[長野] 木曽の山に抱かれた、温泉と薬湯を両方楽しめる綺麗宿 温もりの宿駒の湯 [木曽]

長野

夏休み旅行記事の連載途中ですが、この間旅行に行ってきたのでその時の記事を忘れないうちに書いていこうと思います。 [2日目]

宿に着いたところから読みたい方はこちら

以前から10月は鬼熊とツゲの3人で二泊三日の旅行に行こうと計画していたんだけど、のっぴきならない用事が入ったということでツゲは旅行に行けず、結果鬼熊と2人で長野旅行へ行くことに。しかも最終日は鬼熊の仕事の都合で19時までには帰りたいということで、なんだか良くない予感がしながらも折角休みを取ったんだからと旅行計画を遂行したのだった。

当日は朝8時ごろに鬼熊に迎えに来てもらい、彼の運転で高速に乗って長野へ。天気は曇りのち雨というパッとしない天気だったけど、それでも友人と行く旅行はやっぱり楽しい。色々と話をしつつ、いつも原付で旅行をしている私は「高速ってやっぱり便利だよなぁ」なんて思いながらビュンビュンと過ぎ行く山の緑を見ていた。

話をしているとあっという間に長野についていて、さすがに車移動の速さを実感させられた。時間は昼ごろで、ちょっと今日の予定を切り詰めなければならないけどまだ余裕のある時間だ。
高速を諏訪あたりで降りて、まずは一つ目のポイントを目指す。それは2年前に入った菅野温泉と同様、民家の路地にある大和温泉なる共同浴場だ。ここは2年前に行きたかった場所だけど時間の都合で行けなかった温泉で、かなり雰囲気(生活感)のある入り口が気に入って一度入ってみたかったのだ。

とりあえずナビに大和温泉は出てくるので場所は問題なくわかる。後は駐車場があるかどうかという問題があったけど、なんとか駐車できる場所を見つけて小雨が降る中大和温泉へと向かった。

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あの奥の萌黄色の建物は地元民専用だったはず

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上の写真の「駐車禁止」の看板の脇の道に温泉はあった

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不安そうな鬼熊

なんだか水色に塗られたドアが鄙びた共同浴場に見合わぬポップさを放っていて面白い。一体この中にはどういう世界が広がっているのか。「よくこんなとこ見つけてくるなぁ」と言う鬼熊を背にドアに手をかける私だが、どうしたことかドアがビクともしない。「開かない!」と焦りを露わにする私を尻目に、鬼熊は男湯と女湯の間に掲げられている木製の看板を見ていた。

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ん?加盟者以外の以外の入浴お断り?

これはどういうことか。私が仕入れた情報では、大和温泉は外来者も入浴できたはず。つい最近外来者の入浴はお断りになったのか?しかもドアが開かないのは掃除中だから?まさかの事態に頭の中に「?」マークが乱舞した。
「もしや、大和温泉はさっきの萌黄色の建物の方か?」と思いつつも、あそこが地元民専用と言うことはわかりきっている。しかしすぐ近くなので行ってみると

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やっぱり地元民専用でした

この建物は味があって非常に素晴らしいんだけど、今はそれよりも目当ての温泉に入れない悲しみが私を襲っていた。「おかしいな〜、どうしてだろう」と言う私に対して「まぁ入れないならしょうがないわ」と潔く諦めた鬼熊と共に、私は相変わらず頭に「?」を浮かべたまま車に乗り込んだ。
(帰ってから調べてみたところ、ここは昔から地元民専用で大和温泉という名ではなく、私が目当てにしていた大和温泉はここから近い別のところにあったようです。そう思い返してみると、私が大和温泉に入りたくなった原因の大和温泉の鄙びた入り口周りがこことは全然違っていた。一体どうして気づかなかったんだろう…)

