秋旅行2日目です。 [1日目]
時折晴れ間が見えつつも薄く肌を湿らす程度に降っていた雨は、みなかみ温泉街に近づくとすぐにやんで暖かい光がさすようになった。初めからカッパなんていらないくらいの雨で、どちらかというと寒さを避けるために着ていたものの、もはやその必要もないくらいの気候になってきたので適当なところでカッパを脱いだ。今日は予報的にこのまま晴れがつづくはずだ。
今日は今日で色々予定というか寄りたいところがあるけど、寄ったらどれくらい時間がかかるかわからないスポットが1つある。昨日からりんごりんごと言っていたけど、今日は今回の旅一番のお楽しみの1つに数えていたりんご狩りをしようと思っている。ただ何分初めてのことなのでどれくらい時間がかかることなのかわからない。それ次第では宿に着く時間が早くも遅くもなるわけだけど、まぁ遅くても5時を過ぎるようなことは恐らくないだろう。まぁ今はりんご狩りを楽しみに原付を走らせるだけだ。
午前の観光客もいないのんびりとした温泉街で一杯のコーヒーでも飲んだならスローな旅行気分を味わえそうでいかにも気分が良さそうだけど、今日のところはまだ喉も乾いてないのでこのまま先へ向かおう。なかなかそういう旅行が出来ないのが私の悪いところだ。
特にマウスパッドに困ってるわけじゃないけどなんとなく気になっていたのですぐに購入。他のお客さんたちはほとんどが新鮮な野菜目当てに来ているようで、しかも恐らく昨日のように県内の人たちが多数だろう。外に駐車してある車のナンバーがそんな感じだった。
(ちなみにマウスパッドはポインタの滑りが悪かったので引き出しの中で眠ってます)
昨日色々と寄ったので、ここらから月夜野あたりまではただ走るだけだ。11月らしい寒さはあるものの気温は少しずつ上がってきているので、私の気持ちもそれに合わせてのびのびとほぐれていく感がある。この道は昨日走った道以上に車通りがないから、開放的でとても気分がイイ。
今まで走ってきたようないかにも山間部という景色を抜けて市街地に出ると、今日最初の立ち寄りスポットである高橋の若どりというお店に到着した。
このお店は地元の人からは「月夜野のケンタッキー」と言われて愛されているお店らしく、私がここを知ったのは数年前のことだけど、かねてより近くに行った際には寄りたいと思っていたお店だ。
ケンタッキー好きの私としては是非味わってみたい。ここで良さげなチキンを買って夜のお供にしようという魂胆だった。
残念なことに店内は狭くお客さんも何組かいて、お店の人も忙しそうだったので写真を撮ることはかなわなかったものの、メニューを見ると調理品の「蒸し焼き(骨つき)」「照り焼き(骨なし)」なんてものの他にも生の鶏肉も売っていて、しかもそのどれもがかなり安くて魅力的。地方には「ウチの近くにもこんな店があったらなぁ」なんて思うお店がちょくちょくあるけど、ここもそんなお店の1つかも。
とりあえず私は照り焼き(450円。大きさにより値段が違う)を1つだけ買ってすぐに店を出た。袋から漏れてくる匂いはまさに美味しい照り焼きのそれ!今日はもう夜食をどれにするか悩む必要がなくなった。楽しみであるッ。
さて、この次に寄ろうとしているのが先に書いたりんご狩りスポットだけど、高橋の若どりさんからしばらく普通の田舎道を走り過ぎてりんごの木が生い茂る小道を進んでもそのりんご園は見つからない。
やまとしりんご園というのが私が行こうとしているそれだけど、周りにはりんごの木で囲まれ、他のりんご園はちらほら見えるものの、目的のやまとしりんご園は見つからない。道を歩く人の姿もない。なんだか寂しいところに来てしまった感じを抱きながら探すも結局見つからず、私はりんご狩りを諦めざるおえなかったのだった。
ただこんな時のために他にもりんご園はチェックしていたので大丈夫。そこではりんご狩りは出来ないけど、多分りんごは買えることだろう。美味しいりんごを手に入れるという目的さえ果たせれば問題ないのだ。だから今は、この場を離れて昼飯を食べに行こう。
飯どころは事前に決めていたこの近くにある守蔵さんという蕎麦屋なんだけど、ここいらは小道が入り組んでいて難しいので、まずは253号に出た。道すがらの無人の小屋には安値でりんごが売られていたけど、それには目もくれず少しばかり走ったら店への案内看板があったのでまた小道に入る。
ここいらはどこぞの山の麓ということもないんだろうけど小高くなっていて、傾斜にたつ集落のガタガタした道を上っていくと、ともすれば見逃してしまいそうな場所に守蔵さんを発見した。周りには民家しかない、他よりは見晴らしの良いよくある田舎の集落の中で営業していた。
古民家を改装したカフェなんかはよくあるけど、ここはそういった系統の蕎麦屋な感じがする。
しかし店内に入ってみるとカフェなんかに比べたら都会っぽさはほどほどに、古民家の味を残しながらも壁や台に載せられた小物やイラスト達からはオシャレな雰囲気が漂っている。なかなか良い感じだ!
「いらっしゃいませ〜」と正面の台所から出てきた店主は想像していたよりもずっと若く、愛想もとても良い好青年(と言っていいのか)だった。私を座敷の席に案内すると、すぐにお茶と揚げたそばを出してくれた。
この店内のセンス、そしてイラストの数々や諸々のデザインなど、店主1人のものだろうか。
私は旅先でオシャレな古民家カフェとかに寄ったりすることはほとんどない。それは別にそういうのが嫌いなわけではなく、私は旅行では都会っぽい、ある種洗練されたような雰囲気ではなく田舎の素朴な感じとかそのまんまな古い味わいを求めているから古民家カフェには寄らないんだけど、この守蔵さんはそこらへんが(個人的に)ちょうどいい感じで配合された空間になっているのでちょうどいい面白さがある。立地も含めて、ここは結構好きだなぁ。
天ぷらはごま塩でいただくのもおすすめらしい。熱々の天ぷらをすぐさま頬張りたいところだけど、まずは口の中がフラットな状態で蕎麦からいただこう。
蕎麦はキンキンに冷えてよく締まっていて、噛むと心地良い弾力でコシのある蕎麦だとすぐにわかる。見た目の色味こそ薄いけど、これはウマイ蕎麦である!
