の勢いに乗せられてまんじゅうを買ったりもしましたが、今回は二つほどまんじゅうを食ってそのままさらっと立ち去れた私も立派に成長したものです。
懐かしく思いながら温泉街をぶらぶらと散策しつつ、昼飯をどこで食べようかと思い色々見て回ったのですが、時間もちょうど昼ごろだったのでどこも結構な混みよう。それじゃあ温泉にでも浸かろうと思ってまたぶらぶらしていると、なんとなく「まぁ入らなくてもいいか」という気分になってきて結局散歩だけで終わってしまいました。今になって思うと、せめて湯の花ぐらいお土産で買っていけばよかったと思いますが、その時はお土産のことは全く頭になかったので本当に色々と惜しいことをしました。
学生さんも多かった印象。カップルも多く、やはり女連れでくるにはこういうところがいいのでしょう
こういうところで水着着用で入浴できたら、それはそれで開放的で楽しそうです
何回も同じところを歩いていたので、まんじゅうを食わせてくるおじさんと仲良くなってしばらく雑談した後草津を後にしました。湯畑から少し行ったところにある道の駅に寄ってから次の目的地を目指します。
店内を見てもあまり欲しいものがなかったので即移動開始。まだ寄りたいところがあるので少し急がねば宿の夕食の時間に間に合わなさそうだったので、気持ち急いで山を降りて日本ロマンチック街道と呼ばれる道を走りました。宿に行く前に、その途中にある川原湯温泉に寄って温泉に浸かろうと思っていたのですが、その手前に道の駅があったので寄ってみました。
なかなか綺麗な道の駅。ここ長野原では八ッ場ダム建設にあたってかなり広範囲に渡って道路や土地の工事が行われているので、この道の駅も結構最近になって建てられたものなのでしょう。利用者も多く、何かの撮影の準備も行われていました。
道の駅内の土産物屋も中々面白そうな品が多かったのでとりあえずお茶を土産に購入し、宿の夕食の時間も近かったのですがあまりに腹が減っていたので、駅内のあるほたるというレストランで少し飯を食うことにしました。(店内の写真は撮ってありましたが、記事作成中に見たら今更ながら店内撮影禁止の紙が貼ってあったのを発見したので店内写真はありません)
レストランは辺りの見晴らしも良く、白壁と木の柱が特徴的なとてもお洒落な空間。私は旅行中あまりお洒落な店には行かないので少し場違い感を感じながらも、とりあえず五目あんかけタンメンのハーフサイズを注文。時間的に客も少なかったのですぐに運ばれてきました。
正直なぜこんな山の中で中華なのかと思って侮っていましたが、このあんかけタンメンはかなり美味かった。何が美味かったと説明できるほどもう覚えていませんが、とにかくハーフサイズで食うにはもったいないくらい美味かったのは覚えています。道の駅の食は下手なところで食べると全然美味しくないですが、たまにこういうやたら美味いものを出してくれる道の駅もあるのが油断ならないところです。ごちそうさまでした。
という感じで食事をすませると、時間も結構切羽詰まった感じになってきていたので(おそらく3:30くらいだったか)さっさと移動し、目的の川原湯温泉はすぐ近くだったので少し走ったら着きました。
川原湯温泉は八ッ場ダム建設のためにかつての温泉街は水没する運命をたどることになり、貴重な川原湯の源泉もダムの底に沈むことになってしまったため、新たに源泉を掘り当て、温泉街にあった宿や共同浴場は新しい土地に移転して新しい温泉街の歴史をスタートさせようとしている、ある意味出来立てほやほやの温泉街。なので道路はとても新しく、所々工事もしていますが、新川原湯温泉には駐車場もしっかりあるのでそこに原付をとめました。
店はやっていませんでしたが、ここは近くにある丸木屋旅館という宿がやっているカフェのようです
駐車場から歩くこと数分、目的の共同浴場、王湯が見えてきました。辺りは広く公園のようになっていました。
かつての王湯も中々の風情が漂う建物だったようで、その歴史と温泉を味わうことができなかったのは残念ですが、この新しい王湯を存分に味わうことにしましょう。出来てまだ2年ほどのようなので、それはそれで貴重な体験です。