私も鬼熊も温泉に入るつもり満々だったので、このままでは引き下がれないと2年前に入った菅野温泉に行くことにした。私はどういう場所かわかってるけど、初めての鬼熊は驚きと共にきっと気に入ってくれるだろうと思っての選択だ。

ここから菅野温泉までは大して離れているわけではないのですぐに到着。駐車場が心配だったけど、すぐそばに駐車場があったので無事に駐めることができた。この駐車場は菅野温泉へと道が繋がっていたのでちょっと便利だった。

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駐車場には道を示す看板があったのでわかりやすかった

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前はこの左側に原付を駐めたっけ

菅野温泉がある路地の雰囲気は鬼熊も気にいったようで、スマホでバシャバシャと写真をとっていた。そりゃそうだ、こんな味わい深い場所にある温泉を気に入らないわけがない、と一人ほくそ笑みながら引き戸を開けて中へ。さっき味わわされた温泉に入れない悔しさを洗い流すためにさっさと温泉へ向かった。

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なんも変わってなくて嬉しい

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たかが2年前だけど懐かしく感じる

さすがに先客はいたけど浴槽も浴室も広いので問題なく足を伸ばして入ることができた。鬼熊も「ぐあ〜」と顔を少し歪めながら温泉に浸かっている(別に熱いわけではなく、気持ち良さからだろう)。私も鬼熊同様に温泉に入ったが「あれ、前はもっと熱かったような?」と思うほど湯は適温だった。まぁ2年前に記憶なんてあんまりあてになんないけど、とにかく入りやすい温度だったのでかなり気持ち良かった。温泉も建物内の雰囲気も全てひっくるめて、やっぱりここは素晴らしいと再認識した次第だった。

「先にあがってるよ」と脱衣所に戻っていった鬼熊から少し遅れて私もあがり、休憩処で一休み。時間的に少し切羽詰まった感じになってきたけど、まだもう一箇所くらいは観光できそうだ。まぁそんなに焦ってもつまらないけど、ある程度休んでから番台前にある自販機でコーヒー牛乳を買って一気飲みしてから次の場所へと向かった。

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番台のおばちゃんは前と一緒の人だった

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くつろぐ鬼熊

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菅野温泉目の前の休憩所より

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張り紙

ここからは中山道を走って宿の方向に向かうのみ。その途中寄れる時間があったら宿場町に寄るくらいの計画だ。とりあえず少し走ったところにあった道の駅小阪田公園なるところでトキという品種のリンゴが沢山入った袋(400円)を購入し奈良井宿へ向かう。鬼熊は菅野温泉を出てから眠気と戦いつつ運転していた。

鬼熊いわく「代わり映えしないから眠くなる道」を頑張って走り、3時過ぎくらいには奈良井宿に到着した。車の免許がない私は「ありがとう鬼熊…」とただただ感謝するのみだった。
さて、実はここ奈良井宿は私がまだ大学生の頃に、このブログでもたまに出てくる友人と原付で来たことがある場所だ。その時は真夏の青空が広がる中この奈良井宿で2泊したんだけど、今日は残念ながら完全な雨の天気。晴れた奈良井宿はとても綺麗なところなだけに、それを鬼熊に見せることができなくて残念だけど、とりあえず久しぶりに奈良井宿に来たい、そしてここにある杉の森酒造で酒を買いたいという私の個人的な願望のためだけに寄ってもらったのだった。

そんな私の思惑なんてつゆ知らず「漏れそう漏れそうッ」と駐車場にあった公衆トイレに鬼熊は吸い込まれていった。

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鬼熊のトイレを待つ私

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雨だから観光客もほとんどいない

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ここも前回来た時からあった。こんなとこに住んでみたい

トイレからでてきた鬼熊を出迎えてから奈良井宿の街散策へ出発した。雨の日で薄暗いという条件も中々風情があって良いもんだけど、雨で観光客がほとんどいないからか開いている店もかなり少ない感じ。雨の音だけが響いている奈良井宿は寂しげだけど良い味わいを醸し出していた。