続いて天ぷらを食べてみる。皿の右側にある黒っぽいやつは最初ナスかと思ったけど薄いので「じゃあ海苔か!」と予想したけど、いざ食べて見るとサクサクの中にクニュっとした柔らかい食感。そして舌には日本人にはおなじみのダシの味。これは・・・昆布!
昆布の天ぷらというのを初めて食べたけど、こんなにウマイもんなのかッ。他の店でも出してるところはあるだろうけど私は初めて見た。これは、自分で天ぷらをやるときには是非とも作ってみたいな。多分食感からして茹でた後のものだろうけど・・・まぁそれを置いといてとにかくこれはウマイ!ごま塩もイイ味でございました。もちろん蕎麦湯もいただきました。
他の天ぷらももちろん美味しくて、蕎麦と交互に食べていたらあっという間に完食してしまった。蕎麦を大盛りにしてもよかったかもしれない。しかしこのお店は当たりだったな。ごちそうさまでした!
なんだか見るところが沢山あって楽しいお店だ。食後にはお客さんもほとんどいなくなったから多少ゆっくりできそうだけど、ここは雰囲気が優しいからすぐに眠くなっちゃいそうだ。だから蕎麦湯を飲みながらの休憩もほどほどに、感想ノートに一筆書いてから店を出た。
ちょうど精算時にお客さんが来ちゃったから店主と話せなかったのは残念だったけど、近くに来た時はまた寄ろうと決めて出発。ここからは峠道を越えて高山村に出て、かつて泊まった大塚温泉を過ぎる道のり。峠道は多分大丈夫だろうけど、時間はもう13時ごろなので多少は急いだほうがいいかもしれないな。
峠道は原付の心配をするほどの坂もなくすぐに越えることができたけれど、トンネルの寒さは厳しかった。高山村にはいぶきの湯という日帰り温泉があるようでそこで体を温めたい気持ちはあったけど、さすがにそこまでする時間はないのでそのまま通り過ぎる。
高山村に入ると沼田と中之条をつなぐ145号線が走っているのでそれにのって中之条方面へ。
この道は道幅の割に交通量が少なく、右に集落左に川と田んぼというような風景が広がっていて案外見晴らしもよく、結構走っていて楽しい道だ。
この道を逆走していくとロックハート城という中世ヨーロッパの雰囲気を存分に味わえるテーマパークがあるようで、以前大塚温泉に行った時も行けたら行こうと思っていたんだけど、今回も寄ることはできなかった。代わりにこれから私が行こうとしているのは道すがら寄ることのできる酒造だ。やっぱロックハート城は友達ととかかな、行くのは。
道沿いに建物があるわけではないので、代わりにこの控えめで味わいのある看板と杉玉が目印になっている。注意して周りを見てなかったら見逃してたかもしれない。その脇にある道から酒造へと向かう。
道をちょっと行くと突き当たりに蔵があったので「あそこか!」と思って行ってみると、それは本当にただの蔵で売店があるような感じはない。
しかしその手前に民家のような建物があって、ちょうどその庭木を庭師さんが手入れしていたので「貴娘酒造さんてどこですかね?」と聞いてみたところ「ここですよ」と幾分めんどくさそうに指差した先は、一見なんの変哲も無い民家のような建物だった。
まぁこの建物も奥の蔵も酒造のものだとはわかっていたけど、特に「売店はこちら」だとか「貴娘酒造」とか書かれていないので少々わかりずらかった。でも見てみると一応営業中っぽいので邪魔にならないところに原付を止めた。
かなりこじんまりしてるけど、それが返って地域に根付いた酒造という感じがして好感が持てる。私がここに来たのはたまたま「貴娘酒造」という素敵な名前を知ったからなわけだけど、こういう地元密着型っぽい雰囲気に出会えただけで来てよかったと思う。
店に入ると左側の事務室からおじさんが出てきてくれた。大々的に商売をしている感じでもないので愛想が良いというわけではない(しかし悪くもない)けど、初日の大利根酒造さん同様「何かおすすめありますか?」と聞いてみると色々と教えてくれた。
やっぱり純米酒がおすすめのようだったけど、せっかくだから地元の人が普段飲んでるようなのはどれかと聞いてみると、下段の右から2・3番目のがそうらしい。なるほど、確かに他のラベルよりもどこか昔ながらというか、質実剛健な感じがする。ラベルも気に入ったし、左から3番目のをいただくことにした。1000円でお釣りがくるくらいだったかな。家に帰ってから飲むのが楽しみ!
ここらへんは何度か通ったことがあるので少しは知っているけど散策したことはない。
当初の予定としては、昼に行った守蔵さんで昼食をとらなかった場合、中之条駅近くにあるほづみとんかつ店というところでカツカレーラーメンなる相当に気になるラーメンをいただこうと思っていたんだけど、これもまた次回になりそうだ(腹具合的には食べられるんだけど夕食に影響がありそうだったのでやめといた)。これは早く食べてみたい。
この道をまっすぐ行くと二手に別れていて、左手に曲がるのが宿に向かう正解のルートなんだけど、先に書いたりんご園は右手に曲がった先にあるのでそちらへ向かう。
こちら側の道は以前四万温泉に行った時に走ったはずだけどほとんど覚えておらず、次第に店や民家がなくなり寂しくなっていく道をしばらく行くと、お目当の金井農園さんに到着した。
見ると先客は1組だけ。時間も14時をちょっと過ぎたくらいになっていたので「売っていてくれ!」と祈るような気持ちで棚を見てみると、数種類売ってるうちの1つに求めていた群馬名月を発見した!ありがてぇ!
