二日目は夏らしい青空が広がりまさに旅行日和。出発前にすりばり荘さんの主人と長野へ出る道の事などを聞いた後すぐに出発です。どうやら十国峠なる峠を越えて佐久穂に出るのが良いとのことなのでそのルートで長野へ侵入を試みます。
テント等をつんだ原付での峠越えは多少心配でしたが自転車乗りの人もよくこの峠を越えるらしく全く問題ないとのこと。信じて進むと路面は多少凸凹ですが気持ちの良い峠道です。頂上には展望台があり、素晴らしい眺めを見ながら休憩した後峠を下り長野の佐久穂町へ向かいました。この十国峠をおりてゆくと次第に民家が見え始め、佐久穂市街まで長閑な田舎の集落といった景観が広がりすっかりこの道が気に入ってしまいました。
その後 r141にぶつかると一気に交通量が増加します。このまま車の流れに乗って上田市まで向かいました。
上田に到着しとりあえず昼飯をと思いましたが多少時間をずらして空いてからにしようと思い、まずは上田城へ。上田市はかの有名な真田幸村を始めとする真田家ゆかりの寺社や史跡が所々にあり、それらを観光の呼び物としています。上田城もそのうちの一つで、上田城に到着し原付をとめて門へ向かうと、やはり真田家推しの町らしく橋の前に真田幸村のコスプレをした観光案内人のような人が色々とアピールをしながら観光客と写真を撮ったりしていました。門をくぐると神社があったり櫓のような建物もあったりするのですが、思ったより見る場所は少なく早々に見終えて後昼食を求めて駅前へ向かいました。
前日に上田の食事処を調べ、鯉西という鯉料理の店で昼食をとりたかったのですが残念ながら定休日だったため、駅をでてすぐ横にある上田からあげセンターへ。おなかがすいていたのでからあげ定食の大を頼むと思ったより多量のからあげがでてきました。大きめな胸肉4つともも肉3つにキャベツの千切り+ご飯と味噌汁という内容なのですが、からあげの味も濃い目でジューシーでとても美味しかったです。席に置いてあって自由にたべられるガリもやしというのも揚げ物との相性もよく大変気が利いてました。
食後にスマホで色々と観光場所を調べたのですがあまりそそられる場所もなく、とりあえず柳町という昔ながらの雰囲気を残した通りへ向かい(ただ通っただけで終わりました)、上田市で楽しみにしていたオシャレ本屋「nabo」に向かうもこちらも定休日。非常に楽しみにしていたためがっくりきましたが、気を取り直して別所温泉へ向かうことに。
途中「生島足島神社(いくしまたるしまじんじゃ)」へ寄って御朱印を貰ってのんびり神社散策をした後、そのまま別所温泉へ。上田城などがある場所とは反対に別所温泉はあるのですが、そこまでの道のりは田んぼが多く視界の開けた道で、稲の匂いを嗅ぎながらの気持ちの良い道でした。
そんなこんなで別所温泉に到着。
この道を右に進むと次第に古そうな建物が見え始め、温泉街らしさがでてきます。お盆をはずした時期とはいえ有名な温泉地なので道にはちらほら浴衣で出歩いている人たちも見えます。温泉街を散策したい所ですが、とりあえず「木造八角三重塔」を見学に向かいました。ここで既に時間は4時少し前。今日の宿のチェックイン時間もあるので早々に三重塔へ向かいます。
拝観料300円を支払い三重塔を見学。なんとも重厚な造りで歴史を感じさせますが、こういった建造物に詳しければもっと色々と楽しめただろうなと少し残念な気持ちもありました。ちなみにここでカップルが自撮り棒で思い出写真を撮ってました。
あまり時間もないので足早で見学した後は温泉街を流れる川の横に原付を駐めて少し温泉街を散策することに。
全てを見たわけではありませんが、入り組んだような道や路地、宿や共同浴場の連なりがこの別所温泉の雰囲気を非常に良いものにしてると思います。お土産屋さんは閑古鳥でしたが。
別所温泉の共同浴場に浸かりたかったのですがもう時間もないので、すぐに今日の宿泊地である田沢温泉へ向かいます。
途中物産所やコンビニに寄って夜食のおやつを買い、程なくして田沢温泉に到着しました。
田沢温泉入口にあるバス停。こんなところでバスを待ちたいものです。
映画「卓球温泉」の舞台となったますや旅館。温泉街の中でも随一の素晴らしい建物。
田沢温泉は小さいので散策もすぐに終わりますがとても趣のある温泉街です。もう一目でここが気に入ってしまいました。