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奈良井宿に三つか四つくらいある水飲み場の一つ。一人旅なら水を汲んでいたところだ

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7割くらい店がやっていない

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古民家に昭和レトロのミックスは最高の相性だ

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寒さに耐える鬼熊

鬼熊には奈良井宿がどんなところか全く伝えずに来たんだけど、雨の中にもかかわらず結構楽しんでくれてるようだった。「すごいな〜」と言いながらバシャバシャと写真を撮っている鬼熊に私もなんとなくほっとする。
ちなみに上の写真で車が通ってるけど、街の中を通れるのは住民の車だけなので注意。

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やっぱりこの町並みは凄い

同じ中山道の宿場町である妻籠宿もこんな感じの町並みだけど、私は個人的にこの奈良井宿の方が好きだ。こちらの方が道幅も広くて空が良く見渡せるし、妻籠宿よりも商売っ気がない感じ、そして住民が実際にここで暮している生活感のようなものが感じられて居心地が良いと感じる。
前にここに来た時に寄った土産屋のおばちゃんが「あそこ(妻籠宿)とは違って、ここは実際に人が住んでいる家でお店をやっている」と若干の敵意を覗かせながら話していた。まぁ妻籠宿でも自分の家で商売をしているという店はあるだろうけど、おばちゃんの言うとおりここはそんな暮らしの匂いが感じられるのだ。それは今回も変わっていなかった。

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煙草の木製看板が渋い

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濡れないように軒下を歩いていく

途中街の真ん中にある水飲み場で水を一杯。鬼熊が「なんか水が濁ってるぞ」と言う通り雨のせいで少し濁っていたけど美味しい水でした。この水汲み場には「この水は飲めます」的な札がかかっていたけど、前来た時には確実にこれはなく、むしろ「飲めません」的なことが書いてあったはず。だから前の時は、さっき話したおばちゃんに「あの水飲めないの?」と聞いたら「私たちは毎日飲んでる」と言ったのをよく覚えている。いつの間にか万人が飲める水になったようだ。(写真は大ブレしたのでありません)

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薄暗い中に灯籠が灯っている光景が幻想的

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御櫛所と書かれた家を見て櫛が売っているのかと気になっている鬼熊。「ここは資料館だよ」と伝えると残念そうにしていた

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街の奥の方にある漆器店で土産を探す

この漆器店で箸を購入(100円)して折り返すことに。途中目当ての杉の森酒造の前を通ったけど店は閉まっていたので、この漆器店の近くで開いていた酒屋で土産の酒と宿で飲む酒を購入する。宿のおじさんは良い人で、色々と教えてくれながら美味しい酒を勧めてくれた。そんな中杉の森酒造のことを聞くと「杉の森さんはもうやってないんですよ」と残念な答えを返してくれた。何年か前に酒造りをやめて店じまいしてしまったそうで、当然もうここでも杉の森酒造の酒は置いてないということだった。

「あの時酒を買っていれば…」と前回来た時に杉の森酒造で酒を買わなかったことを後悔したけどそれももう後の祭り。しょうがないので、他に木曽で有名な酒造の酒を買って店を後にした。鬼熊はなぜかウイスキーを買っていた。

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土産を手に歩く鬼熊

案外長居してしまったようで時間は4時30になろうとしていた。宿のチェックインは一応4時ということにしておいたので、とりあえず車に戻ってから宿へ電話して、チェックインがもう少し遅れることを伝えてそのまま宿へ直行した。途中ナビ役の私が寝てしまってUターンする羽目になったりしたけど、なんとか5時30前くらいには宿に到着。雨が凄くて暗かったから写真はないけど、思った以上に山深いところにある宿だった。暗い山道に急に明るい宿の灯りが見えた時は、何か隠れ里に来たような気分になった。

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到着!