そんな風に1人ひっそりとテンションがあがっていると、お店のお姉さんがすぐさま「味見してみてください〜」と1つ1つ説明しながらりんごを切ってくれた。その説明を聞きながらありがたくいただいていくと、私が求めていたからかぐんま名月が一番美味しく感じる。が、その後に食べた新世界というりんごはぶっちゃけぐんま名月より美味しかった。これまであまりりんごを気にして食べたことがないけど、こうして色々食べてみると結構食感とか甘みに違いがあるもんなんだなぁなんて思いながらも、この新世界とぐんま名月を買って家まで送ってもらおうと決めたのだった。
ぐんま名月が5個くらい入って500円、新世界が1000円(この時何個入ってるか確認してなかった)だったので、名月を2袋に新世界1袋で2000円、そんで多分送料が入って合計3000円くらいだろうから、宿でもらったGoToのクーポン券を使ってほとんどタダで手に入るだろうと計算してお姉さんに声をかけてみた。
私「あの、りんごを送ってもらうことってできますか?」
お姉「え〜と、ここで売ってるのものは送れますけど、いわゆる箱に入った贈答用のものはもう予約がいっぱいで無いんですが」
なるほど、やはり幻のりんごと呼ばれるだけあって人気の品らしい。しかしそんなことは初めからわかっていたので無問題。
私「そうなんですか。でもここに売られているので大丈夫です」
お姉「そうですか、ではこちらに〜〜」
ということで紙に色々書いて無事購入完了!値段は3100円でほぼ予想通り!旅行先で買ったものを家に送るなんて今までしたことがなかったので、今回クーポン券を使ってそれが出来たのはありがたかった。最後におまけでりんごを5個もくれたし、目的も達成できて本当に金井農園さんに来てよかったぜッ。
(※ 後日、家に帰ってから1週間後くらいにダンボールが届いたので開けてみると、ひとつひとつ新聞紙にくるまれて、隙間ができないようにしっかりと梱包されてありました。その丁寧な仕事に嬉しくなったのもさることながら、りんごも蜜ははいてなかったもののとても美味しく、大満足な品でした。新世界は1000円で5個入りと思っていたら予想外に10個入りで1000円だったようで、計20個ほど入っておりました。
ちなみに幻のりんごとして必死に求めたぐんま名月ですが、帰ってスーパーを見てみると普通に売ってましたね。もう幻ではないようです。が、新世界はまだどのスーパーや八百屋でもみかけません。本当の幻はこちらだったようです。)
さてさて、ここで今回の旅の最大の目的を果たせたので私の気分はもうすっきり。あとは来た道を戻り、145号線をあの川原湯温泉方面へ向かうのみ。その途中もまだ少し寄りたいところがあるけど、すんなりりんごが買えたことで多少時間に余裕ができたから道中楽しんでいこう。
すっかり交通量も増えた道でガソリンを給油したりしながら進み、適当なところで道を逸れて375号線へ。
この道は八ッ場ダム建設に伴って作られた道のようで、かつて通ったことがあるものの改めて見ると整備が行き届いていてとても走りやすい。山の麓を少しだけ上がっていくような形になっているので、最初の坂からは谷間に開かれた街並みを眺めることができて気分も爽快だ。
休憩後少しばかり走ると道の駅の案内があった。ここは以前来た時も存在は知っていたものの寄ったことはなかったので、ちょうど時間もあることだし急遽寄ってみることにした。今回の旅行はお土産を多少は持てるから、いいのがあったら買っていこう。
人の数はそれなりで特に混んでる様子もない、のんびりした道の駅風景。温泉や公園もあるようだけど、今用があるのは直売所だ。
直売所の中は外観から予想できた通り狭めで、それだけに品物が所狭しと並んでいる。やはり目がいくりんごだけど、珍しそうなものは既に完売した後だった。
とりあえずざーっと中を見て回ったところ、興味があってかつ持って帰れそうなものとして良い感じの蕎麦があったので迷わず購入。これがまた無骨な箱に入って魅力的だったので、後でご紹介いたします。
そんなわけで道の駅滞在時間はすぐに終わり、近くにある吾妻渓谷なるスポットでも見にいこうと少し思ったものの、あまり紅葉もしていない感じなので川原湯温泉へ向かう。
なんだか駅舎内に面白そうな施設がありそうな感じだったけどそれは置いといて近くにある豊田乳業へ。ここは色々調べていた時たまたま知ったんだけど、工場の一角(?)の屋外スペースみたいなところでここの商品が購入できて、かつその場で食べることができるらしいということで楽しみにしていたんだけど、工場に入る坂の手前に「本日休業」の張り紙が。1枚くらい現場の写真を撮っておけばよかったけど、坂の上には実物大くらいの牛の置物が我関せずといった風で鎮座していた。全く、本当旅行中ってこういうことが一度や二度は必ずあるよね。残念です。。
八ッ場ふるさと館を抜けて再び吾妻川を渡ろうというところで、対岸の殺風景な土地に建てられた施設(?)が気になった。ぱっと見洋風なお屋敷のようで目をひくものの結局寄ることはなく、後で調べてみたらここは八ッ場湖の駅丸岩といって道の駅的な施設のようだけど、水陸両用バスなんかのレジャーもあるらしい。あの殺風景な風景の中に無理くり建てたような施設が良い意味で気になっただけに、寄らなかったことを少し後悔した私だった。
そうして湖の駅から先に行ったところで、宿に向かうために406号線に入る。
地図で見ると峠らしいなかなかにクネクネした道が宿あたりまで続いているけど勾配はわからない。
けれど道はさきほどの整備された舗装路よりかはいくらか時を経た感じはあるものの走りやすく、しばらく走って見ると勾配は大したことのない至って普通の峠道だということがわかった。ただいつの間にか太陽は西へ沈もうと傾きを始めていて、木々の間から時折さしてくる光はサングラス越しでも目を細めるほど鋭かった。
この道のすぐ脇に商店があるだけで周りにはなんにもない。今日の私は夜食用の照り焼きともらったりんごがあるからいいものの、もしそれもなくここまで来ていたら頼りはこの脇の小さな商店だけだ。私ももしかしたらコーヒーなんかを買いに来たりくらいはするかもしれないけども。
案内はあったもののうっかり道を間違えてしまったことに薬師温泉社員寮(近くの薬師温泉旅籠の社員寮)あたりで気づき、戻ってもう一度案内に従って進むとすんなりと宿に到着した。
宿はクネクネと曲がり上っていくゆるやかな坂道の途中にあり、建物の後ろは緑多い崖となっていて、前面と側面には温川という流れを望むことができる、ひっそりとした感じの宿だ。いかにも山の温泉宿、湯治場といった雰囲気で私好み。早速向かうとしようッ。
一見にしてその歴史を思わせる佇まい、これこそが山の温泉宿の魅力!恐らく中も年季の入った造りとなっていることだろう。期待を込めていざ!