中に入るとカウンターがあるので、そこで愛想の良いおばちゃんに入浴料(500円)を払い脱衣所へ。中は広くありませんが、出来たばかりということもあってとても綺麗です。
さて、では早々に風呂場へ、といきたかったのですが私のリュックが入る大きさのロッカーがなかったので受付のおばちゃんにどうしたらいいか聞きに行くと、脱衣所まで来て「人が少ないから間違いはないと思うけど」と言って逆さになってるカゴの下にリュックを入れてくれました。やはり愛想の良いおばちゃんの気持ちの良い対応に礼を告げ、一応小さめのロッカーに貴重品を入れてから風呂場へ向かいました。
風呂場へ入ると、まずうっすらと漂う硫黄臭に温泉気分も高まります。シャワーは二つだけと少ないのですが、露天風呂も含めてそんなに広くないので丁度良いのかもしれません。そのシャワーでさっさと体を洗ってから早速温泉につかってみると、これが熱くもなくぬるくもない絶妙な温度の湯なのでとても気持ちが良い。硫黄臭もしっかりあるので、そういった部分でも満足度も高し。
続いて露天風呂に行ってみると、風呂からの眺めは非常によく、ゆったりと景色を見ながら浸かるには最高の条件。こちらも内湯と変わらず入りやすいお湯なので、時間があれば何時間でも入って入られそうです。私の他に親子で来ている客がいて、父に周囲されながらも子供が色々とはしゃいでいましたが、それもそれで楽しそうで何よりでした。でも内湯より少し小さいので、混んでいたら入るのは難しいかもしれません。いや、しかし優しくて良い湯でした。
風呂から出た後二階ある休憩所を覗いてみたら、こちらも綺麗で眺めがよく、広々としていたのでここでごろんと寝転がったりしたら気持ちよさそう。しかし時間もないのでそのまま王湯を出ようとしたところ「釣りをされるんですか?」と、例の愛想の良いおばちゃんが話しかけてきてくれたのでその場で少し雑談。最近ここらへんで釣り人が熊に襲われた事件(空手家のじーさんが撃退した、当時少し有名になった事件)があったので、そういうような話をした後「気をつけてくださいね、また入りに来てください。」とニコニコしながら見送ってくれました。こういう笑顔や言葉だけで「また来たい」と思えてしまうんだから、やはり接客というのは大事です。気持ちの良い風呂と優しいおばちゃんに感謝して、王湯を後にしました。
出発する前に改めて周りをみてみると、新興住宅地の中に所々旅館があったりする風景はしょうがないとは言えやはり風情に欠けるものがあり、更に店も充実しているわけではないので今現在の川原湯温泉を目的に旅行をしに来たら物足りなく感じるだろうと言うのが正直な感想でした。が、逆にここを拠点にしてちょっと遠出したりするのにはいいかもしれない。すぐそばに山も川もあるし、草津温泉まで車ならそう遠くもない。まだ出来たばかりの温泉地の今後に期待し見守る意味で、川原湯温泉でゆっくりするのもありかもしれない。ともかく、これから頑張って良い温泉街を作り上げていって欲しいです。
ということでそろそろ本当に時間が怪しくなってきたので急いで宿に向かうことになりました。145号線をしばらく走り、伊勢町下という交差点を曲がると里山っぽい風景が広がりだし、そこからナビに従って小道を行くと本日の宿である金井旅館に到着です。宿までの道中、目立つ看板などもないのでナビがないと結構迷うかもしれません。私はナビを見ていても少し迷いました。
大体5時40分くらいに、少しだけ道を間違えて宿の裏側に到着した瞬間に、宿の方から心配の電話が来ましたが、今着きましたといったら安心していました。
この旅館は建物の表から入れるのは当然なのですが、裏側からでも日帰り入浴者用の入口のような感じで入れるようになっていたので、そのまま宿へ入りました。
館内はとっても綺麗。結構最近にこの別館が建てられたようで、新築感ただよう館内は清潔そのものでした。
とりあえずフロントで受付をすませると、早速部屋に案内してくれました。
部屋もやはり綺麗で、特に注目すべきは洗面所とトイレ付きの部屋であるというところでしょう。金井旅館は他と比べると割安で泊まれる宿なのですが、そんな値段で部屋に洗面所とトイレがあるのは珍しいです。