雨の中荷物を持って急いで宿の中へ入ると仲居さんがとても丁寧に対応してくれた。「遅くなってすいません」というと「大丈夫ですよ。ようこそいらっしゃいました」と可愛らしい笑顔を向けてくれたのが印象的だった。
宿はHPを見て想像していたよりずっと綺麗でひとまず安心。なぜなら今回の宿はいつも古びた宿とかばっかに泊まらせては申し訳ないと思い、普段は私が泊まらないような綺麗目な宿を鬼熊のためにチョイスしたので、実際に期待以上に綺麗だったことに安心したのだった。

とりあえずロビーで宿帳に記載した後、大女将らしきおばあちゃんが部屋に案内してくれた。この宿は旧館か新館かで値段が違うんだけど、今回は一番安い旧館を選択。それでも十分綺麗で広さもある部屋だった。

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十分綺麗じゃないのっ

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掃除もしっかりしてある!

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最近知ったけどこのエリアは広縁というらしい。水の入ったボトル入りの冷蔵庫もあった

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窓からの眺め

部屋に入ったら「ついた〜」と今にも倒れこみそうな鬼熊だったけど、とりあえず大女将(?)が入れてくれたお茶をいただく。ちょっとした雑談をした後「浴衣はもうちょっと大きい方が良いですね」と用意されているより大きめの浴衣を持ってきてくれた。宿の値段としては10000円ちょいくらいだけど、ここは宿の綺麗さも従業員の接客もとても気持ち良い。とても良い宿のような気がした。鬼熊も「いいとこだね〜」と満足そうで嬉しい。

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机の上

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アメニティは必要最低限全てあると思いきや

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さらに綿棒、櫛、髭そりまでついていた。嬉しい!

やっぱり一泊一万円を超えてくるとサービスや施設の充実度は違ってくるようだ(完全に宿によるけど)と感心してしまった。
鬼熊は某高級旅館で働いてるけど、変に上から目線で批判したり判断したりせずに楽しめる人だからこの宿も素直に楽しめているし、他にも温泉や食事を楽しみにしているようだった。ちなみに夕食の時間は選択式だったので19時にしておいた。

ということでまだ食事までは1時間以上あるので、私は宿内を散策しながら温泉へ、鬼熊は部屋でのんびりということに。私は浴衣をもって楽しみにしていた温泉へ向かった。

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廊下。旧館だけあって古びてはいるけど、全然許容範囲内だ

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今回泊まった部屋の真ん前はトイレだった

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十分に綺麗だ

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一階へ降りる階段。この宿はランプの宿とも呼ばれているようでランプがちょくちょく目に付く。ちなみに部屋の広縁にもあった

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二階に着いたら出迎えてくれる謎の絵画

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一階ロビーの休憩所より。館内はちょっとだけ寒かった

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奥には売店とギャラリーがあり、土産も地元のものをよく置いていた

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休憩所横

休憩所に座っていると、案外他に客がいることに気づいた。温泉からあがってきた宿泊客や日帰り入浴に来る人たち。更には宿泊客として、この雨の中山登りをしてきたらしき外国人の集団が来たりしていた。この日は平日なのにこれだけ客がいるということは、ここはやはり人気がある宿なんだろう。それも頷ける話だ。

それから少し休憩した後温泉へ。温泉へは売店やギャラリーを更に奥に行くと到着した。

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売店奥からのロビー

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この奥に行くと浴場だ。障子の向こうはいろりとろばたの食堂らしい

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奥が浴場

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浴場手前には冷水も置いてあって嬉しい

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実際はこんな暗くありません

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脱衣所の前が畳部屋なのはちょっと新鮮

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広い脱衣所

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分析書

脱衣所はそれなりに広くて、ちゃんと扇風機とドライヤーもあった。まあ正直もうちょっとバスマットがあったりしてくれたらと思いもしたけど、ちゃんと拭いてでてくれば問題ないことだ。