真正面から写真を撮ってたんだけどひどくブレてたのでこんな角度の写真のみです(すいません)。
こういった宿にお似合いの、重くどっしりとした印象の室内に、時代を思わせる調度品の数々。そして椅子はといえば丸太をくり抜いただけというワイルドさ。素晴らしいねこれは。
入るとこれまでの寒い道中を労うかのように暖かい空気に体が包まれてほっとする。
帳場の中にいたご主人がすぐに出て来てくれて、挨拶もほどほどに促されるまま帳簿に記入すると、私の荷物を持って部屋まで案内してくれた。ご主人は愛想はいいけど、割とあっさりした接客態度らしい。後で話を聞けたりするチャンスがあればいいけど。
私は離れの部屋に泊まるプランで予約していたので楽しみだったが、場所は上の写真の引き戸を通り、右側すぐにあるドアから外に出て目の前にある建物だった。ドアから出て一歩で離れのドアに手が掛かるのでかなり短い渡り廊下となっているけど、あまり泊まることのない離れなので少し特別感がある。
廊下は狭く、離れの客室は2部屋くらいだろうか。私の部屋は目の前のドア手前の右側だった。
私なんかは離れと聞くとなんだか豪華なイメージがしちゃうんだけど、ここでは見ての通り田舎の民家の一角と言われても納得してしまうような感じ。でもこの素朴な親しみのある雰囲気、大好きです。
例によってご主人が宿のあれこれを簡潔に説明してくれた後はもう私の時間。この部屋をまずは存分に味わおうじゃないか。
建物こそ年季が入っているものの、母屋からそうだったけど部屋もとても清潔でチリ1つ落ちてない。部屋の備品もなるべく最低限にといった感じで、シンプルでまとまりのあるように見える。なのでその分この部屋の趣を十分に味わえる環境となっている気がする。
部屋にはエアコンがないので温もりの頼りはヒーターのみ。多分もっと寒くなってきたらコタツなんかも用意されるんだろう。でも今くらいならヒーターがあれば十分で、部屋は割と暖かかった。いやしかし本当にさっぱりした部屋だ。これはあのご主人に気質が影響してるんだろか。
名前はわからないけどこの小さなベランダみたいな造りが私は大好き。細かいところの意匠も目を引くし、何より温泉上がりに腰掛けて一杯の茶でもいただけば、それだけでしばらくは風流な時を過ごせるというもの。今日は良い夜になるゾ!
う〜む、思ったよりイイぞこれは。やっぱり泊まるなら、こうした時代がありありと感じられる宿が最上だ。この宿が過去数多泊めてきたであろう客の新たな1人として、私には知るはずもないこの宿と土地の昔に想いを馳せるのもこうした宿に泊まる面白さの1つだ。今日は美味しい夜食もあるし、存分に楽しめそうだ。
そうしてある程度散策が終わると、特に体が疲れているわけでもないのでそのまま温泉へと向かう。時間は16時前だし、宿泊客がチェックインしてくる前にお楽しみの温泉をいただいてしまうことにしよう。こんなひっそりとした素敵な温泉場の湯とはどんなものなのか、とくと味わいたいッ。
写真の通りある程度歩かないといけないんだけど、親切にも要所要所にヒーターが置いてあるので廊下は全然寒くない。こういう心配りがあるとないのとでは宿への印象が大分違ってくる。ありがたいです。
薄暗い+ぱっぱと写真を撮る方なのでブレた写真が多いのは反省点。
ちなみにこの手前に露天に続くドアがあったんだけど、まずは内湯からいただくことにした。
今までと打って変わって、なんかペンション風というかロッジ風というか、そんな雰囲気の脱衣所。
見た所先客はいなさそうなので、すぐに温泉へと向かおう!
このいかにも効きそうな温泉といった感じの様相、素晴らしい。まだお湯は見ていないけど、この板蓋を見た時点で「何か只者ではない」感がある。しかも一枚一枚が結構分厚いし。これは全てをはずすのは難しいな。
とりあえず体を洗う前に板蓋をはずしておこう。しかしこれがやっぱりそれなりに重く、一度に持っていけるのは2枚くらいが無理せず持っていける限界か。一応他の人が入ってきた時のことも考えて多少多めにはずしとこう。
湯は少し白濁した、微妙に緑色が混ざったようなお湯。まぁこれは浴槽と光の加減なんかもあるかもしれない。
泉質はというと案内書には炭酸泉とのみ書いてあったけど、実際はナトリウム・カルシウム-塩化物泉・硫酸塩泉ということらしい。温泉に特に詳しいわけではない私だけど、なんだか色々入ってお得な温泉という感じがする。硫酸塩泉ということは肌もツルツルになるだろうし、初日の出発時に負った手のひらの傷たちにも効きそうだ。早く入ろう!
というわけで速攻で体を洗ってすぐさま入湯。
温度は私にとってちょうどいい温度で、深さも程よく首まですっぽり。浴感は滑らかで、炭酸はほとんど感じないものの、肌にしっとり馴染む感覚はなかなかに得がたい心地よさがある。
これは、かなりレベルの高い温泉ではなかろうか。体は冷え切ってはいなかったものの、手足の末端まで温まってビリビリしてくる感じも気持ちよく、こんな自然が多い所にポツンと湧く温泉という環境も合わさって、心も体も喜んで延び延びとしてきている。もちろんあまりの気持ちよさに、「ヴオ〜」と一声上げてしまったのは言うまでもない。
大きな窓より外の景色を楽しみながら、「これぞ旅!」と1人満ち足りていると、「失礼します〜」とおじさんが1人入ってきた。こんな時のために板蓋を多めにはずしておいて良かった。おじさんは体を流すとすぐに私の対面に入ったので、何の気なしに話かけてみることにした。
私「どちらから来られたんですか?」
おじ「神奈川ですよ。今日いきなりここを予約して、少し準備してからそのまんま来ちゃいました」
と笑いながら答えるおじさん。雰囲気も柔らかくて話しやすい。
私「そうなんですか、じゃあどこにも寄らずに来たんですか?」
おじ「いや、チェックインする前にすぐそこの薬師温泉に日帰り入浴してきたんですけど・・・あそこは凄かったですよ」
私「私もちょっとチェックしたんですけど、料金が高いんで諦めました。たしかに豪華そうですよね」
おじ「そうですね、でも日帰り1000円で入れるんで、それぐらいであの豪華さを味わえるんだったら安いもんなんで(笑)」
薬師温泉旅籠という宿がこの宿のさらに上あたりにあるんだけれど、そこはちょっと高めの料金設定。
ただそれだけに宿はやはり立派だったようで、温泉はもとより館内の展示物なんかも観れたりするらしく、エレーベーターなんかもあると言っていた。オススメされたけど、明日入る時間があるかどうかはちょっと微妙かも。
おじ「露天には入りました?」
私「いや、さっきチェックインしたばかりなんで、まずは内湯に入ってからにしようかと思って。おじさんはもう入られたんですか?」
おじ「さっき入ってきたんですけど、露天は源泉そのまんまの温度なんでね、この時期はかなり厳しいものがありましたよ(笑)これから入るんだったら、お兄さんまた内湯に入ることになると思いますよ」
なるほど、露天はぬる湯というわけか。これは少しばかり覚悟して行かなきゃならんだろうな。。ここまできて露天に入らないなんて選択肢はあり得ないし、あまりに寒かったらおじさんの言う通りまた内湯に入りにくることになりそうだ。
とまぁそんな感じで優しいおじさんとこの後もしばらく話してから、お先にあがって露天へ向かうことに。
その途中「あ、もらったりんごあげればよかったな」なんて思ったけど、後でまた会えたらでいいか。おじさんは素泊まりらしいから、喜んでくれるだろう。
内湯のすぐ近くに露天へと続くドアがあって、それを開けるとまるでメイとさつきの家の隠し階段のような感じで現れる。一段の幅が狭くてちょっと急なので、足腰の弱い人や老人なんかはキツイかもしれない。私も「ワクワクするな〜」と思いつつも、踏み外さないように注意して上ると
脱衣所全体を撮ったと思っていたらこの写真だけでした。でも正直このドアの反対側には簡素な長椅子とカゴがあるのみで、言っちゃえばそれだけの空間だ。そしてやっぱりというかこの脱衣所にはヒーターがないのですでに寒く、もうこの時点で露天からあがった後の極寒が予想されて、覚悟のない者は入るべからずと言われてる気さえしてくる。これは気合いを入れなければな!