とりあえずチェックインしようと、国民宿舎富士と思われる建物へ向かいました。事前に調べた結果、田沢温泉にある富士屋ホテルが国民宿舎富士と富士ユースホステルという宿を経営してるらしく、その富士屋ホテルの隣にある建物が後者の二つをやっているという情報だったので早速呼び鈴を押します。
呼び鈴を押して間もなくすると、中から至って田舎のおじさんといった出で立ちのおじさんが登場。「ここは宿ではないのか?」などと思っているとおじさんが「ここはもう国民宿舎富士としては使ってないので、受付は横の富士屋ホテルまで行ってください」と言われました。どうやら国民宿舎富士に予約した客も、富士屋ホテルに宿泊できるようです。恐らくこの建物は今はユースホステルのみとして使っているのでしょう。玄関に若者の物らしき靴が何足かありました。
「富士屋ホテルの方に泊まれるとはラッキー(?)だぜ」などと思いながら軽い足取りで向かいます。
フロントで「国民宿舎富士に予約した〜〜ですが」というとしっかり応対してくれました。やはりこちらで泊まるようです。
その後仲居さんが部屋まで案内してくれましたが、非常に愛想がよく丁寧な物腰です。部屋までの道すがら滑らかに施設の説明をしてくれて、行き交う他の仲居さん方もニコニコと挨拶してくれます。こんな接客はしばらく受けていなかったので多少の感動を噛みしめていると間もなく部屋に到着しました。
部屋の構造としては至って普通ですが、大きな窓があって開放感があり、何より塵一つないほど綺麗に掃除がなされています。テーブルの前には大きなプラズマテレビがあって、奥の庭に面した部屋にはトイレに洗面所、そして冷蔵庫と至れりつくせり。トイレもウォシュレット付きで新しく綺麗です。部屋にトイレがある宿に泊まるのは久しぶりでなんだかワクワクしました。
当然揃っているアメニティ。真ん中のプレートの文言がそこはかとなく嬉しい。
浴衣やタオル、歯ブラシなどのアメニティも当然あります。最初に用意されていた浴衣がLサイズで、私の背丈を見て仲居さんがLでは小さいと思ったらしく、「この浴衣ではお客様には小さいかもしれませんのでもう一サイズ大きいのをお持ちいたしますね」といってすぐにLLの浴衣を持ってきてくれました。(ちなみに私の身長は178㎝です)
しかしこの富士夫ホテルはホテルと言っても玄関付近に多少ホテルらしさを感じるくらいで、中を見ても建物としてはほぼ旅館といった感じなのですが、こういった部屋の設備を見るとホテルとしての宿泊環境の充実ぶりが伺えます。旅館とホテルの合いの子といった感じで面白い建物です。
さて夕食の時間ですが、6時から食堂での夕食が基本だけれども多少の融通は利くという感じだったので仲居さんに6時半から食事したい旨を伝えました。部屋に来るまでの途中風呂場を見ると既に何人かが入っていたので、他のお客さんが食事をしている時間に温泉を独占しようという作戦です。
仲居さんが愛想の良い笑顔で部屋を出て行った後少し休憩し、宿の中と温泉街を探検しにでかけました。
部屋に案内される途中も思ったのですが、この宿の廊下は妙に入り組んでいてそこかしこに伸びています。方向オンチの人はちゃんと部屋までの道を覚えておかないと道に迷うかもしれません。その分部屋数も結構多そうです。その廊下を仲居さん達が動き回っているのが面白いです。
ある程度宿内と温泉街の散策を終えたらもう時間が5時45分位にはなっていたので、急いで浴衣などを持って楽しみにしていた風呂へ向かいます。温泉は男湯・女湯・家族風呂があり誰も入っていなければ家族風呂もどうぞとのことだったのですが私は男湯へ直行しました。
戸の前でスリッパを脱ぐ形式のため人が入っているかはすぐわかります。
洗面台には髭剃りや櫛、髭剃り用ローションやドライヤーなどが置いてあります。
作戦通りこの時間に人はおらず、意気揚々と脱衣所へ。脱衣所の様子は画像の通りで充実ぶりが(私からしたら)半端ではありません。民宿ばかり泊まっている私としてはこんな設備の良さには感動すら覚えます。
かつてない高揚感を胸にいざ温泉へ。