脱衣所にはさっき日帰り入浴でお金を払っていた親子二人がこれから温泉へ向かうところだった。脱衣所前のスリッパも割とあったのでちょっと混んでるのか?と思ったけど、籠の様子を見てみるとあまり入ってる人はいなさそう。まぁ貸切じゃなくても十分楽しめそうなので、私も服を脱いでさっさと浴場へ向かった。(以下の写真は翌日撮ったものです)

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お、木がふんだんに使われている良い浴場じゃないか

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ソープ類もしっかりある。シャワーもこれの他に2機か3機くらいあった

浴場へ入ってみると、温泉の匂いよりもむしろヒノキの良い匂いがムアっと香ってきた。ここで使われてる木材は全部ヒノキなのかどうかはわからないけど、とにかくヒノキの心地よい香りが浴場全体に漂っている。疲れた体にはこういう優しい木の香りが本当に効くもんだ。私は更に温泉への期待を膨らませながらさっさと体を洗って入湯した。
ここの温泉はHPによると「炭酸水素塩泉 中性低張性冷鉱泉 カルシウム泉」ということらしいけど、特に匂いや味なんかはしなかった。けれども浴感はなんだかふわっとしていて、体にじんわりしみこむような優しい感覚だった。温度も適温で、今日の疲れが一気に取れていくのを感じる。塩素消毒に加え加水循環はしているというけど、塩素の匂いもしないしここの温泉はなかなか良いんじゃなかろうか。肌も若干スベっとする感じがして気持ち良かった。

そんな感じで内湯を楽しんだらのぼせる前に露天にいこうと湯からあがる。ここには小さいながらもちゃんと露天があるのだ。しかも露天の湯は温泉ではなく薬草風呂。これは楽しみだ。

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こじんまりとしているけど良い露天風呂

露天へのドアをあけると、今度は内湯のヒノキの匂いとはうってかわっていかにも薬草っぽい(?)匂いが立ち上っていた。まぁ薬草の匂いというのもよく知らないんだけど、なんか漢方とかにありそうな不思議な濃いめの匂いが露天から香っていた。この駒の湯は温泉と薬草風呂の二つが楽しめるという事を一つの売りにしているんだけど、これは確かになにがしかの効果が期待できそうな匂いだ。

さっそく入ってみると、湯に特徴的なものは感じないものの、やはり薬草の匂いがよく感じられる。でもこの匂いも決して嫌な匂いじゃないので、露天で星でも眺めながら浸かるには非常に良い塩梅の風呂だった。景色はというと特に見晴らしが良いというわけでもないのでそういうのを楽しみにしてくるとガッカリするだろうけど、雨のそぼ降る中、なんか効能のありそうな薬草風呂に浸かるっていうのも良いもんだと思った。
ちなみにこの薬草風呂は湯貴という商品名で売店でも売られてたけど、ちょっと高かったのでやめておいた。

温泉から上がって体を拭いていると肌が結構ツルツルしているのを感じた。温泉と薬草風呂に入ったからどっちの効能なのかはわからないけど、確かに肌への良い効果はあるようだ。しかもここはほとんど24時間温泉に入れる(確か朝の8時30から10時くらいまでは入れなかったはず)ので「今日は入りまくってやるぜ」と心に決めて部屋へと戻った。

部屋に戻ると鬼熊は鼻にティッシュを詰め込んでクシャミを連発しながらスマホで何かやっていた。彼曰く「春に着てから洗ってないダウンベストに花粉がついていて、それを着てきたせいでクシャミがとまらなくなった」そうで、他に人がいないことをいいことにでかいクシャミを連発している。私はというと彼のクシャミは慣れっこなので「かわいそうに」と思いながらも次の日の宿を決めため鬼熊に判断を仰いだ(二日目に泊まりたい宿がいくつかあって決めかねていたので、この時点ではまだ翌日の宿は決まっていなかった)。