なんだこの趣たっぷりな造りは!変色した木の風合いといい野趣を添える岩といい、小さな空間にピシッと「温泉感」が詰め込まれたようなこの露天はなんとも奥行きのある味わいだ。
ただ、さっきから露天露天と言ってるけど、実際は窓が嵌められている。これを露天と言っていいのか悪いのかわからんけど・・・ただ今の時期言えることはただ1つ、「窓があって良かった」だ。
もう一目ですっかり魅了されてしまったわけだけど、寒いのでとっとと湯に入ろう。おじさんは先に露天に入って良かったと言っていたが、こんな寒いとこで体を洗う必要がなくなったということに関しては内湯が先で良かったと思う。
さて、というわけで入湯してみると、源泉そのままのぬる湯とある通り温水プールくらいの湯温で、体が十分あったまるということはなさそうだけど、入っている間は寒いということはない、といった感じ。
ただやっぱりぬる湯のこのいつまでも入っていられるという心地よさは何にも代え難いものがある。内湯との湯の違いは大雑把な私にはあまりわからなかったけど、でも泉質の良さは変わらないだろう。眺めも内湯よりいいし、こりゃ時間を忘れてしまいそうだ。秋でも最高です。
これぞ天国。夏に入れば極楽だっただろう。あまりに気持ちよくて「もう出たくないぜ・・・」と思う一方、出た後の地獄を考えるとそういう意味でも出たくない。そんな両極端な想いを抱きながら、結局30分ほど入っていたのだった。
その後決死の覚悟で脱衣所へ戻り、無意識に「寒ぅ!」と叫ぶほどの寒さにふるえながらも光の速さで体の水分を拭き終えると、おじさんの予言通りまた内湯へと向かった私なのだった。もし出来れば、露天の脱衣所にもヒーターを置いてくれたらありがたいと、一利用者として希望します。しかし、素晴らしい造りと温泉でありましたッ。
夕食は18時ごろということなのでそれまではまだまだ時間がある。もうお腹もだいぶ減ってきているけど、夕食を楽しむためにも何かを食べるわけにもいかない。まぁとりあえず、体が温かいうちにそこらへんを散歩でもしてこようかな。
この川は温川という名前というそうで、夏に行けば釣りには良さそうだけど川に簡単に降りられそうなので競争が激しいかもしれない。チラっと見た所魚の影はないが・・・、ここは釣りとしてはどうなんだろう。
ちなみに、写真中央の橋が私が宿に来るときに通ってきた道だ。
この季節、この時間帯、誰も通らない道路に聞こえるのは木々のこすれる音と川の流れという寂しい雰囲気は、山の温泉宿と調和してなんとも言えない感慨がある。旅をしている実感というか、私の知らない遠いところに来たという感じがとても好きだ。
あそこは廃屋だろうか、もう暗くなってきてるのに窓からの灯りも見えない。その寂しい感じもまた良し。
自動の玄関を入って、大きな「カランカラン」という音が響くロビーには誰も人がいなかった。
そのまま部屋に戻るとさすがに体も寒くなってきていたので、温かいお茶を飲もうとしたらうっかりお茶受けが目に入ってしまた。夕食までは何も食べないつもりだったが・・・これくらいならいいか。完全な空腹時よりも少しくらい何か腹に入ってる時の方がより食べられると言うし、夕食まではそれで繋ぐとしよう。
やっぱり窓際はいいな。すぐそこに木々が迫っていて遠くには山々の影。そしてその間には川と言うことなしの風情。当然寒いけど、そこであつあつのお茶を飲むというのもまた1つの悦楽である。私の友人に逆境が好きな奴が1人いるけど、ある種それに近い感覚かもしれない。
とそんな風に思うままに過ごしていると、18時くらいに「ご夕食の準備ができましたので〜〜」との声がかかった。どうやら食堂での食事らしく、それはロビーの右奥にある通路から行けるらしい。
行ってみると帳場にいた人ではない1人のおばちゃんが「こちらにどうぞ」と促してくれたので、ちょっとばかりワクワクした気持ちで入ってみると
シーンとしているけど、どうやらあの部屋を仕切る黒い戸の向こうには他の宿泊客がいるようだ。とりあえずここは私1人の間になってるけど、これはコロナ予防のためなのかもともとこうなのか。ともかく静かでどっしりとしていて、気持ちよく食事ができそうだ!
ここも例によってご飯が後から出てくるタイプのようだから、まずはおかず達からいただこう!