風呂は綺麗なタイル貼りで湯がエメラルドグリーンに映ります。浴室の右側にシャワーが並んでいるのでいつも通りさっさと体を洗って湯に浸かります。お湯は滑らかで硫黄の匂いがつよく、少しだけ黒い湯の花が浮いています。このお湯も共同浴場と同じく有乳湯と書いてありました。ここらの宿はみな有乳湯なのでしょうか。
のぼせないうちに露天風呂へと移動します。
露天風呂からの眺望はとても良いのですが、真下には駐車場があり目の前には温泉街の真ん中を走る道が見えるので、そのまま立って歩いていたら通行人などから丸見えです。一応低い草や木が気持ちばかりの柵要素となっているのですが多少身を低くして露天風呂へ浸かりました。露天風呂は内湯とはまた違う源泉を引いているようで硫黄臭はしません。しかし風呂にたてかけてあるプレートによると飛鳥時代から自噴する温泉のようです。
画像にもあるようにここの露天風呂の目玉何と言ってもこの寝風呂です。木の部分に頭を乗せて寝ながら景色を楽しみつつ湯に浸かる。なんと贅沢なんでしょうか。この幸せを一人噛みしめながらゆっくりしました。夜が楽しみです。
部屋へ戻って一休みしたらもう夕食の時間になったので食堂へ向かいました。食堂には私の他、お一人様らしきおじさんが先に夕食にありついていました。特に音楽もかかっていない食堂の中、私とおじさんの咀嚼音と食器の音のみが場を包んでいました。なんとなく気まずいですがしょうがありません。
夕食は全体的に非常に丁寧に作られている印象で、どれもとても美味しいです。左上のサラダにはその手前にあるドレッシングをかけていただくのですが、このドレッシングがかなり美味しかった。ちなみにサラダの下にはローストビーフが隠れていて嬉しいサプライズです。
さらにこの後大きめのナス田楽の上に天ぷらが乗った皿がでてきて、田楽味噌で天ぷらを初めて食べたのですがこれもまたよく合うものだと感心しました。
食事を終えて部屋を出ると、すぐに厨房から仲居さんがでてきて挨拶をしてくれました。どこまで行き届いた宿なんだと思いながら部屋へと戻ります。ここで彼女や友人が一緒だったら食後の軽い運動に卓球でもしたいところなのですが(私は卓球が大好きです)、残念ながら一人なので諦めました。
とりあえず有名な共同浴場は翌朝に行くことにして、軽く夜の温泉街を散歩することにしました。夜になっても温泉街の道を行く車は割とあり、皆共同浴場へ向かっているようでした。ますや旅館も夜に見ると更に風情が増したように見え、中では外国人のカップルがフロントで何か話していました。外国人にこういう宿はうってつけでしょう。私も再びここに来た際には、今度はますや旅館に泊まろうと固く心に決めました。
共同浴場前までくるとやはり結構人がいるようで、中から地元の人達らしき話し声が聞こえてきます。こういった場所が観光客のみならず地元の人でも賑わっているというのはなんだか良いもんだ、などと思いながら共同浴場手前にある足湯に浸かりに行きました。
夜の足湯を割と楽しみにしていたのですがなんだかお湯の温度がぬるく、しかも足湯には照明がついていなかったので、「あまり長い事ここにいると通行人に不気味がられそうだ」と思ってすぐに宿へと戻りました。
部屋へと戻る途中風呂場を見てみると、一人入浴中みたいだったので部屋で時を待つことに。あくまでも貸切状態で露天風呂に入りたかった私はその後何度か風呂場へ行くのですが、先ほど入浴していた人が長湯しているらしくなかなか空きません。4度目くらいの確認の時にやっと入ることができました。(しかし夜の露天風呂はもっと接戦になるかと思っていましたが全然そんなことはありませんでした。スリッパを見ると長湯の人もずっと一人で入ってたっぽいですし)
天気が良い時は満点の星空を眺めながら寝風呂に浸かれるみたいでしたが生憎曇り空だったため星は少ししか見えませんでした。しかし辺りは静かで山の音が心地よく耳に響きます。お湯につかっては夜風に当たって体を冷まし、また浸かるというのを何度も繰り返しました。何も考えず自然の音を聴きながら空を眺め湯に浸かる、こんな日常では絶対味わえない情緒を大切に噛みしめたのでした。
その後部屋に戻ってからはテレビを見て友人と電話をし、また露天風呂に浸かりに行った後就寝しました。なんとも贅沢な1日でした。
次回へ続く
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