候補は三つ。長野にある温泉宿か山梨の古民家宿、そして群馬の鉱泉宿のいずれかだ。鬼熊にそれぞれの特徴を話したら、彼は「山梨の宿がいい!」ということだったのでまずはそこに電話するも「団体さんが来るので満室です」ということで断られ、次いで長野の温泉宿も「満室です」と言われ、群馬の宿も同じ理由で断られてしまった。

正直山梨と群馬の宿は前日でも余裕で予約できると思っていたので断られた事にちょっと驚いてしまった。二つともHPもない宿だし、どちらも結構鄙びていて有名な宿でもない。こういうところは経験上前日でも余裕で泊まれていたので、意外な結果に驚きを隠せなかった。しかもそうこうしているうちに夕食の時間になってしまったので、宿がとれない状態のまま食堂へ行く事になってしまった。まぁこうなってはしょうがない。夕食が終わってから心当たりのある宿に連絡してみようと思い直して部屋をでた。

食堂は一階の浴場へ続く廊下を左に曲がるとあった。中では既に何組か食事をしていて、私たちは少し遅めの夕食だったようだ。

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食堂の入り口側

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畳に椅子とテーブルというのがなんだか良い旅館っぽい雰囲気

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反対側

仲居さんが笑顔でテーブルに案内してくれるとそこにはちょこんと前菜が。どうやらここの夕食はコース式のようだ。私は正直自分のペースで好きなものを好きに食べられないコースというのはまどろっこしくてあまり得意ではないんだけど、でもたまにはこういうのも悪くない。ゆっくりとお喋りでもしながら食べるにはコース料理というのは向いている。「これはこれで楽しもう。いや、でもそれじゃあ最後まで食べ終えるのにはどのくらいかかるんだ?」と宿の予約をしたい私はちょっぴり焦りつつも、すぐいつものように「まぁいいか」と思い直して早速夕食をいただく事にした。ちなみに鬼熊はジョッキでビールを頼んでいた。

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まずは前菜から

先にスプーン付きの細長いコップに入ったとうもろこしのなんちゃら(忘れてしまった)を食べていた鬼熊は「こりゃうまいね!」と絶賛。私も続いて食べてみるとこれがまた鬼熊の言うとおりかなり美味しいものだった。デザートで出てきてもおかしくないくらい甘くて美味しいこの料理が、既にこの駒の湯の夕食のレベルを物語っているようだった。いちいち全部説明してると長くなりすぎるからやめておくけど、前菜その全てが文句なしに美味しかった。

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続いて茶碗蒸しと、良い感じに出来上がった豚肉の味噌陶板焼き

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そして信州サーモンのサラダ

私も鬼熊も「うまいうまい」と言いながらパクパク食べていく。特に陶板焼きの味噌は甘めでかなり美味しく、無性に白米が食べたくなってしまった私たちだけど白米は出てこなかった。しかしそれでも不満はない。今んところ全部の料理が美味しいのだから。あと料理が出てくるスピードもそんなに遅くなかったのでそれも私的には助かった。

サーモンのサラダを食べたあたりでどうやら酒を飲みたくなってきた鬼熊が「よし、日本酒飲むぞ」と仲居さんに木曽の酒お試し三点セット(名前は適当)を頼みだした。やはり酒飲みはうまい飯を食うと良い酒を無性に飲みたくなるようだ。酒が運ばれてくると彼は歓喜していた。

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嬉しさのあまり写真を撮る鬼熊

その後も続々と品が運ばれてくる。鬼熊との会話も弾み、後ろでは外国人客達が楽しそうに談笑中だ。鬼熊が頼んだ酒もどれも美味しいようで、その中の一つを飲ませてもらったけど普段酒を飲まない私でも美味しいと思うものだった。

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続いて運ばれてきたのは木曽の郷土料理だという品(名前は忘れた)。あっさりしていておいしい