とりあえず小鉢から刺身へといただいていったが、特別な感じはしないものの素朴でとても美味しいお味。そして山の宿で出てくる海鮮の刺身といったらマグロが王道だけど、ここでは逆にマグロはなくブリや赤貝、そしてサーモンなんかもあった。ううむ、お腹も減っていただけにこれはウマイ。
鯖味噌とかエビフライなんかはご飯と一緒に食べたかったのでゆっくり小鉢あたりを食べていると、割とすぐにご飯(とうどん)が運ばれてきたのでこれでようやく次のステージに行けそうだ。
まずは鯖味噌。よし、味もいいしご飯にぴったり。
そしてエビフライ。これは想像通りの味だけど、とっておいて良かった。
さらに続いて天ぷら。やっぱり天ぷらになったピーマンは食べられる。ウマイ
早めにご飯がきてくれてよかった。やはり味が濃いものしっかりしたものにはご飯がかかせない・・・・・・が、食べてみて明らかになった意外な問題が1つ!
それは・・・それら全てが冷たかったことッッ!
ご飯とうどんを除き、上の写真を見て恐らくほとんどの人が「これは温かいであろう」と無意識に想像すると思われる鯖味噌、エビフライ、天ぷらは全て冷たかったッ。ほんのりとした温かさもなく、本当に冷たくなってしまっている。これは一体・・・。
まぁ正直なところ「おいおい冷たいじゃないかよ」とは思ったもののそんなに気にするような人間でもないので(まぁ温かいのが一番いいけども)美味しくいただいたけど、あれだけ廊下のヒーターやら館内の清掃やらちゃんとしてるのに、どうしてここだけ手を抜いてしまうのか、なんだか勿体無く思ってしまう。鯖味噌なんて、最悪レンチンくらいでもそんなに手間ではなかろうに。宿の食事を心底楽しみにしてるような人だったらさぞかしがっかりすることだろう。これは本当に勿体無いことだと思う。
でもまぁ私はそれなりに美味しくいただいて完食しました。ごちそうさま!
こういうところでは自分で布団を敷くのが普通なのでそのつもりだっただけにありがたい。
こんなに綺麗に敷いてくれているのに申し訳ないけど、しかしこの時私は無意識的に布団に飛び込んで「ヴゥ〜〜ん」と思いっきり腰をのばしたのだった。本当なら着いて早々にやるもんだけど、なんとなく今まで忘れていた。それだけに満腹感も合わさって相当に気持ち良い。
いつも通りと言えばそうだけど、もうこれからは何をすることもないので(次の日の宿の予約をしなくていいというのはありがたいもんだ)、思うままに過ごさせてもらおう。
とりあえずこのままでは起き上がれなくなりそうなので、一旦また温泉に入りに行って、1時間ほど眠った。
眠った後再び温泉に入って肌がかなりしっとりしてきていることを実感した後、窓際でのんびりしたりテレビを見たりしていたらようやくお腹も空いてきたので、晩酌と今日の戦利品確認の時間へ移行した。夕食はお腹が大満腹になるほどではなかったので、照り焼きを買っておいて本当に良かった。りんごもあるし十分すぎるだろう。
わかりづらいけど中之条そばとさらりと書かれたダンボール箱に一目惚れして買ってしまった。中には5袋の蕎麦が入っていて、1袋2人前くらいか。1袋が多少高めだっただけに、帰って食べてみたらなかなかに美味しかった。
調べてみたら桐匠根津という伝統工芸士の方?会社?が作ってる商品らしい。
先にも書いたけどポインタのすべりがあまりよくないので使ってないけど、肌触りがとてもいいだけに残念。他のマウスに替えたときにまた使ってみようと思う。
私は日本酒には詳しくないけどこれはかなり飲みやすく、喉に「ウッ」とくる感じもなくて、酒に弱い私でも「あら、美味しいじゃない」と思った一品だった。香りも良いし、地元で愛されているというのもわかる気がする。一本の値段も安いし、これはお土産に買って正解だった(帰ってから飲んだので)。
こうしてその日に買った土産を眺めるのは、帰ってからの気持ちを盛り上げてくれるので楽しい。中でも貴娘酒造さんは営業日に必ず売店を開けてるわけでもないらしいので、あそこでちゃんと買うことができて非常に良かった。やはりその場の空気を感じて購入するというのは大事なのだ。
サイズ比較のために横に湯呑みを置いてみたけどどうだろうか。一見そんな大きくは見えないかもしれないけど、照り焼きは厚みもあって十分に腹を満たしてくれそうだ。
ヒーターの前に置いて温めていたので冷たくはない。食べてみると筋もなく柔らかでとてもジューシー。照り焼きらしい濃いめの味がしっかり染みているのでご飯が欲しいところだけど、ここはお茶のみで我慢だ。味わってみると多少醤油の味が強めだけど、これはかなり美味しいナ!出来立てだったらもっと美味しかったろうことを思うと、あの店が月夜野のケンタッキーとして地元に愛されていることもうなづける。これはイイ夜食である!
美味しかったのですぐに完食してしまったけど、まだりんごが残っているのでデザート気分でいただく。
1つ食べてみると、昨日の夜に食べたものとはまた違う食感で、名前はわからないけど違う種類のりんごだとすぐにわかった。おまけでもらったということでつる割れや多少の傷が入った訳あり品だけど、それはただ見た目の問題だけで味はとても美味しい。ただ、さすがに5個も食べることはできないので2個だけいただいた。あのおじさんにはあれ以降出会わなかったらあげることはできなかった。
朝、スマホのアラームで目がさめると、窓の向こうはキリッとした秋晴れ。柔らかな朝日が再び眠気を誘うけど、今の時間は7時過ぎ。この朝の空気を味わいながら温泉に入るチャンスは一度しかないので、フムッと跳ね起きていざゆかん、温泉へ!