老人にも優しい設計ではないでしょうか。「中々過ごしやすそうな宿であるなぁ」と思いながら、色々と説明してくれている女将さんの話を聞いていました。食事は6時ということなので、お風呂はその後にして食事を待ちます。食事は朝・夕ともに部屋食で、これもまた値段の割には珍しいです。
注意書き。チェックアウトが11時というのもちょっと珍しい。少しでも温泉を楽しんで欲しいという心遣いでしょうか、ありがたいです。
窓の外にはのんびりした田園風景が広がっています。カエルがよく鳴いていました
部屋にはエアコンはありませんが扇風機はありました。土地柄か大して暑くもないのでそれでも大丈夫なのでしょう。アメニティは浴衣・フェイスタオルはありましたが、歯ブラシはありませんでした。こういうこともあるので、旅には歯ブラシを持っていくことをおすすめですね。持ってきていてよかったです。
そんな風に色々とチェックやらをしてのんびりしていたら、すぐに夕食が運ばれてきました。道の駅で少し食べたとはいえ腹が減っていたので、期待が膨らみます。
品数はそれなりにあって中々良いのですが、一品くらい肉があって欲しかったと思う肉好きの私。味はそれなりに美味しいといった感じですが、宿泊料を考えたら十分でしょう。ただ成人男性にはちょっと量が少ないと思うので、夜食を買っておいた方がいいかも。私はパイの実を買ってきてあったので助かりました。まぁでもなんだかんだで美味しくいただきました。
食べ終わったらお盆ごと廊下に出しておくスタイルなのでその通りにして、早速風呂場へ向かいました。
部屋は2階、温泉は一階です。宿の裏側からも行けるので、下駄箱もありました
浴場には既に二人の先客のおじいさんが入っていました。ここは地元の人なんかにも人気なようで、結構人の出入りがあります。
早速服を脱いで浴場へ突入。で、肝心の浴場の様子なのですが、脱衣所に写真撮影禁止の張り紙があったので写真はありません。他のブログに写真があったりするので、興味のある方は検索してみてください。
というわけで文字でお伝えするわけですが、浴場は広く、右側の手前に加温された湯が張られた浴槽と、右奥に源泉そのままのぬるい湯がありました。右側はシャワーが並んでいて、ちゃんとシャンプーやリンスもあるので大丈夫。私は早速体を洗って、まずは温かい湯から。
温泉自体は無色無味無臭でわかりやすい特徴はありませんが、浴感は柔らかく、よく肌に馴染みそうなお湯でした。この温泉は特に皮膚病に効果があるそうで、皮膚に悩みのある人なんかがよく入りに来るそうな。まさに肌によさそうな、優しいお湯です。しかも熱湯とぬる湯があるので、交互に入っているとのぼせることがなくとても気持ちいいので、中には何時間も浸かっていく人もあるそうです。実際、この交互に入る入浴はかなり癖になる良さがありますね。
さて、この内湯の他には露天風呂もあるので適当なところで露天に向かおうと思ったのですが、ここの露天風呂はなんと女風呂からも行ける混浴風呂ということで、「誰かいたらキツイなぁ」などと思いながら露天へのドアを開けると誰もいなかったので直行しました。
露天は綺麗な石で作られたちょっと大きめな浴槽で、大人でも軽く泳げるくらい広い豪華な造り。空も多少見えるのでかなり気持ちが良く、誰もいないことをいいことにスイスイと泳いだりしていました。
しかし内湯もそうですが、新築とはいえ大型の旅館でもないのに浴場の規模、立派さ、綺麗さには宿側の意気込みを感じずにはいられません。日帰り入浴は300円みたいですが、そこらへんの銭湯より安い値段で温泉に、しかもこんな立派な風呂に入れるなんて最高としか言いようがないですね。内湯の天井も高く、ぶっとい梁が通されたりして雰囲気◎です。
露天風呂も非常に趣があって、しかも源泉がそのまま流れ込んでいるぬる湯なのでいつまでも入っていられそうな気持ち良さ。ただ、この日は9月の中頃だったのですが少し寒かった。露天風呂に入れる時期の限界は頑張ってもせいぜい10月くらいまでだろうと思われます。
さて、そんなぬる湯の露天にはカエルのお客さんもスイスイと気持ち良さそうに泳いでいてとても可愛かったのですが、そろそろ温かい方に入りたいと思ったので30分くらい露天に入った後内湯に入り、部屋に戻りました。