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そして牛肉のせいろ蒸し。私はこれが一番おいしかった。追加注文したいと思ったほどに

これの間にナス料理が出てきたけど撮り忘れ、更にせいろ蒸しの後にご飯と味噌汁(これはいるかいらないか聞かれた)が来たけどこれも撮り忘れてしまった。このご飯に最初にあった陶板焼きの味噌を乗せて食べている鬼熊を見て自分もやってみたら凄く美味しかったからオススメ。鬼熊も凄いスピードでご飯を完食していた。

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その後に出てきたのはソバ。腰が強めの田舎蕎麦でこれもまた良いお味

このソバを食べたところでお腹もパンパンの満腹とはいかないまでも腹八分目といったところで丁度良い感じになった。まさか一万ちょいの宿でこんな美味しい飯が食べられるとは思ってなかったので私も鬼熊も大満足だ。更にこの後に仲居さんがきて「デザートはバニラアイスとほうじ茶のパンナコッタ、どちらがよろしいですか?
」と聞いてきたので二人とも迷わずパンナコッタを頼んだ。それがこれ。

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これがまぁおいしいこと…

鬼熊は「これもうまいけど前菜で出てきたとうもろこしのヤツがデザートでもいいよね」と言うほどあの品を気に入っていたようで私もそれは同意だけど、このパンナコッタも相当うまいので二人してウマウマ言っていた。結局バクバク食べていたもんだから先に食べていた外国人達とほぼ同じくらいに食べ終え、結局夕食が終わったのは20時ごろ。普段ではありえない一時間もの時間をかけての食事になったのだった。大変美味しゅうございました。

部屋へ戻る時「あの温泉の手前にある食堂は誰が食べるとこなんだろう」と言っていた鬼熊。上の方で写真にも写っているけど、浴場へ行く手前に「いろりろばた」と書かれた食堂があって、でも私たちが夕食を食べた食堂はまた別のところだった。「多分新館に泊まった人とかが食べに行くんでしょ」と答えておいたけど、あそこではどんな料理が食べられるのか、凄く気になる私と鬼熊だった。

鬼熊は「温泉行ってくる」ということで行ってしまったので、私はそこら辺を少しブラブラ(というほど広くもないけど)してから部屋へ。ロビーにはこんなスペースもある駒の湯だ。

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駒の湯文庫なる休憩室。コーヒーなどを飲んだりしながら漫画や雑誌が読める素晴らしい場所

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漫画が非常に充実している

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小説も割とあった

結局ここを使う機会はなかったんだけど、夏なんかに釣り目的で連泊してこういうとこでゆっくりするのも良いなぁと思ったりした。こういう素敵な場所を用意してくれたりもする私の駒の湯への印象はうなぎのぼりであった。

その後部屋に戻ってのんびりしてたら鬼熊が「良い温泉であった」と言って帰ってきたので、明日の宿の件を協議した結果、明日宿が取れたらそこに泊まり、取れなかったら帰ろう、ということに落ち着いた。泊まりたい宿はいくつかあったけど、その中でも一番泊まりたい宿、去年の佐渡の帰りに泊まろうと思ったけど保留にしていた宿に電話してそこがダメだったらおとなしく帰ろうと決めた。

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部屋に戻ったら布団が密着して並べられていた。それを見た鬼熊は「俺たちはゲイだと思われている」と悲しんでいた

そうと決まったら後は楽しむだけなので、その後は何度か温泉に入ったり鬼熊と買った酒を飲んだり、海外の猫を追ったドキュメンタリー番組(鬼熊は猫好き)を見たりして就寝した。

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10時を過ぎたらさすがに売店も駒の湯文庫も閉まっていた。宿内はすっかり寒くなっていたので、このストーブがありがたい