温泉宿に泊まると毎回書いてる気がするけど、朝風呂は本当に気持ちがいいな。着いてから入るのも夜中に入るのもいいけど、心と体が最も喜ぶのは朝風呂だと思う。
誰もいない風呂で1人、厳選掛け流しの湯を肌に感じながら、朝の優しい風を浴びる。その爽快感たるや、夏の暑い日、汗だくになった体のまま冷たい川に飛び込むがごとし!ここが寝湯だったら、一瞬で寝てただろうな。
部屋に戻ると、ゆっくりする時間もなくすぐに宿の方が声をかけてくれたので食堂へ。
昨日私が入った部屋には既にスリッパが脱いであったので宿のおばちゃんに声をかけると、どうやら今日は隣の部屋らしく、そちらに通された。
その際「昨日はゆっくりできましたか?」と笑顔で聞かれたので「すんごくゆっくりできましたよ。温泉も最高でした」と返すと、少しばかりの雑談が始まった。
おば「そうですか、それは良かったです。うちのお湯は肩こりが治ったとか疲れがよく取れるということで、毎回来てくださる常連の方が多いんですよ。前に温泉の研究をされている方が来られてお湯を調べてもらったんですけど、そしたら日本では数える程しかないトリチウムが全く含まれない温泉だったみたいです。」
と嬉しそうに話すおばちゃん。トリチウムが全く入ってないということがどういう事なのかはわからないけど、そういう意味においては希少な温泉らしい。そう聞くと、あの滑らかでよく効きそうな湯が、更に効能のありそうなものに思えてくるから私も単純なものだ。さらにそのほかにも
・宿は創建316年
・実は去年の7月からインターネットで宿泊を受け付けるようになった。それまではあまり知られておらず、常連のリピーターばかりだった
・全国の温泉を回っている若い女性のお客さんが「ここが一番良い湯だった」と褒めてくれた
・あの浴槽の蓋は不便かもしれないが、あの厚みでないといけないらしい
と言っていた。話してる感じから、おばちゃんはこの宿と温泉をとても誇りに思っているようで、それが話し方と表情に表れていた。確かに、ここに一晩泊まっただけの私でもそれは納得できるものだ。それだけの豊かさがここにはある。しかし、去年の7月からインターネット予約を始めたというのは驚きだ。それ以降若いお客さんも来てくれるようになったと言っていたけど、温泉好きの人にこれからも長く愛される宿であってほしいもんだ。私もまた来たいし!
朝らしい、健康的で優しそうな朝食。これこそが美味しいのである!
おかずは冷たいということは昨日わかっているので、一切れの西京焼きや肉じゃがっぽい品も驚く事なく味わっていただけた。他のものも特別なところはないけど、スルッと喉を通る優しいお味。それに加えて
宿に投宿する老文豪さながらにゆっくり優雅に食を楽しんでも、まだ楽しみは用意されていた。それは
最近コーヒー消費量が増えた私にとっては嬉しい事この上ない。宿の雰囲気からコーヒーを用意してくれているとは思ってもみなかった。こちらもゆっくりと味わうことにいたしましょう。
黒い戸の向こうで、どうやら日本語を話せる外国人らしき人(恐らく旦那)が、なんだかピリついた声で奥さんに話しているけど私には関係ない。だってコーヒーが美味しいんだもの。というか、あのおじさん以外にも泊まってる人がいるのを初めて知ったぜ。奥さんは慣れているのか、流すように話していた。
たらふく食べた後の散歩は気持ち良し!でも風呂に入った直後でもないので結構寒いな。でも朝からこれだけの日が差してるんだから、出発するころにはカッパを着なくてもいいくらいにはなってそうかな。今日も良い1日になりそうである。しかし、やはりここらへんは生活の気配がしないな。
内湯に入ってないから湯に入ってもなんだか寒い!気持ちとしてはジワジワと温まっていってほしいとこだけど、そもそもがぬるいのでなんだかもどかしい。でも時間が経つと落ち着いてきて、やっぱりイイ気持ち。外の木の枝が「なんだか木の精の横顔に見えるなぁ」なんて思いながらしばらくここで楽しんだのだった。
ちなみに浴槽が狭いので、他に入浴客が来たりしたらちょっと気まずい感じになるかもしれない。貸切状態で入れてよかった。
その後やっぱり内湯で体を温めた後、チェックインギリギリまで地元テレビ局の番組を見たりしてダラダラ過ごし、10時5分前くらいに荷物を持って部屋を出た。ここは夏頃にまた来てみたいな。セミの声を効きながら窓際に座ってみたい。
さて、今日の宿までは昨日と同じくらいの距離だからそんなに急がなくてもよさそうかな。ここら辺の道は走っていて楽しいから、あんまり急がず、寄りたいとこにはちゃんと寄っていこう。ただ問題は今日最後の立ち寄りスポットに設定しているあの場所だが・・・、果たしてどうなるか。
というわけで期待と不安が入り混じる中、じんわり暖かい太陽を背に負って意気揚々と出発したのだった。
※ 数年前から気になっていて、今回ようやく泊まることができた三鳩楼さん。その建物も温泉も期待以上のもので、廊下の各所に置いてあるヒーターなんかは特に気配りの良さを感じました。
温泉もなんども入ったおかげか1日で肌がかなりしっとりしましたし、泉質の良さを感じます。それだけに先に書いた通り冷めた料理だけがとにかく勿体無い。そこだけ改善されれば個人的に満点です!周りも静かで環境がいいので、是非一度行ってみてください
ネギさん
こんにちは
正月明け早々の更新待ってました
長文読むのに20分かかりましたよ
(でもネギさんの文章は読みやすいのでどんどん読んでしまいます)
鳩の湯温泉 三鳩楼さんに泊まられたのですね
正直、先越されましたw
わたしもいつかは泊りたいとずっと泊りたいリストに入っているのですが
いかんせんネギさんのように原付もなくもっぱら徒歩のため行くのに躊躇してました
以前調べたのですが、バスがほとんどない状態なんですよね
夕食が冷めてるのはちょっといただけませんが(やっぱり暖かいものが食べたい)
それ以外の露天風呂、内風呂も良さげですね
露天風呂の温度が低いのでいくとしたら夏が気持ち良さそうですかね
記事を読んでわたしが泊るとしたら素泊まりかなと思いました
群馬では他に大胡温泉 旅館三山センターここに泊まりたいです
また更新されるのを待ってます
ましゅさんこんにちは、あけましておめでとうございます( ^ω^)
>以前調べたのですが、バスがほとんどない状態なんですよね
なるほど、確かに考えて見ればバスなんてあまり通ってなさそうな雰囲気・・・、すれ違った記憶もありません。店らしい店もないので観光目的で来るようなところでもなさそうですし、足がなかったらキツいですよね。
温かいご飯が食べたいというのももっともです。天ぷらとかが冷たいのは百歩譲ってわかる気もしますが、サバの味噌煮まで冷たいというのはただ面倒くさがってるだけなんでしょうか。そうなると、素泊まりでいいかってなっちゃいますよね。
>群馬では他に大胡温泉 旅館三山センターここに泊まりたいです
ここ、私も以前からチェックしているところなんですが、立地が(個人的に)微妙な位置なんでいつも後回しになっちゃうんですよね。面白そうなとこなんですが。
しかし三鳩楼さんといい、やっぱり気になるところは一緒ですね( ^ω^)
ちなみに私は富岡にある大島鉱泉が気になっていて今まで2回ほど予約の電話を入れましたがどちらも断られました。営業しているうちに早く泊まりに行きたいものです。
緊急事態宣言出るみたいですね。予約した旅館をキャンセルしたとこ(2回目)(T_T)で、こちらを覗いてみたら更新されてた!