その後特にやることもないので本を読む→温泉に入るなんかを繰り返していると、3回目くらいの入浴で加温された方に入ると、先に入っていた刺青を入れたおじさんが話しかけてきてくれたので雑談が始まりました。
「兄ちゃん、露天は入ったか?」
「さっき入りましたけど、少しだけ寒かったですね。気持ち良かったけど」
「ははは、この時期になると露天に入るやつもいねぇからな。源泉がぬるいから一番気持ち良いのはやっぱ真夏カンカン照りの時だよ」
と笑っていたおじさん。どうやらこのおじさんは金井旅館には結構来ているらしく、地元ではないけど仕事で近くに来た時には必ず入りに来るそうな。なので他のお客さんとも仲がよさそうでした。しかしやっぱり真夏が一番気持ち良いんですね。想像しただけで気持ちよくて露天から出られなくなりそうです。
そしてその後、常連らしい話を聞かせてくれました。
「ここの露天は混浴だから、最初誰か入ってないかちょっと躊躇いましたよ」
「まぁこの時期は大丈夫だろ。でも入りやすい季節だと、混浴に入ってくる女狙いのバカ共が来てな、誰もいなかったら脱衣所前のソファで酒でも飲みながら女が来るのを待ってんだよ。ここに入りに来る女なんだ婆さんばっかだってのに。」
「それって何歳くらいの人が多いんですか?」
「大体は40代くらいだが、若い奴もネットで知って集まってくる、どうしようもないバカどもだよ」
という混浴温泉ならどこでも抱えているような問題は、この金井旅館でも顕在のようです。私が泊まったこの日は時期的にそういう人は見受けられませんでしたが、夏ぐらいになるとおじさんも憤慨しているくらいだからそういう人が沢山いるんでしょう。とりあえず私が泊まった日に目につかなくてよかったですが、あまり気持ちの良いもんじゃありませんね。
まぁそんな事を含め、その後も旅の話や仕事の話なんかで盛り上がって仲良くなったのですが、おじさんが先に上がっていってしまったので私も上がって部屋に戻る事に。その途中、翌朝に釣りに行こうと思っていたので宿の主人に釣りポイントを聞いたりして、その日はそのまま就寝しました。
さて、翌朝の釣りは結局聞いたポイントの場所がわからず、自分で探したポイントでは小さなヤマメが釣れるばかりで釣果はゼロで終わる残念な結果に。そのまま宿に戻り、朝食をとる事にしました。
この宿は夕食も朝食も健康的なメニューで湯治にはうってつけな感じ。夕食は多少少ないと感じたものの、朝食は丁度良いくらいの量で美味しくいただきました。
さて、この日は佐渡の旅最終日。後は家に帰るだけの行程なので、何も急いで帰る必要もありません。ということで早速風呂場へと行く私。日帰り入浴の営業時間よりも泊り客は1〜2時間くらい早く入れるので、かなり快適に入れます。私が入りに行った時も誰もおらず貸切状態だったので、金井旅館の温泉を大満喫することができ最高でした(最初は加温浴槽の方はあまり加温ができておらずぬるかったですが)。
結局2時間以上貸切状態で入った後温泉をでて、身支度を整えて宿代を支払いに帳場へ。
玄関目の前の帳場
何度も「すみませ〜ん」と呼んだらやっと女将さんがでてきてくれたので、宿代を支払って釣りの結果も報告して宿を後にしました。女将さんと少し雑談しながらも、最後まで温かく送ってくれたのには感謝です。
こののんびりとした風景と素晴らしい温泉を後にするのは名残惜しいですがしょうがありません。とりあえずは今日中に家に着けばいいのでまったりと発進し、途中道の駅に寄ったりした後は特に観光で寄る場所もなく、佐渡の旅の初日に辿った道を戻り家路に着き、2016年夏休みの旅は無事終わったのでした。
※記事内にはあまり書きませんでしたが、金井旅館の女将さんやご主人、さらにおばあちゃんなんかもとても暖かく迎えてくれたのでのんびりまったりと過ごすことができました。温泉も噂通り素晴らしいもので、ここでぬる湯と熱湯に交互に入る気持ち良さを知ってしまったことが、以前の記事で書いた山梨の下部温泉に行こうと決心したキッカケでした。宿泊料も安いので、今度は釣りと温泉を目当てにゆっくりしにいきたいです。
大塚温泉金井旅館:一泊二食付き 6250円
金井旅館