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未だに花粉に苦しむ鬼熊

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それでは、おやすみなさい

朝は8時から朝食だったのでその前に起きてまず温泉へ。外は小雨が降ってたけど昨日は見られなかった露天の風景(といっても大したものじゃないけど)を楽しんだけど、昨日より薬草の匂いがしなかったのは湯の循環による影響だろうか。まぁそれでも気持ち良く温泉に入ってから、その後私の後に温泉に行った鬼熊と「食堂で会おう」と約束して、時間になったら食堂へ向かった。

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朝の休憩所より

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ストーブの温もりがありがたい

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そして朝食

朝食には私の好きな温泉卵もあったのでそれだけで大満足。その他も全体的に美味しかったので何も言うことなしだった。ちなみに鍋はあっさりした野菜メインの鍋だった。
食後はコーヒーが飲み放題なので鬼熊と一杯ずつ飲んだ後部屋へ。とりあえずすぐに出発する必要もないので、鬼熊は二度寝したりして9時30くらいに宿を出ることにした。
仲居さんはやっぱり丁寧に送ってくれて、では出発するかというところで鬼熊が「宿の裏に池があるみたいだから見に行こう」と提案してきたので出発前にちょっとした散歩をすることになった。

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昨日はわからなかったけど宿の脇には川が流れていた。木々も少しだけ紅葉を始めている

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駒の湯の側面。昨日大女将に聞いたところによると、この宿は綺麗ながらも結構昔からやってる宿みたいだった。それを物語る古めかしさだけど、これがとてもいい味をだしている

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乾燥室?イイ雰囲気だ

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これが新館部分だろうか

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ちょっと行くと薬師如来が祀られているお堂が

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宿の裏手

これより上に行ったところで確かに池があったけど、思っていたような綺麗な池ではなかったので特に写真には撮らなかった。鬼熊も「えっ」と想像と違うぞみたいなリアクションをしていた。ただ夏の初めごろには蛍が舞う池のようで、水自体も決して汚くはなかったので蛍の時期に来るのもいいかもしれない。

その後駐車場まで戻り、駐車場から行ける晴れていれば御岳山が拝めるという展望台に登ってみたものの、曇りだから当然見ることはできず、というか山に囲まれているので「これ晴れてても見えないんじゃないか?」っていう感じで、しかも展望台と呼ばれる場所は完全の野っ原だった。

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ここから行く

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名古屋大学山岳部(?)の山小屋なるものがあった

とまぁそんな感じで散歩も終わったのでいよいよ出発。仲居さんもまた外に出てきて送ってくれて、最後まで丁寧な宿だった。今日はまた雨予報だけど、なんとか降らないことを祈るばかりだった。

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また来ます


※今回泊まった駒の湯は普段私が泊まらないような宿だけに色々な発見がある宿でした。従業員の人たちのおもてなしの心や、駒の湯文庫を初めとするお客さんにゆっくりしてもらおうというサービス精神はとても居心地の良いものでした。おまけにご飯も美味しく温泉もあるのだから、普段安い宿に泊まっている私にとっては何も言うことはない満足のいく宿でした。旧館でも全く不便や不潔なところはないのでオススメです。

ぬくもりの宿 駒の湯 : 一泊二食付き 10410円
公式サイト

  1. Trip-Partner スカウトチーム より:

    平素より楽しくブログを拝見させていただいております。 弊社はTrip-Partner(https://trip-partner.jp/ )という新しい旅行情報メディアを運営しております。 この度、海外旅行情報のみではなく日本国内情報の記事を扱いたいと思っております。 是非貴方のような内容に富んだ読者にとってためになる記事を弊社のサイトに投稿して頂きたいと思いまして、ご連絡差し上げました。 報酬としては3000文字程度で3000円を考えております。 もしご興味ございましたら範國(ノリクニ)宛(japan-director@trip-partner.jp)にメールを頂くことは叶いますでしょうか? その際メールにブログのURLを記載いただければ幸いです。 何卒宜しくお願い致します。