ネギさんの旅行記は、自分も旅した気分になれるので楽しいです。立ち寄り先も楽しみ。私も道の駅大好きです^_^
三鳩楼知りませんでした。めちゃくちゃ良さそう!
ぬる湯大好きなんですよね。炭酸泉とのことですが、泡はつかないのかな?
Wi-Fiはなさそうですね。
料理が冷たいのは残念ですね…。家庭料理っぽくて魅力的なんだけど、うどんも冷たかったですか?
薬師温泉旅籠は温泉が循環て聞いたことがあります。
建物が豪華でも、選ばないなー。温泉は絶対源泉掛け流しがいいですね。三鳩楼さんで正解ですね。
3泊目も楽しみにしてます!
どうもまいらーさん、あけましておめでとうございます( ^ω^)
旅館のキャンセル、残念でしたね・・・。早くこのウイルス騒ぎが終わって欲しいものです。このせいで廃業してしまう宿が出てきていて残念でなりません。
長〜い当ブログの記事ですが、少しでも役に立てるように早めに記事にしていきたいと思いますッ。
>炭酸泉とのことですが、泡はつかないのかな?
正直入った時はそんなに気にしてなかったですが、泡が体につくようなシュワっと感はありませんでしたね。今まで入った中では田沢温泉の有乳湯と山梨の山口温泉がすごい泡つきでしたが、そこらと比べると炭酸は無いも同然な感じです。温泉そのものは最高ですけどねッ。
>Wi-Fiはなさそうですね
今の時代wifiがあるところしか泊まらないという人も珍しく無いようで、渋めな宿でも頑張って導入していってもらいたいところです。圏外の宿というのも私は好きですが。
>うどんも冷たかったですか?
ご飯とうどんは無事でした(笑)でもうどんに関してはアツアツというほどではありませんでしたが。どうにか改善してもらいたいですよね。勿体無いです。
>薬師温泉旅籠は温泉が循環て聞いたことがあります。
そうなんですか?それは確かに・・・、どんなに豪華でオシャレでも、泉質にこだわる人には果てしないマイナス要素ですからね。それを聞いて、なおさら三鳩楼さんで良かったと思いました。
宿の近くに「薬師温泉社員寮」なる建物がありましたが相当に規模の大きな宿なんでしょうね。今後泊まることがあるとしたら、鬼熊たちとの旅行くらいかもしれません。
ただいま3泊目執筆中です。しばらくお待ちを!
ネギさんあけましておめでとうございます。
ほんとは早々に読ませていただいて、感想をお伝えしようと書き込みをして、
最後に上記に表示された文字を~
で失敗して、文章が消えてしまってちょっと心が折れてしまいまして。
三鳩楼の温泉素敵でしたぁ
建物の造りも好きです!まさにあの窓!腰掛けたい・・・
炭酸泉好きなので浸かってみたいです。
ほんとゆっくり温泉・・・浸かりたいです。
行ってみたいところばかりで迷う!!
高橋の若どりは今度月夜野方面に行くことがあったら
絶対寄りたいです!
なんか小さいころ食べたことあるような記憶もあるのですが
今度両親に聞いてみます。
私が群馬で行きたい温泉は去年赤城山を歩いた後メインの道ではなく
もう一本の細いくねくね道を通った時に赤城温泉に遭遇して、
わぁぁ入りたい!!と思ったのですが、県外の温泉は自粛しようとなって
コロナが落ち着いたら、また赤城山登って、とうもろこしを買って、赤城温泉に
入るコースを完了したいと思ってます。
十六夜さん、あけましておめでとうございます( ^ω^)
>ほんとは早々に読ませていただいて〜
そうだったんですか、文章が消えてしまうのはちょっとよろしくない仕様ですね。すいませんでした。。そんな中もう一回コメントしてもらえて嬉しいです。
>三鳩楼の温泉
あの窓の造り、いいですよねぇ。個人的にああいう古びた宿の楽しみの一つとして、そこに泊まってる自分に酔うというのがあるので、そういう点ではあの窓は十分酔える場所でした(なんか変な表現ですが)。物語の登場人物になった気分というか。まぁただの妄想ですね。
あそこなら本当にゆっくり温泉に入れると思いますよ。泉質もいいですが、炭酸泉好きならちょっとその点では残念に思ってしまうかもしれません(笑)でも是非行ってみて欲しいです。
>高橋の若どり
以前おばあちゃん家に行くために毎年みなかみに行っていたとコメントで書かれてましたよね。だったら昔寄られていても不思議じゃないですが、ともあれ結構美味しかったので寄ってみてほしいです。
もしかしたら「あ、あの味だ!」ってなるのかもしれませんね。私も次に近くを通ったら確実にまた寄ることでしょう。
しかし関係ないですが記事中に「地元では月夜野のケンタッキーと呼ばれているらしい」とかなんとか書きましたが本当にそんなふうに呼ばれてるんですかね。ネットでそういう記事を見たのでそのまま書いてしまいましたが。気になるところです。
>私が群馬で行きたい温泉〜
赤城山を歩いたあとの温泉、十六夜さんも凄く入りたかったでしょうに・・・。しかし、素晴らしい判断だと思います。
赤城温泉は私も入りたくてチェックはしてるんですが、なかなかあそこに行く機会がないんですよね。二年前くらいに赤城山の山上湖あたりで催される夏祭りでも見に行こうか迷ったんですが、結局行かずじまいでした。
赤城山に登るルートっていくつかありそうですがどうなんでしょうか。私はケーブルカー(だっけ?)の廃線跡が気になってますが、あそこも登山道なんでしょうか。
リベンジの際にはまたYAMAPの投稿をお願いします(笑)